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第53回:『細雪』|美し日本の四季を感じながら頂く桜風味の錦玉羹(きんぎょくかん)!【瀬田ミナコのシネまんぷく】

共感シアター「KIQ STATION」のキャスターとしてもお馴染み、女優の瀬田ミナコによる連載コラム。毎回「映画」と「食」をテーマに、ゆるゆるとお届けします!

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■今回の映画:『細雪』(1983

桜の季節も間もなく終わり。今回も桜が印象的な映画を題材にしたいと思います。私が選んだのは1983年の映画『細雪』です。桜の登場する映画で検索するといくつかの映画がヒットしますが、この細雪は特に「美しい」という感想が多く、気になったので観てみることにしました。

映画『細雪』は谷崎純一郎の同名小説をもとに作られており、何度も映像化、舞台化されている作品です。1983年版では金田一耕助シリーズで知られる市川崑が監督を務め、主演となる四姉妹を岸惠子、 佐久間良子、 吉永小百合 、 古手川祐子という大女優達が演じています。

時代は昭和十三年、大阪の旧家である蒔岡家の四姉妹のお話です。映画は四姉妹と次女の夫である貞之助が京都でお花見をするシーンから始まります。この最初のワンシーンで「この映画を選んでよかったな」と確信するほど、美しい始まりでした。満開の桜が咲いていることを表現しているのか、障子は薄くピンク色に染まり、閑静な和室の中では、綺麗なお着物を着た素敵な女性たちが、上品な関西弁を交わしています。日本の美しさが詰め込まれたような画面にうっとりしました。そして桜が本当に見事で綺麗です。私は自宅でこの作品を観ましたが、叶うのならば劇場のスクリーンであの桜が画面いっぱいに映るのを観たかったと思うほどです。そんな桜を美しい四姉妹が愛でる姿は神秘的といっても過言ではない、夢の世界のような趣がありました。

冒頭のシーンに限らず、全体を通して色遣いやライティングがとても印象的でした。ピンクの障子だけでなく夕日でオレンジに染まっていたりして、障子ってこんなに素敵なんだ!と驚きました。(私の家にも障子があるのですがそんな風に見たことがなかったので衝撃でした笑)また女優さんたちの着るお着物が本当に素敵です。お出かけの時に着るよそ行きのものから、家で着る普段着まで、いくつもお着物が登場しますし、それが四姉妹なので着物の枚数も四倍出てくるわけで。それはそれは沢山の着物が出てきますが、どれも品があってとても素敵です。途中広げた着物がじっくりと映されるシーンがありますが、一つ一つの柄や布の質感が感じられて、衣類というより芸術品だな、と思いました。

お話としては、三女の雪子の縁談を中心に身内のゴタゴタを描いているだけ、とも言えますが、昔の名家の暮らしぶりや、人との感覚の違いが色々あって飽きませんでした。特に印象的なのは「そのお金っていくらあるか知ってんの?」「知らん」という姉妹の会話です。父が残した結婚の支度金の話なのですが、四姉妹のうち誰も、長女ですら金額を知りませんでした。そしてその金額に、大して興味もなさそうなことです。もう一つは貞之助が言った「あの姉妹は自分の家に金がどれくらいあるのかなんて知らずに生きている」という話です。本当に貴族のようだ、、と思いました。そしてその貴族のような姉妹と共に暮らす二人の男性が長女と次女の夫です。この二人は一般社会の感覚と、名のある家としての考え方に挟まれて暮らしておりなかなか気苦労も多い登場人物です。二人の目線で映画を楽しむのもいいかもしれません!色々違いはあれど、家族内で事件があった時の揉める感じなどは、いつの世も変わらず。共感できるところも沢山あって面白かったです。蒔岡家は本家、分家、と分かれていたり、社会的地位もある家柄だったりするので私の家とは状況が違いますが、それでも「分かる~」となります。なだめる人がいたり、仲裁していた人が逆に取り乱したり、我が家の喧嘩とそっくりでした。(笑)

そして何といっても大女優たちの存在感と演技が素晴らしかったです。岸惠子さん演じる長女・鶴子はしっかり者だけど一番取り乱しやすい一面もあったりします。佐久間良子さん演じる次女・幸子は最初とても怖そうに見えました。が、とても妹想いの頼りになるお姉さんです。吉永小百合さん演じる三女・雪子は引っ込み思案で声も小さく大人しい女性です。古手川裕子さん演じる四女・妙子は恋多き女。駆け落ち騒動を起こしたり、家出して男の家に転がり込んだり、旧家である蒔岡家からすると少々問題児ですが、元気で明るくとても可愛らしいです。妙子だけ洋服を着ているシーンが多かったのも、姉たちよりも新しい時代を生きている雰囲気が出ていて良かったです。

それぞれに違った魅力があり、一人一人についてゆっくり語りたいところですが、私が特に惹かれた雪子の事を書こうと思います。雪子は、いくつも縁談の話がありながら、相手に問題があったり、逆に断られたりで、なかなか嫁ぎ先の決まりません。これは蒔岡家にとっては大問題なのですが、本人はまったく気にしていない様子です。さらに、良い相手がいても、誘いを断ったりして姉から怒られることも。ところが最終的には家柄も人柄もとても良い相手をしっかりと捕まえます。のほほん、としているように見えて、実は姉妹の中で一番芯が強く、ここぞという時には思い切りの良い決断力を見せるので、姉たちと一緒に私も舌を巻いてしまいました。大人しく、声も小さく、セリフも少ない役ですが、とても強かな女性です。しかも、ゆったりした口調やしぐさの中に、上品さと色っぽさが感じられて、すごく魅力的なんです。雪子を演じている吉永小百合さんは私にとって「歳を取るならこんな素敵な女性になりたい」と思う憧れの女性ですが、あの上品な立ち振る舞いは歳月のなすものではなく、この人は若い時からそういう方だったんだなと、認識を改めさせられました!

最終的に姉妹は、東京への引っ越しや、他の家に嫁いでいったりで全員がバラバラになります。姉妹を一番近くで見てきて、特に雪子の事を可愛がっていた貞之助はそれを悲しみ、一人酒を飲みながら泣くのですが、そこがまた名シーンでした。冒頭で描いたあの夢のような美しい時間を、一番愛おしく感じていたのは貞之助なのかも知れないと思います。そしてなぜだか、この物語は貞之助の目を通してみていたような、そんな気持ちにさせられました。このワンシーンを観て、この映画がもっと好きになったし、急に原作小説も読んでみたくなりました。

40年近く昔の映画ですが、今の若者たちにも通用する普遍的な美しさを、映画の色んなところで感じられる素晴らしい映画でした!

それでは今回は錦玉羹(きんぎょくかん)というお菓子を作りたいと思います。桜の花びらを透き通った寒天に入れて固め、春の美しさを閉じ込めたようなお菓子です。花や女優さんたちや物語の美しさを、映像の中に留めたような映画だったので、このお菓子を選びました!

作り方は簡単!桜の塩漬けを水で塩抜きし、茎や額を外しておきます。

鍋に水と粉寒天を入れ、温めて溶かしていきます。寒天が溶けたら砂糖を投入。あまりの量に若干引くレベルです。(笑)

しばらく煮詰めてとろみがついたら、桜を入れて混ぜていきます。

花弁がいい感じに広がってきたら、カップに流し込みます。

お花が浮いてきちゃうので、固まり始めるまでスプーンで混ぜ混ぜ、、。

ある程度固まったら冷蔵庫で冷やして完成です!

めちゃくちゃ綺麗!!
涼しげでありながら、桜のピンクが温かみを出していて春にぴったりだと思います!

冷たくてプリっとした寒天は甘く、桜の塩気が良いアクセントになっていて美味しいです!
桜の香りがめちゃくちゃお上品!

素敵なお着物を着て食べたいような味になりました。

桜は散るから美しいものですが、いつまでもその姿のまま留めて置きたいという気持ちにもなりますね。

ごちそうさまでした!

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今回取り上げた作品はコチラ!

【出演】
佐久間良子,吉永小百合,古手川祐子,伊丹十三,石坂浩二,岸惠子

【スタッフ】
監督:市川崑
脚本:日高真也,市川崑
原作:谷崎潤一郎

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瀬田ミナコ(Acstar所属)
1996年4月3日生まれ 東京都出身
出演作品:映画「ゆずりは」「不能犯」(2018)
映画「種まく旅人~華蓮のかがやき~」全国順次公開中!!
その他:共感シアター「KIQ STATION」でキャスターとしても活躍中
Acstar:http://acstar.jp/talent/minako_seta.html
Twitter:@minako_seta

 

『瀬田ミナコのシネまんぷく』これまでの連載記事はこちらから!
https://moviemarbie.com/special/cinemanpuku_index/

 

※瀬田ミナコが出演中の「KIQ STATION」アーカイブ動画はこちら!