MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】#19『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』のアイリス

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。この特集では「あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集」と題して、やる気が出ない時、スカッとしたい時、どんな人でも楽しんでもらえる映画をご紹介していきます!

昨年102歳で亡くなったアイリス・アプフェル。今回ご紹介するのは彼女の姿を追ったドキュメンタリー『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』です。彼女は実業家でインテリアデザイナーでありながら、独創的なファッションが話題となり、80代でさらなる注目を浴びました。2014年に公開された本作は、そんな彼女が90代になってもなお第一線で活躍し続ける姿を収めています。

アイリスのファッションへのこだわり

大きな黒縁の丸メガネが特徴のアイリスは、もちろんファッションへのこだわりを強く持っています。この映画を興味本位で観始めた人も、きっと彼女のスタイルと一つ一つの言葉に心を奪われるに違いありません。

彼女は映画冒頭から「最近の人は皆似たような格好をしてて嫌になる」という言葉を発します。SNSで流行がすぐにわかり、店でも同じような服ばかり売っていて、何も考えずにそれらの服を手に取ることが多い今、筆者にもかなり刺さった言葉でした。

また、「ハリー・ウィンストンより4ドル程度のアクセサリーに胸が躍るの」と言いながら買い物をするアイリス。私たちは、ブランドの服やアクセサリーをSNSに載せて、それを見た人もまた憧れてブランドを買うような、奇妙な循環に陥りやすい現代社会に生きていますが、持っている小物の組み合わせを楽しむ彼女のように、着る服やアクセサリーの値段に関わらず心躍るものを集めて、それらの組み合わせに思考を凝らすことで、人生が豊かになるのだとハッとしました。

口を開けば出てくる、強く勇ましい名言の数々

そのほかにも、本作でアイリスが残した言葉は、一つ残さず書き留めておきたいと思うほどの名言ばかり。彼女が発するワードには強さが満ち溢れています。

「体調が悪い時も 店に入ると年を忘れるわ」

どれだけ年老いても、自分の心が向くままに生き続けるアイリスはこう話します。夢中になれることがあれば、見える世界は明るくなる。彼女の言葉から、年齢を重ねても“ワクワク”に敏感でいることが大切だと学ぶことができます。

「皆好きな服を着るべきだもの センスがなくても幸せならいい」

さらに、自分の価値観を押し付けるのではなく、人それぞれの価値観を尊重する考え方があるアイリス。だからこそ、多くの人を魅了することができるのでしょう。

「平穏に生きたいと言う人にも刺激は必要なの」

80代にしてメトロポリタン美術館でアイリスのファッションコレクションが展示され、ファッション界に名を轟かせた時を振り返り、アイリスが語った言葉。筆者は自分のことを“平穏に生きたい”と思う人間そのものだと思っているのですが、確かに、時折「いつもとは違うことをしたい」という衝動に駆られることがあります。きっと当時ニューヨークにいたのなら、彼女の展示を観に行っていたはず。アイリスの存在、そして彼女が作り出す“アート”はまさに人々に刺激を与えています。

「毎日無難なことを繰り返すくらいなら いっそ何もしなきゃいい」

テレビ出演や取材でどれだけ疲れていようと、好きだからと仕事を続ける彼女はこのように話します。同じような日々にウンザリしている人や、もしくは何も考えずに毎日を送っている人を新しい道へと導くような、説得力のある言葉でした。

アイリスにはアートや世界の歴史に対する知識があり、その上で世界中の民族衣装や小物までも大切にしています。自分の直感だけでなく、教養も併せ持つ、彼女ならではの世界観。本作は、すべては才能だけでなく努力の上に成り立っているのだ、と暗に教えてくれる作品とも言えます。

ラグジュアリーなものでなくても、フリーマーケットや格安のアクセサリーでワクワクできる、その心は純粋そのもの。アイリスのように周りを気にせず、自分の心行くままに生きることは簡単なことではありませんが、本作を観れば、深い部分にいる本当の自分に嘘をつかず過ごしていきたいと思うことでしょう。

『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
2014年製作/80分/アメリカ
配給:KADOKAWA

監督・撮影:アルバート・メイズルス
編集:ポール・ラブレース

huluで視聴する→こちら

 


伊藤万弥乃 (いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。
映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

過去記事はこちら