【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】#18『マンマ・ミーア!』のドナ
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。この特集では「あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集」と題して、やる気が出ない時、スカッとしたい時、どんな人でも楽しんでもらえる映画をご紹介していきます!
ABBAの名曲を元に作られたミュージカル『マンマ・ミーア!』。その映画化となる本作は、ギリシャの島で小さなホテルを経営するドナ(リリー・ジェームズ/メリル・ストリープ)の娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)が、自身の結婚式に自分の父親と思われる男性3人をドナに内緒で招待し、本当の父親は一体誰なのか探っていく物語です。
父親を知りたいというソフィの純粋な願いとドナの甘い思い出が音楽と共に交錯していきます。また、ABBAの楽曲も思わず口ずさんでしまうものばかり。煌めく海や美しい自然に囲まれたギリシャにも心奪われる作品です。
※以下ネタバレを含みます。
■3人の男性と同時期に出会ったドナのかけがえのない日々
今回注目したいのは、ドナの生き方について。『マンマ・ミーア!』ではソフィの結婚式がメインで描かれますが、続編の『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』ではドナの若き時代に遡り、3人の男性との恋の様子が描かれます。
大学を首席で卒業したドナは、世界を知るためにまずフランス・パリに向かいます。そこで出会うのがイギリスの銀行員ハリー(ヒュー・スキナー/コリン・ファース)。初々しく愛らしさのある彼と一夜を共にしたドナでしたが、心惹かれるのはギリシャのカロカイリ島だったようで……何も告げずにメモだけを残して出発してしまいます。
島へ渡る船に間に合わなかったドナは、船乗りのビル(ジョシュ・ディラン/ステラン・スカルスガルド)に助けられ、島へ到着。そこでビルとは別れ、突然の大雨のなか廃屋に避難すると暴れている馬がいました。誰かに助けを求めようと外に出ると、バイクに乗っていたサム(ジェレミー・アーヴァイン/ピアース・ブロスナン)に出会い、馬を落ち着かせることに成功します。2人は意気投合し、何日か一緒に過ごすことになりますが、サムには婚約者がいることが発覚。サムを追い出すと、引き返してきたビルと再会します。そしてしばらくして妊娠していることが分かり、一人で生きていくことを決めるのです。
■強くて自由奔放なドナの名言
ドナがこの島をめがけてやって来たのには理由がありました。それは「昔はそこから航海に出ると世界の端から落下する」と言われていたから。自分にピッタリだと話す彼女の無邪気な笑顔と好奇心には魅力が詰まっていて、男性3人が一度に恋してしまうのもよくわかります。
ドナの父親はおらず、母親は歌手で年中ツアーに行っているため、ドナの卒業式にも現れません。それでも愛を欲しているというよりは、自分で自分を愛しているが故、未来に希望を持っているように見えます。
多くの名シーンの中で、筆者が一番ドナらしさを感じたのは、サムと一夜を過ごした後、ドナが彼にこの島で一緒に住もうと提案するシーンです。しかし提案を受けてもワクワクする様子はなく、物事は単純にはいかないと考え込むサム。まだ事情を知らないドナは「何事も単純よ かみ砕けば」と説得するように語りかけます。これから決められた人生を送ろうとしているサムにとって、ドナの存在は眩しく、羨ましくもあったでしょう。この時の2人はうまく行きませんでしたが、数十年後、サムが離婚してドナの元を訪れたことで、やっと気の向くままの人生を送ることができました。ドナがいたから、サムは自分に正直になれたのです。
そんなドナは「人生の生き方は自分で選べ」という言葉も残しました。これはドナの亡き後、夫スカイ(ドミニク・クーパー)との関係性に悩むソフィに対して、ドナの親友であるターニャ(クリスティーン・バランスキー)とロージー(ジュリー・ウォルターズ)が彼女に伝えた言葉です。一見当たり前の言葉ですが、ハリーやサムのようにそれが難しい人も多くいるはず。今まで自分で全てを選択してきた彼女の生き方には、強さを感じずにはいられません。
さらに、ドナ自身の言葉だけでなく、ドナの周りで生きる人々の言葉も名言ばかり。島にやって来て初めて立ち寄ったバーで、お金を稼ぐために歌わせてほしいと懇願したドナは、バーのオーナーに一度歌ってみるように言われます。ためらっていた彼女に、オーナーは「「この島じゃ何事も突然だ それが幸福への道 考えすぎは不幸になる」と声をかけるのです。
3人の男性や島の廃屋、バーのオーナーや宿った命との出会いがドナの人生を大きく変えました。自分の思うままに突き進み、突然の出来事も楽しんできたドナの人生は、きっと幸福だったに違いありません。島の人々に支えられながら過ごす、ソフィとの二人三脚の人生も悲観することなく楽しんでいたことでしょう。ドナの人生を知ってから、再度『マンマ・ミーア!』を観ると、また違った母娘の姿を感じ取ることができます。生き方をしっかりと選んで、自分に誇れる人生を送りたいと改めて思うとともに、勇気をもらえる物語です。
『マンマ・ミーア!』
2008年製作/108分/アメリカ
出演者:メリル・ストリープ、ピアース・ブロスナン ほか
監督:フィリダ・ロイド
脚本・原作:キャサリン・ジョンソン
音楽:ベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース、スティッグ・アンダーソン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
編集:レズリー・ウォーカー
配給:東宝東和
U-NEXTで視聴する→こちら
伊藤万弥乃 (いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。
映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
過去記事はこちら
【連載】
あなたの勇気を呼び覚ます!
<#強くて魅力的な女性キャラクター特集>『#マンマ・ミーア!』
メリル・ストリープ演じる強くて自由奔放なドナ!詳しくはこちら✨https://t.co/h6Wtk0nxcG#メリル・ストリープ#ピアース・ブロスナン pic.twitter.com/J5P0SyIwDA
— MovieMarbie (@MovieMarbie) March 3, 2025
- 【投票受付中】ムービーマービーアワード2024「ぜったい面白い映画」ノミネート作品紹介『デューン 砂の惑星PART2』これは砂じゃなく、金砂で描かれた動く絵画。
- ムービーマービーアワード2024「ぜったい面白い映画大賞」結果発表スペシャル!3/18(火)共感シアターにて開催します!