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【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】#14 『ちひろさん』のお弁当屋さんで働くちひろ

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。この特集では「あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集」と題して、やる気が出ない時、スカッとしたい時、どんな人でも楽しんでもらえる映画をご紹介していきます!

■『ちひろさん』の主人公・ちひろ

今回ご紹介するのは、映画タイトルにもなっている『ちひろさん』の“ちひろさん”(本名は綾)です。人気同名漫画を原作とした本作では、“ちひろさん”役を有村架純が演じ、監督を今泉力哉が務めました。

みんなに慕われる弁当屋のお姉さん“ちひろさん”は元風俗嬢。なんで元風俗嬢が弁当屋に……?と、彼女の人生を知りたくて、思わず再生ボタンを押した人も多いことでしょう。

劇中では“ちひろさん”がお弁当屋さんに面接に来た日や、風俗店で働き始めた日、彼女が大切にしまっている幼少期の思い出など、ちひろの人生の一部が明かされます。そして次第に、それぞれ家庭に複雑な事情を抱えている女子高生オカジ(豊嶋花)や小学生男子マコト(嶋田鉄太)も“ちひろさん”の自由さと適度な優しさに憧れ、彼女の姿を追うようになっていきます。

視聴者の中にはオカジやまことのように、ちひろの自由さに憧れを抱く人も多いのではないでしょうか。学歴やお金、社会での地位に翻弄されることなく、自分の気の向くままに生きていく姿は、幻のような、天使のような、渡り鳥のような……。彼女がいなくならないで欲しいという気持ちも強くなってしまう、尊さがある女性です。

■繊細だけど力強いちひろさんの性格

孤独を好み、人と深くかかわろうとしないちひろは、繊細な心の持ち主なのかもしれませんが、傍から見ると人当たりが良くて意見はしっかり言うタイプ。筆者は、自分が持っていない、ちひろの強さ溢れる性格にも惹かれていきました。

また彼女は困っている人には手を差し伸べますが、過度に干渉しようともしません。その性格のせいで勘違いされてしまうこともあるけれど、それに動じずに「自分は自分」として生きている姿にも強さを感じることができます。

筆者は作品を観ている時、ちひろはどこか掴めない感覚があるなと思っていました。本来の自分を見せてくれない友達に感じるような寂しさです。そんな矢先、やはりちひろはまた別の場所に引っ越してしまいます。きっといろんな場所でいろんなことをして、その土地土地での“自分”を確立することで、たくさんの自分の居場所を作っているのでしょう。一方で、ちひろ自身も人々の“居場所”になっていることが分かります。誰かの居場所になることと、自分の居場所を作ること。そこには人間としての弱さも強さも溢れていると言えるでしょう。また、心を開ける人に出会っても依存しないこと、その土地から離れようと思えることにも、自分なりの強い覚悟と強い信念を感じました。

『ちひろさん』は人間の様々な欲求もナチュラルに描きますが、それが特に壮絶なドラマになるわけでもなく、人間の営みとしてすっと自分の中に入り込んできます。年末年始、こたつの中や暖かい部屋で観れば、心も体もじんわりと温かさに包まれることでしょう。2024年の締め映画、2025年の映画始めに迷っている方には『ちひろさん』をおすすめします。

(読んでいただいた皆さん、今年もありがとうございました。2025年も引き続きよろしくお願いいたします。)

 

『ちひろさん』
2023年製作/131分/PG12/日本

出演者:有村架純、豊嶋花、嶋田鉄太、van、若葉竜也、佐久間由衣、長澤樹、市川実和子、鈴木慶一、根岸季衣、平田満、リリー・フランキー、風吹ジュン

監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉
原作:安田弘之
音楽:岸田繁 主題歌:くるり「愛の太陽」
撮影:岩永洋
配給:アスミック・エース

Netflixで視聴する→こちら

 


伊藤万弥乃 (いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。
映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

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