【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】 #5 韓国恋愛映画の王道『猟奇的な彼女』の“彼女”
強くて魅力的な女性キャラクター特集 #5
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映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。この特集では「あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集」と題して、やる気が出ない時、スカッとしたい時、どんな人でも楽しんでもらえる映画をご紹介していきます!
韓国恋愛映画の王道
『猟奇的な彼女』の“彼女”
今回ご紹介するのは、映画『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョン演じる名もなき女性です。(本記事では“彼女”と記していこうと思います。)20年以上前に公開されたこの映画は、インターネットの掲示板に書かれていた物語をベースにしており、韓国で500万人以上を動員しました。また韓国の映画賞である第39回大鐘賞でチョン・ジヒョンが主演女優賞、第22回青龍映画賞でチャ・テヒョンが新人男優賞を獲得。日本でも2008年に坂元裕二脚本でドラマ版が制作されました。今では「韓国映画と言えばこれ!」とおすすめされる映画の一つとも言えるのではないでしょうか。
ある日、“彼女”(チョン・ジヒョン)が酔っぱらって電車に轢かれそうになっているところを助けたキョヌ(チャ・テヒョン)。理想のタイプだけど、酔いつぶれた女は嫌いなキョヌは、“彼女”が電車に乗ってからもそれとなく見守っていただけでしたが、“彼女”が突然倒れてしまいます。キョヌは周囲に彼氏だと思われてしまい、介抱するはめに……。その上変態に間違えられ、警察に捕まってしまいますが、それが“彼女”との関係の始まりでした。
“彼女”を演じるチョン・ジヒョンは、映画『僕の彼女を紹介します』をはじめ、ドラマ「星から来たあなた」や「青い海の伝説」など韓国のラブストーリーを語るに外せない女優となりました。チャ・テヒョンは『世界の中心で、愛を叫ぶ』の韓国リメイク版『僕の、世界の中心は、君だ。』で主人公を演じ、2016年には『もっと猟奇的な彼女』と題された本作の続編に出演しました。
※以下ネタバレを含みます。
“彼女”の強さは、とにかく、キョヌにすぐ「ぶっ殺されたい?」と言ったり、鋭い目線で社会のクズたちを成敗するようなすごみにあると言えるでしょう。キョヌは尻に敷かれた彼氏のようですが、言いなりになるだけではなく、元気に振る舞う彼女が抱える(具体的には何か分からないけれど)深い心の悲しみを理解しています。真夜中の遊園地で脱走兵と出会い、どのくらい川が深いのか知りたいと突き落とされ、スカッシュではコテンパンにやられたから、剣道でやり返そうとするもやはりボコボコにされる。映画に行ったり、ピクニックをしたりするような平凡なデートじゃないところがまたいいのです。
また、電車で老人に席を譲らない若者を罵倒したり、居酒屋で援助交際をしている中年男性と若い女性を見つけては叱ったり、20代の女子大生というよりはすっかり大人で社会を俯瞰して見ているように思えます。大切な人を亡くした過去に囚われたまま、両親からも無理にお見合いを迫られる彼女は、息苦しさを感じていたに違いありません。彼女が恐れずに社会の間違いを指摘していくこの一連のシーンからは、「良い社会にしたい」という気持ちより、「もうどうにでもなれ」という投げやりな気持ちすら見え隠れしているように思います。しかし、一人の男性を一途に愛し、また一人の男性の前では強い自分でいられる、その“彼女”が纏う雰囲気自体に強さを感じました。
そんな彼女に事情を知らないまま寄り添い、彼女自身について深く問いかける素振りを見せないヒョヌは、彼女にとって大きな支えとなったことでしょう。実際に、こんなに綺麗な謎めいた女性がいたら惹かれてしまうのも納得ですが、性格が「猟奇的」だからこそ出会うことができた2人の不思議な物語です。
『猟奇的な彼女』
2001年製作/122分/韓国
原題:My Sassy Girl
出演:チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン
監督・脚本: クァク・ジェヨン
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伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
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