MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】#1 シャーリーズ・セロンが本格アクションで魅せる 『アトミック・ブロンド』ロレーン・ブロートン

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。昨年7月から20回に渡り「明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選」を担当させていただいておりましたが、今回から新たに「あなたの勇気を呼び覚ます!強くて魅力的な女性キャラクター特集」という企画が始動することとなりました。

映画は、自分が普段経験できないようなことを“追体験”できるもの。そしてその中でもコメディ映画は、自分の気持ちが沈んでいる時や現実逃避したい時に自分の傍にいてくれるものだと思っており、そんな時に寄り添ってくれる20作品をご紹介してきました。

今回から始まる新たな特集では「強くて魅力的な女性」が登場する作品を紹介していきます。私自身が女性ということもありますが、彼女たちの淡々と物事をこなす姿や、自分の道を切り開いて生きていく姿に背中を押されることは誰にでもあると思います。やる気が出ない時、スカッとしたい時、男女問わず楽しんでもらえる映画を紹介できれば……とこのテーマを選びました。アクションやスパイ映画を中心に様々なジャンルや国の映画を紹介していこうと思っています!

 

※以下ネタバレを含みます。

■傷つきながらも立ち向かうMI6諜報員ロレーン・ブロートン『アトミック・ブロンド』(2017)

第一回として選んだのは、『アトミック・ブロンド』です。強い女性主人公の映画を考えた時、一番に思いつく人も多いのではないでしょうか?

物語の舞台は、第二次世界大戦後、冷戦により東西に分かれているドイツ・ベルリン。イギリスのMI6(英国情報局秘密情報部)に所属するロレーン(シャーリーズ・セロン)は、KGB(ソ連国家保安委員会)によってMI6の同僚が殺され、奪われてしまった最高機密の極秘リストの奪還、そしてMI6の中にいる二重スパイを暴くことを命じられ、ベルリンにやってきます。彼女はMI6ベルリン局のパーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)と共に調査を進めますが、上司に「誰も信用するな」と言われていたため、単独でもリストと裏切り者を追っていきます。

終始モノトーンに近いような青さがあり、薄暗いまま進んでいく本作。ロレーンが氷水に浸かって傷を癒している姿がとても痛々しく映ります。あまり笑うことのない彼女自身の冷酷な性格を表しているとも考えられますが、“冷戦(Cold War)”による緊張状態の世界の中で生きていることも画面の冷たさから強く実感することができます。

MI6と聞くと、『007』のジェームズ・ボンドのように常に命の危険にさらされているイメージですが彼女も例外ではありません。それでも恐怖や不安といった感情を表に出すことなく、突き進んでいる勇ましさに惚れ惚れとしてしまいます……。ちなみにボンドはマティーニを好みますが、ロレーンはウォッカをロックで飲みます。パーシヴァルはウイスキー(ジャックダニエル)が好みなよう。お酒の好みが人物を物語っているようで面白く、またタバコを吸ってグビっと酒を飲む仕草も魅力的です。

そして本作で最も視聴者を釘付けにするのは、物語後半に繰り広げられる、約7分間途切れることのないアクションシーンではないでしょうか。現実離れしたアクションではなく、お互いボロボロになって、やられてはやり返す。銃や素手での泥臭い戦いだからこそ魅了されるシーンです。長回しに見えますが、実は40近くのショットが慎重に繋ぎ合わされて出来ているとのこと。(※1)シーンは流れに沿って撮影され、カメラの角度や勢いもショットごとに合わせる必要があったようで、俳優だけでなく作り手も渾身のシーンだったと言えます。単純なアクションが苦手な人も、1980年代の音楽と共に、彼らの軽快な動きを楽しむことができるでしょう。

全体的に見ても、『ジョン・ウィック』『デッドプール2』『ブレット・トレイン』など数々のアクション映画を手掛け、自身もスタントをしていた経験があるデヴィッド・リーチが監督だからこその、視聴者が唸るようなアクションが繰り広げられていきます。ロレーンを演じたシャーリーズ・セロンは、アクションに向けてトレーニングをしていたジムで『ジョン・ウィック:チャプター2』の撮影を控えたキアヌ・リーヴスに会い、お互いにスパーリングをしたそう。またトレーニング中に歯を食いしばったせいで奥歯が2本かけてしまったとのこと……。それほど本物のアクションにこだわり抜いた結果、あのシーンが生まれたのです。(※2)ロレーンという役だけではなく、役のために人一倍の努力をするシャーリーズ・セロンの女優魂は、日ごろの勉強や仕事に対する姿勢として真似したいところですね。

2020年には、続編がNetflixにて製作されると報道されていた『アトミック・ブロンド』。クライマックスではロレーンの正体も明らかになりましたが、公開から7年。どれほどパワーアップをして帰ってくるのか、今度は世界のどこが舞台になるのか。様々な想像が膨らみますが、期待して待ちたいと思います。

【参照】
※1 「How the ‘Atomic Blonde’ Team Pulled Off the Incredible, 10-Minute, ‘One-Take’ Action Sequence」Variety(2024年5月17日閲覧)
https://variety.com/2017/artisans/production/atomic-blonde-10-minute-action-scene-charlize-theron-1202512814/

※2 「Charlize Theron Cracked Two Teeth While Filming ‘Atomic Blonde’」Variety(2024年5月17日閲覧)
https://variety.com/2017/film/news/charlize-theron-atomic-blonde-training-cracked-teeth-1202007730/

 

『アトミック・ブロンド』
2017年製作/115分/R15+/アメリカ
原題:Atomic Blonde

製作・出演:シャーリーズ・セロン
監督:デヴィッド・リーチ
音楽:タイラー・ベイツ

U-NEXTで視聴する→こちら
Amazonプライムで視聴する→こちら
Apple TVで視聴する→こちら
huluで視聴する→こちら

 


伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/