吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず 西田敏行ら登壇!映画『いのちの停車場』公開記念舞台挨拶レポート!
5⽉21⽇(⾦)より⼀部地域を除き、劇場公開を迎えた感動のヒューマン医療ドラマ『いのちの停⾞場』。本日、主演の吉永⼩百合をはじめ、松坂桃李、広瀬すず、⻄⽥敏⾏、南野陽⼦、柳葉敏郎、みなみらんぼう、泉⾕しげる、⽥中泯、原作者の南杏⼦、そして本作のメガホンをとった成島出監督が登壇する公開記念舞台挨拶が実施された。イベントの模様は、全国259館(⼀部地域を除く)へ中継配信された。(※新型コロナウイルス感染防⽌のため、配信元会場は無観客にて実施)
イメージソングの「Amazing Grace」が流れる中、ゆっくりと幕が開け、豪華登壇者たちが登場した。まずは主演の吉永から、「この映画は、2020年の始めに準備が開始されて、9⽉、10⽉に撮影いたしました。⼤変な時期でしたが、スタッフの皆様が昼も夜も頑張ってくださいました。そして、全員が⼼を合わせて撮影を終えることができ、そして昨⽇、映画は封切られました。映画の公開はとても嬉しいことですが、とても残念なことがありました。緊急事態宣⾔が延⻑になり、映画は休業要請が出てしまったんです。演劇は⼤丈夫だけど、映画はダメと伺って、⼤変ショックを受けましたし、悲しかったです。挫けそうになりました。でも今⽇このように、全国の皆様へ向けてご挨拶ができるというのは、この(イベント会場の)劇場にお客様がいらっしゃらないから、と思って気持ちを取り直しております。きっとこれから、⽇本中のみなさまに映画をご覧いただけると思っております。」と挨拶し、このような状況下で本作が無事公開できたことに対しての喜びと、緊急事態宣⾔により⼀部の映画館では休業要請が出ていることに対しての⼼境を述べた。
また、都内の終末期医療専⾨病院に勤務し、命の終わりを真摯に⾒つめる現役医師でありながら、作家として本作を世に送り出した原作者の南杏⼦は「”⽣ききる”ということをこの作品の中で伝えたいと思って⼩説に書きました。おそらく、このような環境の中でご覧になってくださった⽅には、⼼に迫るものがあったと思います。皆様、ディスタンスをとって、⼤変な中で⽣活をされていることと思います。今⽇は本当にありがとうございました」と挨拶。
本作は、とある事件をきっかけに、⾦沢にある⼩さな「まほろば診療所」で在宅医として勤めることになった咲和⼦(吉永)、咲和⼦を追いかけてまほろばにやって来た、医⼤卒業⽣で運転⼿として働く野呂(松坂)、亡くなった姉の⼦を育てるしっかり者の訪問看護師・⿇世(広瀬)、彼らを⾒守る院⻑の仙川(⻄⽥)が、患者たちに寄りそい、最後の願いを聞き⼊れていく中で前に向かって歩み始めていくという物語。そんな「まほろばメンバー」が、共にいのちに向き合う個性豊かな患者とその家族を演じたのが、泉⾕、柳葉、南野。
妻の⽼⽼介護に疲弊する男性・並⽊徳三郎を演じた泉⾕は、「たいして出ていないので、登壇する価値はないんですが」と前置きし、会場の笑いを誘いながら、「撮影現場では、⻑い付き合いだった岡⽥さん(故・岡⽥裕介東映グループ会⻑)と久しぶりに会ってたくさん喋りました。楽しくて、すごく充実した時間を過ごせました。岡⽥さんは『劇場で観てこそ映画だろう︕』⾔っていたので、今⽇は複雑な思いです(笑)。『岡⽥、申し訳ない︕こう⾔う状況だからそういうことだ︕』と伝えたいです。俺はどのような状況でも映画は公開すべきだと思っています」と映画公開への思いを語る。また、「死を扱うのは難しいが、よく考えてみれば⽣きるも死ぬも⽇常な訳で、そういうことを普通に乗り越えていかなければならない、ということがこの映画には込められていると思いましたので、どうやって⽇常感を出そうかなと⼼がけていました。」と語りました。
最期の時間を穏やかに過ごすことを望んでいるが、⻑年会えていない息⼦を気に掛ける元⾼級官僚・宮嶋⼀義を演じた柳葉は、「この作品に⼊る前、顔合わせのときに、監督から『3シーンの中で宮嶋という男の⼀⽣を表現してくれ』と⾔われました。1シーン⽬は固い鎧で⾝を守っている姿、2シーン⽬はその鎧を脱いだ姿、3シーン⽬は全てを脱ぎ去った宮嶋という男の⽣き様を表現しました。正味2⽇間の撮影でしたが、参加させていただいて、改めてどんなに⼩さくても、しっかりとした覚悟をもって、その先にある希望に向かって⽣きようと考えました。この(コロナ禍の)環境だからこそ、この作品がみなさんの⼼に響くんじゃないかなと思います。ぜひ、多くの⽅に観ていただき、たくさんの⼈としての気持ちを考えていただけたらと思います」と、本作を通して伝えたいメッセージを述べる。
また、共演シーンのあった松坂は「野呂が宮嶋の⼿を握り、(息⼦ではないが)『親⽗ありがとう』というセリフがあるんです。宮嶋は⾔葉を返すことができないんですが、柳葉さんが演じながら⼿の握り⽅を変えて感情が波のように伝わってきて。その度に感情が揺れ動かされました。」と撮影時の感想を柳葉に伝える場⾯も。
⼩児癌を患う娘に迫る死を受け⼊れられずにいる⺟親・若林祐⼦を演じた南野は、「⼈っていつの間にかパッと⽣まれてきて、⽣きた意味もわからないまま亡くなって。亡くなるときに、家族でも、友達でも、会社でも、病院の先⽣でも、⼈と”ぎゅっ”と関係を持てれば、⼈⽣は成功じゃないと思いながら撮りました。キャスト、スタッフ今まで以上に⾔葉を掛け合って、⼤切な宝物にしていこうと思いながら撮影していました。本作を観られた⽅も感じてくださったのではないかなと思います。もし、⼀度観てもやもやする時は、⼆度観てください(笑)」と冗談も交えながら想いを述べた。
南野が出演していたシーンでは、松坂と広瀬にとっても印象的な場⾯が多く、「萌ちゃん(南野演じる祐⼦の娘)に寄り添うシーンは、患者さんと⼀番深く関わるシーンだったので、⾊々なことを思いながら撮影に臨んでいました。南野さんの顔を⾒ると、看護師として耐えなきゃいけなくても、それを超えて溢れ出る苦しさがあり、役として受け⼊れるのが難しいくらい苦しかったです」(広瀬)、「萌ちゃんの家族3⼈と海に⾏くシーンが印象的でした。本当に素敵で、胸がギュッとされるような思いがありました。その後、僕が萌ちゃんを背負って海に⼊るシーンがあるんですが、両親を差し置いて萌ちゃんと⼼を通わせて、、、「南野さん、すみません︕」と思いながら演じました笑。」(松坂)と振り返ると、「最初は娘が取られてしまったと思って(松坂さん演じる野呂に)やきもちを焼いたんですが、娘が好きになっちゃんたんだと思いながらも、夫と⼆⼈で⽣きていくんだという決意もしました」(南野)と、当時の⼼境を語る。
咲和⼦の⽗親で、⾃らの”いのちのしまい⽅”を咲和⼦に託す⽩⽯達郎を演じた⽥中は、「(ライブビューイングで)カメラの向こうの⽅へお話しするのはとても不思議な感覚でいます。映画はライブだと思っております。映画の中で⽣きている、今も⽣きている、皆さんも⽣きている、⽣きていることはすごく⼤事なことだと思います。みなさん、⼤切に⽣きていきましょう」と本作を鑑賞される⽅々へエールを送る。
「まほろば診療所」メンバーが集う憩いの場「BAR STATION」のマスター・柳瀬尚也を演じたみなみは、「僕の演じる柳瀬という男は、世界中を旅して、⾦沢に落ち着いて、BARを出しました。そのお店の造りが遊牧⺠の家を模していて、とてもいい出来だったので、皆様にも⾒ていただきたいなと思ったんですが、終わると同時にさっと壊されてしましました。とても残念です。その中でゆっくり⼀杯飲みたいなと思っていたんですが…」と冗談を交えて挨拶。
世界がコロナウイルスと戦う中で、観客へのメッセージにについて質問されると、「南先⽣が”⽣ききる”と仰っていましたが、この⾔葉は⼼に留めておかなくてはと思いました。⽇々を精⼀杯に⽣きるということが、明⽇に繋がるのだと思いますし、それが最期までできれば、⾃分は幸せだったと思えるのではないかなと感じました。なかなか難しいかもしれないですが、この⼤変な時代を努⼒してきましょう」と吉永は温かいメッセージを贈りました。
松坂は、「体を治すだけが全てではなくて、その⼈、その家族、それぞれの幸せの形があり、その⼩さな⽇々の積み重ねによって、”いのちのしまい⽅”に繋がるのだなと強く感じました。⾃分の”いのちのしまい⽅”というものを改めて考えさせられました」と述べると、「早すぎますよね、そんなこと仰るの」(吉永)、「早すぎますよ、そういう発⾔が70歳を越えた⼈間が⾔うものだよ」(⻄⽥)とすかさずツッコミが⼊り、「⼀⽇いちにち充実できるようにします。⽣ききります︕」と松坂は改めて⾃⾝の気持ちを語った。
広瀬は、「訪問医療の世界は聞いたことはあったんですが、寄り添い⽅など(病院での医療とは)こんなにも違う世界なんだと知りました。役作りをしていく上で、⿇世ちゃんの優しさや、寄り添い⽅についてなるほどと思う部分がありました。さっき松坂さんが仰っていた『その家族にあった幸せの形をつくる』という通り、最期を迎えるときに、近くに味⽅でいてくれる⼈がいると思える環境があるといいなと思いました」撮影時を振り返ってコメント。
⻄⽥は、「⾃分の死を⾃然死で迎えられる⼈は幸せだと思います。世界では、⾃分の同胞から鉄砲で撃たれて亡くなる⽅もいるし、過去の戦争では原爆で、震災では津波に飲まれたいのちたちもあります。それに⽐べると、⾃然死を迎えられることは本当に幸せだと思います。私も幸せな死に⽅を模索して、どのようにして受け⼊れるかを考えております。それは、”⽣ききる”こと、⾃分に与えられたことを⼀⽣懸命やっていくということしかないと思っております。死ぬということを常々考える年齢になりましたので、どう”いのちを畳む”か、夜寝る前には明⽇死んでいたらどうしようかな、と考えております。そんな⼈⽣は幸せだなと思っています」と⾃⾝の”いのちのしまい⽅”との向き合い⽅について語る。
最後に、「今⽇は本当にありがとうございました。そして、今ここで特にお礼を申し上げたいのは、今回この映画を製作するにあたって、医療関係者の皆様です。⼤変温かいサポートをいただきました。ご指導いただいたり、映画を観て感想をお寄せいただいたりしました。こんな⼤変な時期にこの映画を観てくださって、私たちに⼒を与えてくださったこと、感謝しております。また、マスコミの皆様が温かい記事を書いてくださったことも⼤変嬉しいことです。そして、今⽇映画を観てくださっている皆様、⼼から御礼を申し上げます」(吉永)
「このコロナの中で、この素敵なメンバーで、⼼を⼀つにして不安の中撮り切って、こうして初⽇を迎えることができました。この映画の製作総指揮を務めた岡⽥裕介さんは、映画の完成直前に残念ながら亡くなってしまいましたが、原作の発掘から、現場、キャスティングの話まで、吉永さんと⼀緒に⼆⼈三脚でやってきました。最期に映画を観てもらえなくて残念でしたが、きっと今⽇、みなさんと⼀緒に『おーい』と⾔って笑って観てくださっていると思います。我々も岡⽥さんと⼀緒に⼀⽣懸命作りました。皆様の⼼のどこかにそれが伝われば幸いです」(成島監督)と、⼆⼈の想いが贈られ、温かい雰囲気の中イベントは締め括られた。
【ストーリー】
東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。これまでひたむきに仕事に取り組んできた咲和子にとっては人生の分岐点。父(田中泯)と暮らしながら「まほろば診療所」で在宅医師として再出発をする。院長の仙川徹(西田敏行)と訪問看護師の星野麻世(広瀬すず)、東京から咲和子を追いかけてきた野呂(松坂桃李)と共に、咲和子は様々な事情から在宅医療を選び、治療が困難な患者たちと出会い戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。
【キャスト】
吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、南野陽子、柳葉敏郎、小池栄子、みなみらんぼう、泉谷しげる、石田ゆり子、田中泯、西田敏行
【スタッフ】
監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎)
©2021「いのちの停車場」製作委員会
公式HP:https://teisha-ba.jp/