【第33回東京国際映画祭】黒沢清監督が語るジャ・ジャンクー作品の凄さ!「アジア交流ラウンジ」オンライン対談レポート!!
東京国際映画祭でアジアの映画人と交流!
黒沢清監督がジャ・ジャンクー作品に迫る!
オンライン対談レポート!
本日11月7日(土)13時より、アジア交流ラウンジのトークイベントが開催された。本日は『スパイの妻』でヴェネツィア国際映画祭で監督賞を受賞した黒沢清監督が参加した。また中国からは『長江哀歌』、『罪の手ざわり』で国際的評価を得ているジャ・ジャンクー監督が参加予定だったが、体調不良のため急遽欠席となった。その代わりにジャ・ジャンクー監督作品でプロデューサーを務めたこのイベントのモデレーターの市山尚三氏が黒沢監督の質問に答えた。
ジャ・ジャンクー監督に聞いてみたいことがあったという黒沢監督はジャ・ジャンクー作品のロケ地について聞いてみたかったらしく「ロケ場所とジャ・ジャンクーの関係を知りたいです。場所から物語を作っているんですか?」と質問。
それについて市山氏は「ジャ・ジャンクーの映画でロケーションは非常に重要な要素。第一稿を見るとこれはどこで撮るか決めてきてるなって言う箇所があります。一番極端な例としてはヴェネツィア映画祭で最高賞を受賞した『長江哀歌』ですね。そもそもドキュメンタリーを撮るつもりで、少人数でロケ地に入って行ったが、そこで様々なドラマを目撃するんですね。その状況を見て即興的に、劇映画を撮ろうと言うことになって。この映画はあの場所を見なければ出来上がらなかったし、ロケ地から完全にインスパイアされて撮った例ですね。」と語った。
この答えに対し黒沢監督は「日本でそれをやりたいと思うんですけど、中々難しい理由があります。監督が一方的にここで撮ると言うのは商業映画では許されない。場所から物語を発想することができない。」と日本での映画撮影の難しさを語った。
またジャ・ジャンクー作品の印象について黒沢監督は「一種のジャンル映画の様ですね。『罪の手ざわり』もあるパートは分かりやすいジャンル映画風だった。」と語ると、市川氏は「ジャ・ジャンクーは香港映画、ギャング映画の第ファン。最新作の『帰れない二人』は主人公が地方のチンピラで、途中から主人公とヒロインのメロドラマにはなっていく。香港映画、80年代のジョン・ウーの影響もあったりする。」と監督の作風が香港映画から大きな影響を受けていると語った。
トークを聞いていた視聴者から「ジャ・ジャンクー作品の中で印象に残っている作品は?」と質問が飛ぶと、黒沢監督は「どれも印象に残ってますけど、忘れられないのが『プラットホーム』で若者が演技をするシーンでジンギスカンという曲の中国版が延々とかかっていて、あの曲に何の思い入れもなかったんですけど、あのシーンを見て以来あの曲が大好きになりました。」と語った。
続いて「黒沢監督がドキュメンタリーを撮ることに興味ありますか。」という質問がきたが、黒沢監督は「かなり若い頃からフィクション、作り物にとても興味があって映画を撮り始めました。フィクションを頑張って構築していく以外の映画作りをやったことがないので・・・自分がドキュメンタリーを撮るにしても何を撮るのか分かりません。」と語った。
先ほどはジャ・ジャンクー映画のロケーションについて語った黒沢監督だが、「自身が撮ってみたいロケーションはありますか?」という質問に「本当に何やってもいいなら、今渋谷で撮れたらどんなに楽しいだろうなと思います。渋谷の街は大改造の真っ只中で、新しいビルがどんどん建つ一方で、これまで町並みが破壊されているという非常に面白い状況で、あそこを使えば本当に面白い映画が撮れんだよなと思いつつ、そんな欲望を持ってはいけないと自生しながら渋谷の街を歩いてます。」と今町並みが大きく変わっている渋谷の街に興味があることを語った。
こうしてトークイベントは終了。ジャ・ジャンクー監督本人は参加できなかったが、非常に内容の濃いトークショーとなった。
【ジャ・ジャンクー監督プロフィール】
1970年山西省汾陽生まれ。北京電影学院卒業。卒業制作の『一瞬の夢』(98)はベルリン国際映画祭で新人監督賞・NETPAC賞を受賞、釜山国際映画祭ニューカレンツ賞、ナント三大陸映画祭ではグランプリを獲得。2006年、三峡ダムに水没する古都・奉節を舞台に『長江哀歌』を製作。第63回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞。その他、主な作品に『プラットホーム』(00)『青の稲妻』(02)『世界』(04)『四川のうた』(08)『山河ノスタルジア』(15)『帰れない二人』(18)『海が青くなるまで泳ぐ』(20)など。
【黒沢清監督プロフィール】
1955年神戸市生まれ。立教大学在学中より8ミリ映画を撮り始め、1983年商業映画デビュー。『CURE』(97)で世界的に注目される。『回路』(01)はカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞、『アカルイミライ』(02)は同映画祭コンペティション部門に出品された。その後も『トウキョウソナタ』(08)で同映画祭「ある視点」部門審査員賞、『岸辺の旅』(14)では監督賞を受賞。初のフランス映画『ダゲレオタイプの女』(16)などがある。最新作は第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した『スパイの妻』(20)。
東京国際映画祭公式HP:https://2020.tiff-jp.net/ja/
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