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【第33回東京国際映画祭】是枝裕和監督がアジアの映画監督とトークイベント!「アジア交流ラウンジ」オンライン対談レポート!!

東京国際映画祭でアジアの映画人と交流!
是枝裕和監督×ホアン・シー監督
オンライン対談レポート!

本日11月2日(月)18時半より日比谷ミッドタウンにある日比谷三井カンファレンス8階にて、国際交流基金主催のトークシリーズ「アジア交流ラウンジ」が開催された。この日は『万引き家族』を始め多くの作品で国際的評価を得ている是枝裕和監督と、『台北暮色』で監督デビューを果たした新進気鋭の映画監督ホアン・シーが対談した。

「本来であればここにリアルに集まってお寿司でも食べながら世界各国の作り手の話を聞きたかった」という是枝監督のコメントでスタートした今回のトークイベント。「アジア交流ラウンジ」はYouTubeでライブ配信されている。


早速ホアン・シー監督の長編監督デビュー作品『台北碁色』の話を始まる。是枝監督はこの作品の「音」に注目しているとのことで「乗り物がいくつも出てきますし、その音も、生活の音も、街中で言うとインコを探しながら、遠くで聞こえてくる人形劇の楽器の音もあって。遠くから微かに聞こえてくる音の遠近感が見事だと思ったんですけど、脚本でどれぐらい決められていたのか?それとも撮影しながら決めていったのか?」という質問が出た。

それについてホアン・シー監督は「脚本を書いている中でベーシックなものは大体ありました。でも基本的には全部撮り終えてからミキシングの時に、改めて台北の音を発見するという感じでした。台北の街にはいろんな音があるというのを撮り終わって発見しましたし、是枝監督がそこに注目して頂いたのは、サウンドデザインのスタッフもすごく喜ぶと思います。」と是枝監督の着眼点に喜びを露わにしていた。

また本作には多数の長回しカットが登場する。それについて是枝監督から質問があったところ、ホアン・シー監督は「この映画の中は色んな人物によって、色んな事件が起き続けるんです。その中に人物を放り込むわけですけど、脚本の中ではポイントしか書いてないんです。実際に事件を体験してもらうっていうようにしていた。でも、それ以上に自分が面白いと思ってしまって、興味を持ってしまったんです。だから「カット」をかけなかったんですね。監督として非常に我がまま撮り方だと思うんですけど、それを許してもらいました。」と少し申し訳なさそうに語っていた。

ホアン・シー監督は台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェンの映画やテレビCMでプロダクション・アシスタントを務め、『黒衣の刺客』では助監督も務めている。やはりホウ・シャオシェンの語らずには、ホアン・シー監督を語ることはできない。実際に監督のデビュー作『台北碁色』にはホウ・シャオシェン作品のスタッフも多くいるし、製作総指揮はホウ・シャオシェンが担っている。是枝監督からは「ホウ・シャオシェンと長く仕事をしてきたと思うが、どんな影響を受けた?」と聞くと、ホアン・シー監督は「この作品を撮り終えてから自分の中で、自然とホウ・シャオシェン監督の影響をずっと受け続けていたというのがよく分かりました。私も当時は若かったので、その時は彼が現場でやっていることの意味が理解できていませんでした。でも今は、彼がしてきたことの意味が分かってきました。気が付けば彼の現場でのやり方が自然と身についていました。」とその影響力の大きさを語った。

話は『台北碁色』に戻って、是枝監督は「ラストシーンでエンストを起こす車があって、後ろの車が全部止まるというシーンがあったんですけど、許可を取ったのか、エストしたってことにして黙って撮ったのか?」と、映画のラストシーンについての質問をぶつけると、ホアン・シー監督は「あそこはゲリラ的に撮ったんですけど、全部こちらのスタッフってわけではないんですけど、このシーンは絶対に1回でO Kテイクにしてってプロデューサーが言ってたんですけど、リマが実際にパニックになるところを撮りたかったんですよ。結局5回撮ったんですよ。すべてゲリラ的に撮りました。」と衝撃のエピソードを明かしてくれた。

これを聞いた是枝監督は「東京だと絶対無理だな。羨ましいって思いました。」とコメントした。

現在は新作を準備中だというホアン・シー監督。新型コロナウイルスの影響で遅れてはいるものの、一生懸命準備中とのことだ。ライブ配信はここまでだったが、その後会場に集まった記者から「この映画祭はリアルとオンラインを活用してますけど、リアルな映画祭でないとできないことってなんでしょう?あとはオンラインだからこそできることってなんですか?」という質問が飛んだ。

これについてホアン・シー監督は「確かにこういうオンラインもいいですけど、最初に是枝監督も仰った様にお寿司を食べながらの交流もいいですよね。私もお寿司大好きです。」と笑いを誘った。

是枝監督は「今イタリアの参加者から感想が届いて、遠くまで届くんだなっていうのはいいことの一つだと思う。でも、映画祭は映画を見に行くだけじゃない。その街に行って、街の人に会う。匂いを嗅いで、美味しいものを食べる。映画祭は街の記憶と一緒にあるべきだと思う。東京国際映画祭もそういう匂いをする映画祭に変えて行けたらいいなと思う。」と締め括った。

アジア交流ラウンジはこの後も日本とアジア各国の様々なゲストを迎えて、映画人が同士が交流しながら、映画の未来を語らうイベントだ。

第33回東京国際映画祭は本日10月31日から11月9日まで開催される。

【ホアン・シー監督プロフィール】
映画監督、脚本家。1975年台北生まれ。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・アーツ卒業。2001年に台湾へ戻り、「三視多媒體」に入社。ホウ・シャオシェン監督初期TVCMの数々の名作や『憂鬱な楽園』(96)でプロダクション・アシスタントを、同監督による『黒衣の刺客』(15)で助監督を務める。『台北暮色』(17)で監督デビューを果たす。同作品は台北映画祭、台北金馬映画祭ほか各国映画祭での受賞多数。

【是枝裕和監督プロフィール】
1962年東京生まれ。1987年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオンに参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。2014年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そして父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画祭パルムドール、第91回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、日仏合作『真実』(19/ヴェネチア国際映画祭オープニング作品)。次回作は、自身初となる韓国映画『ブローカー』(仮)(ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ぺ・ドゥナ出演、2021年撮影予定)。

東京国際映画祭公式HP:https://2020.tiff-jp.net/ja/