『行き止まりの世界に生まれて』ビン・リュー監督によるオンライントークイベントを実施!
『行き止まりの世界に生まれて』
「自分がどうありたいかを毎日選ぶことができるのも自分自身」
ビン・リュー、オバマも絶賛の
ドキュメンタリー初監督作について語る
初監督作にして第91回アカデミー賞&第71回エミー賞にWノミネートという快挙を果たし、サンダンス映画祭をはじめ59の賞を総なめ、ロッテントマト満足度100%と全米の批評家・観客が絶賛!さらにオバマ元大統領が「感動的で、示唆に富む。ただただ惚れ込んだ」と年間ベスト(2018年)に選んだ傑作ドキュメンタリー『行き止まりの世界に生まれて』が9月4日(金)から公開し、連日満席続出この土日、都内新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷の2館では全18回中16回が満席となる大ヒットスタートを切った。
そして、9月6日(日)には新宿シネマカリテでビン・リュー監督のオンライントークイベントが行われた。朝から大雨が降る中、映画の評判を聞きつけて詰めかけたファンで会場はなんとほぼ満席!上映後、本作を観た直後の客席から質問を募りトークイベントを行った。トークではビン・リュー監督がスケートボードやスケートビデオに出会った14歳の時の話から、本作で描かれる社会社会問題としての暴力の連鎖について、そして監督自身の考えるそこから前に進むためのカギについてなど、充実のトークが繰り広げられた。
オンライントークのはじめにビン・リュー監督は一言「この映画を制作している時は、こんなにも世界中で公開されるなど夢にも思っていなかったので、こうやって日本で公開されることをとてもうれしく思っています」と笑顔で挨拶。
★14歳、スケートボードとの出会いから、映像を撮る魅力を知った
少年期から青年期にかけての12年間が描かれる本作に「監督にとって子どもから大人になることは?」という最初の質問。監督は「いつ大人になるのかは自分自身で決めることなのかなと思います。スケートボーディングについてこんな素晴らしい言葉があります。年をとったからスケートボードをやめるんじゃなくて、スケートボードをやめたから年を取るんだ、と僕自身は思っています」と回答。今でも自分のSNSに自身のスケート動画をアップしている監督。スケートボードを始めたのは14歳の頃。最初は仲間うちで、ビデオ撮影を持ち回りの役割分担をしてが「当時僕はそこまでスケボーが上手くはなかったから、より人気をなるために(笑)、よりリスペクトを得るために、上手い映像を撮れるように頑張って」ビデオの撮影や編集のレベルを独学であげて言ったそう。劇中に何度も登場するザックやキアーのトリック映像なども、監督自らの手で取られたものである。
★ビン・リュー監督「どんな価値観を大事にするか、その価値観が全ての人にとって意味があるものか」
そのようにして映像を撮りためてゆく日々の中、撮影助手などをしながら映画監督を志すように。自身の監督一作目のテーマを決めるにあたり、同じスケボー仲間のキアーやザック、そして監督自身も経験した親から暴力に関心を持った。本作では登場人物たちが受けてきた暴力、そしてその連鎖も描かれている。「暴力をなくすために、何をすべきとお考えですか?」という質問に、「個人レベルでは、暴力が起きた時に、それをきっちりと指摘するということがまずあると思います。全体としては、ただ暴力を罰するのではなく、暴力が起きる前に止める方法を見つけていかなければいけないと思います。自分が誰かを傷つけてしまうかもしれないことを認め、それを恥じずに、自分をより向上させるために、話をすること。そういったカルチャーを作ることじゃないかなと思います」と答えた監督。
続く質問でアメリカ社会に求めるものについて聞かれると「二極化を乗り越えられる方法です。今アメリカは、数十年に渡ってカルチャーが非常に二極化していると思うんです。カルチャー戦争みたいなものが起きていて、左か右か、赤か青か、というような状態が続いています。まるでゲームをしているみたいに、最終目的が勝利することのみになってしまっているように思います。その中で価値観やモラルといったものが置き去りにされてしまっている。社会の中で、どんな価値観を私たちは大事にしなければならないのか、そしてその価値観が、半数の人々ではなく全ての人にとって意味のあるものかを、改めて考えなければいけない」と意見を述べた。
そして、「もしロックフォードではなく他の町で育っていたら家族の在り方は変わったか?」という質問に対しては「ロックフォードじゃない場所でも、暴力はあったかもしれないと思います。DVというのは、世界中にあって、貧富も国も関係なくどこでも起きていること」と、本作で描かれる暴力の複雑さについて、真剣に応えた。
★「自分がどうありたいかを毎日選ぶことができるのも自分自身」
劇中で描かれる暴力性、そこから抜け出し前に進むための希望はあるか?「僕たちはみな、誰もが人を傷つける能力を持っていることを認識すべきだと思うのです。自分がどうありたいかを毎日選ぶことができるのも自分自身のはず。それが僕にとってこの映画が持つ最も大きなテーマであり、どうしたら家庭の中でお互いに対しての暴力がない社会に向けて進んでいけるかの対話をもたらすことができるものだと考えています」と熱弁。
出来上がった映画をキアーとザックに初めて見せた時、2人がどう反応するかとても緊張した、と語った監督。「キアーはセラピーだと言っていました」と教えてくれた。そして、ザックは涙を流していたそう。監督曰く「ザックにとっては人生で初めて自分自身をしっかり”見てもらえた”と感じたんだとと思います。少なくとも、僕が彼から両親について聞いてきたことなど考えると、彼は今まで、自分のスケートボードにしても自分のアートにしても、ちゃんと自分が受け入れられたと感じられたことがなかった。なので、彼にとってもセラピーであり、また受け入れられたと思える経験になったのかなと思います」。監督自身にとっても幼少期や思春期、複雑で理解できなかったことについて理解できる機会になったという。
★『行き止まりの世界に生まれて』を通して多くの対話を
アカデミー賞&エミー賞にWノミネートされ、サンダンス映画祭初め59の賞を受賞するなど高い評価を受けている本作。オバマ前大統領に絶賛されたことについて問われ、「彼は大学院生としてシカゴにやってきて、政治的なキャリアをスタートさせました。同じシカゴエリアの出身者であり、ちょうど僕が大人になる時期、選挙権を得る時期にすごく希望を与えてくれた人物」そんな彼に絶賛され、「すごく嬉しかった」と顔をほころばせた。
最後に、現在進行中の企画についても聞かせてくれた。「ここ2、3年取り組んでいるのは、シカゴの銃による暴力が多い2つのエリアを取材しています」。そこでアメリカにおける黒人の歴史についても掘り下げたいと考えているという。トークイベントの最後に「映画を応援してくださって、本当にありがとうございました。ぜひ、お友達やご家族にこの映画を見るように伝えてください。そして、多くの対話が生まれたら嬉しいです」と締めくくった。
【ストーリー】
傷だらけのぼくらが見つけた明日――
「全米で最も惨めな町」イリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザック、ビンの3人は貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードにのめり込んでいた。スケート仲間は彼らにとっての唯一の居場所で、もう一つの家族だった。そんな彼らも大人になるにつれ、さまざまな現実に直面し段々と道を違えていく。カメラは、明るく見える彼らの暗い過去、葛藤を抱える彼らの思わぬ一面を露わにしていく――。
監督・製作・撮影・編集:ビン・リュー
出演:キアー・ジョンソン、ザック・マリガン、ビン・リューほか
エグゼクティブ・プロデューサー:スティーヴ・ジェイムス(『フープ・ドリームス』)ほか
93分/アメリカ/2018年 英題:MINDING THE GAP 配給:ビターズ・エンド
公式サイト:bitters.co.jp/ikidomari
Twitter:@ikdiomari_movie
instagram:@ikidomari_movie
Facebook:@ikidomari.movie
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新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか大ヒット公開中!