【第98回アカデミー賞】本命は『罪人たち』か『ワン・バトル・アフター・アナザー』か、映画祭ウォッチャー大西Dが予想!
いよいよ日本時間3月16日に開催される第98回アカデミー賞授賞式。新たにキャスティング賞が新設され、また日本からは200億円を超える大ヒットを記録した『国宝』がメイキャップ&ヘアスタイリング賞に候補入りしたことでも話題になっている。
一体どの作品が、誰がオスカーの栄誉を手にするのか。そこで今回は作品賞と監督賞、演技4部門の受賞を予想します!
◆作品賞
本命:罪人たち
対抗馬:ワン・バトル・アフター・アナザー
大穴:無し
そもそも今回のオスカーの主役は『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『罪人たち』だ。前哨戦は『ワン・バトル・アフター・アナザー』がほぼ独走したかと思えば、オスカー16ノミネートという新記録を『罪人たち』が打ち立てた。普通に考えれば、受賞もこの2作品のどちらかになると思われる。
ゴールデン・グローブ賞や製作者組合賞など、重要な前哨戦は『ワン・バトル・アフター・アナザー』が制した。一方で俳優組合賞を制したのは『罪人たち』が勝利している。正直言って、どちらの作品が受賞しても不思議ではない。ただ、どことなく風は『罪人たち』に流れているような気がする。もちろんオスカーのこれまでの歴史において、ヴァンパイア映画が頂点に立ったことはない。その歴史を塗り替えるには、これ以上に相応しい作品は無いだろう。
そして「大穴」というところを作っておいて申し訳ないが、この部門には大穴は無さそうだ。
◆監督賞
本命:ポール・トーマス・アンダーソン『ワン・バトル・アフター・アナザー』
対抗馬:ライアン・クーグラー 『罪人たち』
大穴:無し
この部門は前哨戦の結果から考えてもポール・トーマス・アンダーソンが最有力と言って良いだろう。『ブギーナイツ』、『マグノリア』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『ザ・マスター』、『ファントム・スレッド』、『リコリス・ピザ』。ここに並べた作品群だけを見ても、既に一つか二つはオスカーを取っていても不思議ではないほどの巨匠がポール・トーマス・アンダーソンだ。
これまでは、彼以上に強力なライバルの前に受賞できなかったが、最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』は今回のオスカーでも主役級の作品だ。それにキャリアの差もある。ライアン・クーグラーは2010年代から頭角を現した、どちらかというと新進気鋭の監督であるのに対し、ポール・トーマス・アンダーソンは90年代から活躍を続けている。会員の多くはポール・トーマス・アンダーソンにオスカーをあげたいと思っているだろう。
世界三大映画祭の監督賞を制したPTA、いよいよオスカーを手にする日が・・・!
◆主演男優賞
本命:マイケル・B・ジョーダン 『罪人たち』
対抗馬:ティモシー・シャラメ 『マーティ・シュプリーム』
大穴:ヴァグネル・モウラ 『シークレット・エージェント』
賞レース序盤から中盤の本命は間違いなくティモシー・シャラメだった。そもそも昨年、あのボブ・ディランを演じた『名もなき者』で、彼はオスカーを受賞すべきだった。それでも彼はオスカーを受賞できなかった。まだ30歳、実在の卓球選手を演じた『マーティ・シュプリーム』では製作も務め、気合も十分。遂に彼が受賞すると思ったはずだ。
しかし、今回のオスカーの主役『罪人たち』がオスカーのノミネート数の新記録を打ち立てて、一気に盛り上がると、俳優組合賞のキャスト賞も制し、主演男優賞もマイケル・B・ジョーダンが受賞した。作品の勢いを見ても、ジョーダンが一気に本命に躍り出たと私は思っている。
もちろんシャラメは素晴らしい俳優で、彼がオスカーを受賞しても誰も文句は言わないだろう。でも彼はまだ30歳。これから先いくらでもチャンスはあるだろう。であれば、今回はライアン・クーグラー×マイケル・B・ジョーダンのタッグが生み出した大傑作『罪人たち』の主演俳優に票が流れても不思議ではないだろう。
大穴はヴァグネル・モウラ。『シークレット・エージェント』は作品賞含めて4部門に候補入りした作品で、彼もゴールデン・グローブ賞を受賞している。とはいえ、さすがにこの二人を前にしては厳しいか。
◆主演女優賞
本命:ジェシー・バックリー 『ハムネット』
対抗馬:ケイト・ハドソン 『ソング・サング・ブルー』
大穴:ローズ・バーン 『If I Had Legs I’d Kick You』
賞レース序盤はローズ・バーンが優勢だったこの部門だが、いざ進んでみるとゴールデン・グローブ賞や俳優組合賞などの重要な賞はほぼ全て『ハムネット』のジェシー・バックリーが制した。元々はテレビ中心に活躍していたが、2018年の『ワイルド・ローズ』をきっかけに映画での活躍も増えた。マギー・ギレンホール監督作品『ロスト・ドーター』で初ノミネートをして、今回が2回目のノミネート。クロエ・ジャオ監督作品『ハムネット』でシェイクスピアの妻を演じて、大絶賛を集めている。文句なしにこの部門のフロントランナーだ。
対抗馬は『ソング・サング・ブルー』のケイト・ハドソンだろう。受賞確実と言われた『あの頃ペニー・レインと』で敗れて以来のオスカーノミネーション。ニール・ダイヤモンドのトリビュート・バンドとして活動する夫婦を描いた作品で、ヒュー・ジャックマンと共に歌唱パフォーマンスも披露。実は最近歌手デビューしたばかり。現状バックリーに対抗できる唯一の存在と言える。
大穴は賞レース序盤で優勢だったローズ・バーン。実は映画ファンが一番喜んでいるのは彼女の候補入りではないだろうか。『28週後』、『インシディアス』、『X-MEN』、『ブライズメイズ』など多くのヒット映画に出演し、映画ファンに愛された彼女。受賞の可能性は低いだろうが、彼女のノミネートに多くの映画ファンが歓喜したはずだ。
◆助演男優賞
本命:ステラン・スカルスガルド 『センチメンタル・バリュー』
対抗馬:ショーン・ペン 『ワン・バトル・アフター・アナザー』
大穴:ジェイコブ・エロルディ 『フランケンシュタイン』
若手のジェイコブ・エロルディ以外は長年映画やドラマで活躍を続けてきた俳優たちが候補入りしたこの部門。唯一の若手であるエロルディは、『フランケンシュタイン』の作品評価も高いが、さすがに多くのベテランたちの前では今回は厳しいかもしれない。それでも受賞すれば話題になるという意味では大穴だろう。
前哨戦で勝利が多かったベニチオ・デル・トロ、ショーン・ペンの『ワン・バトル・アフター・アナザー』組はどうか。確かに作品評価は高いし、受賞に値するのかもしれない。ただし彼らのネックは、同じ作品からの候補入りで票割れを起こすこと。そして何よりも、既にオスカー受賞者であるという点だ。それであれば、まだオスカーを受賞したことが無い俳優に入れたくなる会員も多くなるのではないだろうか。
本命はステラン・スカルスガルドと見ている。前哨戦は思いのほか『ワン・バトル・アフター・アナザー』の二人の前に苦戦したが、ゴールデン・グローブ賞は受賞した。ただ、肝心の俳優組合賞はまさかの候補漏れとなったが、それでも今回は彼になりそうな予感。マッツ・ミケルセンと並ぶ北欧の名優である彼は、アート作品でもハリウッド大作でも存在感を発揮する名優。74歳にして初のオスカーノミネーション。長年映画業界で活躍してきたベテランが評価されやすい部門でもあるので、やはり彼が本命だろう。
◆助演女優賞
本命:エイミー・マディガン 『WEAPONS/ウェポンズ』
対抗馬:テヤナ・テイラー 『ワン・バトル・アフター・アナザー』
大穴:ウンミ・モサク 『罪人たち』
演技部門の中では唯一、受賞経験者が誰もいないのがこの部門。誰が本命になるか、賞レースが始まるまでは難しかったが、いざ始まるとエイミー・マディガンの独走だった。各批評家賞のみならず、ゴールデン・グローブ賞や俳優組合賞も含めて、ほぼほぼ独走状態。他の4人が初ノミネートなのに対して、唯一2度目の候補入り、しかも40年ぶりだ。対象作は昨年大いに話題になったホラー映画。この作品で彼女が見せる演技はかなり強烈だ。こういった作品での演技が評価されるというのは、映画ファンとしても嬉しいところだ。
今回の主役の1本である『ワン・バトル・アフター・アナザー』のテヤナ・テイラーはどうか。実は『ワン・バトル・アフター・アナザー』で演技部門の受賞可能性が最も高いのが彼女である。演技部門において作品の支持を最も集めやすいのが彼女だ。ただ、それはエイミー・マディガンも同じで、『WEAPON/ウェポンズ』は作品評価もかなり高く、しかも同作からは彼女が唯一のノミネートだ。それにエイミー・マディガンは御年75歳。長年映画業界で活躍してきた彼女の方が、やはり強いとみるべきだろう。
マディガンにとって不気味なのはむしろ『罪人たち』のウンミ・モサクかもしれない。MCUのドラマシリーズ『ロキ』で強いインパクトを残した彼女は、同作でも強烈なインパクトを残している。『罪人たち』は今回16ノミネートを記録するほどの作品、その勢いを借りて、彼女がオスカーを受賞する可能性も、少なくはあるが、0ではないだろう。
第98回アカデミー賞授賞式は日本時間3月16日に開催される。一体どの作品が、どの映画人がオスカーの栄誉に輝き、歴史に名を残すのか。今からワクワクが止まらない!










