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映画『スペシャルズ』内田英治監督インタビュー 「おじさんたちの友情映画にしたかった」殺し屋×ダンスの無茶な設定が成立した理由

映画『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が原案・脚本まで手がけた、渾身の完全オリジナル映画『スペシャルズ』が3月6日より公開となる。「殺し屋がダンス大会に出る」という一見すると無茶な設定ながら、軽快なエンターテインメント映画かと思いきや、ハードなアクションも展開され、物語が進むにつれて男たちの不器用な友情が浮かび上がる。コメディ、青春映画、人情もの、そしてハードボイルドアクションが混ざり合った独特の手触りの作品に仕上がった。なぜこの大胆な物語が成立したのか。脚本の出発点からアクションのリアリティ、そしてキャラクターの描き方まで内田監督に話を聞いた。

取材:稲生D(共感シアター)

 

原案・脚本・監督:内⽥英治
1971年⽣まれ、ブラジル・リオデジャネイロ出⾝。映画監督・脚本家。
「週刊プレイボーイ」の記者を経て1999 年にドラマ「教習所物語」で脚本家デビュー。2019年、脚本・監督の⼀翼を担ったNetflix オリジナルドラマ「全裸 監督」が世界配信され、話題となった。2021年に『ミッドナイトスワン』が⽇本アカデミー最優秀作品賞を受賞 し、世界各国の映画祭で上映された。近年では、『異動辞令は⾳楽隊!』(22)、『サイレントラブ』(24)、 『マッチング』(24)、『ナイトフラワー』(25)など数多くの作品を⼿掛けている。

 

■警察官から殺し屋へ、設定が変わった理由

――「殺し屋がダンス大会に出る」というかなり大胆な設定ですが、ツッコミながら観られる楽しさもありつつ、最後のダンスシーンでは一気にアガって見事に“細かいことはいいや”と思わされました。このバランスは難しかったのではないでしょうか。

内田監督:そうですね。もう“漫画だ”と割り切って脚本を書いたんです。でも漫画原作の実写化じゃなくてオリジナル脚本なので、そのラインをどうするかはずっと考えていました。ちなみに最初は主人公、警察官だったんですよ。

――え、そうなんですか!

内田監督:警察官がダンス大会に出るという設定でした。「なさそうだけど、ありそう」なラインだったんですけど、それだと脚本が全然進まなかったんです。どうしても普通のコメディになってしまって。それで、もう少しファンタジーに寄せようと思って、警察官をやめて殺し屋にしました。殺し屋同士が殺し合いをしている世界にしたら、急にスラスラ書けるようになりましたね。高速道路で車同士で銃撃戦するとか、かなりファンタジーな要素も入れられるようになって。ただ、全部がファンタジーだと成立しないので、椎名桔平さんがいるヤクザの世界観は比較的リアルに描こうと思いました。シーンごとにリアルな部分をちゃんと置けば、全体として観客が面白がってくれるんじゃないかと考えました。

■これは“おじさんたちの友情映画”

――『ウォーターボーイズ』のようにコメディや熱血青春に振り切る方向もあったと思います。『スペシャルズ』は青春ものでもありコメディでもあり人情ものでもあり、しかも裏社会の抗争も描かれている。このジャンルの混ざり方は、書いていく中で見えてきたのでしょうか。

内田監督:基本は、おじさんたちの友情の話なんですよ。昔の香港ノワールとか、30〜40年前の香港映画、日本の古い映画も含めて、ああいうものをずっとやりたいと思っていて。どこか後ろめたいものを抱えた人たち、社会の端っこにいるような人たちの方が、個人的に好きなんです。でも警察官設定のときは友情が描きづらかった。でも殺し屋にした瞬間、人間関係が描けるようになったんです。どこか負い目がある人たちのほうが、人間関係が濃くなるんですよね。

――『フル・モンティ』のように大人たちが集まってダンスするコメディもありますし、『男たちの挽歌』や『ザ・ミッション/非情の掟』のように寄せ集めの男たちがチームになる映画も思い浮かびました。そういった作品は意識されていましたか。

内田監督:もう、めちゃくちゃ好きです。ただ真似したいというより、自分が昔から好きだったものを今の感覚でやるとどうなるか、という意識の方が強かったです。今ストレートにやると寒くなるのかなと思ったので、今回はコメディに振り切ることで成立すると思いました。香港ノワールって、今思うと超ファンタジーじゃないですか。そういうのを久しぶりに思い出しながらやってみたんです。

――ダンスが前面に出た企画なので、アクションは軽めかと思っていたのですが、銃撃戦もかなりハードでした。

内田監督:ありがとうございます。でも僕の中では、最初の撃ち合いのシーンはちょっとコミカルにしすぎたかなという反省もあって(笑)。かなり漫画的にしてしまったので、今こうやってハードだったと言ってもらえて嬉しいですね。

■小沢仁志は、踊りが苦手

――小沢仁志さんのダンスは衝撃でした。『列島制覇 ―非道のうさぎ―』では合唱団で歌わせていましたが、今回もかなり無茶ぶりをされましたね。

内田監督:最初に連絡した時点で勘づかれてましたね。「踊りとか絶対無理だからな」って。前に「歌わないですよ」と言って出てもらったことがあるので(笑)。撮影で踊れる回数って限られていて、2〜3回しかできないんです。小沢さんには相当プレッシャーだったと思います。あれだけ動ける人なのに、本当に踊りは苦手なんですよ。アクションの時はウズウズしてましたけど(笑)。ただ、やっぱりプロなんで最後は合わせてくる。“ザ・役者バカ”ですよ。ああいう小沢仁志はなかなか見られないと思います。

――みなさんのダンスの出来についてはいかがでしたか。

内田監督:佐久間大介は天才レベルですね。悠太くん(中本悠太)も上手い。残りの3人は……とにかく必死でした(笑)。

――振付はキャッチーで真似したくなるようなダンスになっていますが、決して簡単ではないですよね。

内田監督:すごく大変だったんだろうなと、他人事のように思っています。桔平さん(椎名桔平)には「吹き替え入れますから」と言って騙したので(笑)。かなり苦労されていました。ただ最後はやっぱり仕上げてくるんですよね。
――おじさんたちが頑張っているところがすごく伝わってきました(笑)。

内田監督:重要なのは、技術が高いことじゃないと思っていて。技術は高くなくても、ダンス大会を勝ち抜いていくというリアリティは大事なんです。昔『元気が出るテレビ』のダンス甲子園を担当していたんですけど、あの時もダンスが上手いから人気が出るわけじゃなかった。5人組としてしっかり魅力があると、観ている側も「なんで優勝するの?」と思わないラインに来るんです。今、おじさんたちが元気ないじゃないですか。映画ではおじさんが任務を遂行するために必死に頑張る。その姿が伝わればいいなと思っていました。

■オリジナルを書き続ける理由

――監督はオリジナル脚本を重視されています。いま日本映画は原作ものが中心ですが、どう感じていますか。

内田監督:僕自身、原作ものを否定しているわけではないんです。むしろ悔しいんですよ。漫画や小説を見ると「よくこんなの書いたな」と思う。悔しいから自分で書きたくなる。原作は元の作品がすごいので、映画はどうしても付随するものになる。80〜90年代の映画のように、「映画のためだけにあるストーリー」は大事にしたいですね。僕は脚本を書くのが一番好きなんです。書いている時が一番自由で、クリエイティブなので。

■映画はヒットしなければ届かない

――以前、監督が「ヒットする映画を作ることが重要」と話されていたのを拝見しました。映画監督はヒットをそこまで気にしなくてもいい、という考え方もありますが、そのあたりはどうお考えですか。

内田監督:インディーズの頃は、自分の撮りたいものを撮ればいいと思っていたんです。でもある日映画館に行ったら、お客さんが7人しかいなかった。そのとき、現実から逃げて大きなことを言っても意味がないと思ったんです。映画は大勢に観てもらってこそ意味がある。ヒットしないと届かない。お客さん7人じゃダメだなと。特にオリジナル脚本はどんどん減っているので、ヒットさせないとその火が消えてしまう。映画が生まれてから観客の目に触れるまで付き合えるのはオリジナル作品だからこそだと思っています。僕は配信世代ではないので、「オリジナルであること」「スクリーンで観るものであること」には最後までこだわりたいですね。

■大分の映画館で育った映画少年

――最後に少し余談ですが、監督がブラジルから帰国されたあと、大分にいたと聞きました。実は私も大分出身で、セントラルプラザに入り浸っていました。※セントラルプラザ:かつて大分市中心部にあった映画館街(複数の劇場が集まっていた興行施設)。

内田監督:同じところですね。僕もあの辺をうろうろしてました。

――1日4本観て、親戚の家に泊まってまた4本観て帰るみたいな生活でした。

内田監督:僕も映画しか観てなかったですね。『少林寺2』とか。確か『猛獣大脱走』の併映でしたけど。あと『ターミネーター』も大分のころに観ましたね。中学2年生の時ですね。あの頃のハリウッド映画が一番面白い時代でしたね。当時は友達いなかったですけど、映画があって良かったと思います。大道の貸しレコード店「U&I」に通って、レコードとビデオレンタルの日々でした。

――すみません、ローカルの話ばかりしてしまって(笑)。

内田監督:いえいえ、ありがとうございました(笑)。

 

『スペシャルズ』
3月6日(金) 全国公開

<STORY>
過去に「ダンス経験がある!? ⋯」という理由で集められた、伝説の殺し屋・ダイヤら<孤高のプロの殺し屋たち>。裏社会のトップ・本条会のクセ者親分が必ず訪れるダンス大会での暗殺をもくろみ、チームを組んで大会の出場を目指すことになるが、実はまるでド素人で仕方なくダンス教室に通い始めるも、ことごとく問題を起こして破門される。そこにダイヤの勤める児童養護施設のダンス少女・明香が救いの手を差し伸べ、最初は歪みあっていた殺し屋たちも次第にダンスの魅力に目覚め、いつしか<スペシャルな5人>のチームへと。ダンスも成長を遂げ、本気でダンス大会への情熱を燃やし、あとは暗殺ミッションに挑むだけであったが⋯。

原案・脚本・監督:内田英治
出演:佐久間大介(Snow Man)、椎名桔平、中本悠太(NCT)、青柳翔、小沢仁志、羽楽、前田亜季、平川結月、矢島健一、六平直政、石橋蓮司 ほか
振付:akane
音楽:小林洋平
主題歌: Snow Man「オドロウゼ!」(MENT RECORDING)
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
©2026「スペシャルズ」フィルムパートナーズ
公式HP:https://eiga-specials.com/