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ドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』公開記念トークイベント実施!東出昌大「愛や優しさを持ち続けて─」 『犬と戦争』『WILL』の共通点、現代社会における“愛”や“コミュニケーション”を語る

ドキュメンタリー映像作家の山田あかねが監督した、ウクライナで動物の命を救おうと奮闘する人々を追ったドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』が2025年2⽉21⽇(⾦)から公開をスタートした。

今回、本作の公開記念トークイベントがアップリンク吉祥寺にて開催され、山田あかね監督をはじめ、ナレーションを務めた東出昌大と、映画監督のエリザベス宮地が登壇した。本作で東出がナレーションを務めることになった経緯として、山田監督が、エリザベス宮地監督のドキュメンタリー映画『WILL』を観て「動物が好きな東出さんが、狩猟生活をする中で日々命を向き合う姿に感銘を受けてお願いしたいと思った」ことがきっかけとなる。

■本作のナレーションについて
そんな東出のナレーションについて、山田監督は「映画が公開されてから、東出さんのナレーションが良かったという感想を多くいただいている。最初は自分でやろうと思いましたが、やはりプロの方にお願いしようと思いました。男性の声だと違和感があると思いましたが、その違和感がうまく映画のガイドになっているという感想も多くてありがたいです」と公開後の反響を語る。

宮地も、映画の感想について東出のナレーションの触れ、「山田さんの一人称の言葉だったので、これは山田さんがやった方が説得力があるのかなと思いながら最初は観ていました。でもだんだんと馴染んできて、東出さんがナレーションをすることによって幅が豊かになり、映画に余裕が生まれた。本編には衝撃的な映像などもありますが、幅の豊かさによって、自分の中で色んなことを考えながら観られるようになりました」と語った。

東出もナレーションを振り返り、「最初に収録するスタジオで、『一人称で“私”と言っている部分は山田監督ご自身がナレーションを入れた方が良いと思う。他のシーンの状況説明は私でもできるので』と伝えました。でも一応その時は全て収録して、『監督の裁量で使ってください』とお話ししました。でも、監督がおっしゃってくださったように、私が読むことによって監督一人の想いではなくなるということが伝われば嬉しいです」と話す。

■動物と人間の関係性、動物の力について
続けて、東出は幼い頃から4匹にわたって犬を飼っていると明かし、「今は4匹目なので“しーちゃん”と呼んでいる犬がいますが、犬とずっと生活してきて、犬から学ぶことも多いんです。先日子どもが生まれた際に、しーちゃんに会わせようと思って実家に子どもを連れて行ったんです。しーちゃんは猟犬なので、威嚇するような態度をとってしまうか心配でしたが、実際に会ってみるとクンクンと子どもの匂いを嗅ぎ始めたんです。そのうちに、子どもがベビーベットの上で泣き出すと誰よりも先に行って、「この子、泣いてますよ」と伝えるような鳴き声でこちらに呼びかけるんですよ。犬はすごいな〜と思います。普段から犬に教わることも多くて感謝していたので、このような作品に携われて大変光栄でした。ありがとうございます」と犬への愛と感謝を語る。

山田監督は、実際にウクライナでの取材を振り返り、「いざ戦争が起きると人間は我先にと逃げて、動物は後回しにされる状況なんだろうなと思っていました。たしかに実際にそういうこともあって、キーウから近いボロディアンカという街のシェルターでは多くの犬が死んでしまいました。でも一方で、戦争中なのに保護犬を引き取る人が減っていないんです。そんな大変な時になぜ動物を飼うのか尋ねると、そばにいてくれる存在がいた方が良いかという答えでした。戦争中は心が荒んでいくから人間同士の関係もギスギスしていきます。本当は戦争反対と言いたくても、誰かの家族は戦争に行って亡くなっているので、こんな戦争やめた方がいいと言ってしまったら、亡くなった方に悪いということになってしまう。だからみなさん、心の中では反戦なんだけど言えない、という空気もありました。そんな時に、犬が元気よく走り回っている姿を見るだけで気持ちが和むんです。逆に大変な時こそ動物の力が発揮されるということは、今回の取材で改めて感じたことでした」と話した。

宮地も、本作を見て驚いたことを明かす。「戦争中にも関わらず犬を飼う人が減らないということが、この映画の中で一番衝撃で驚きました。その理由が“ラブ”だというのもいいですね。『WILL』を撮っている時もそうだったのですが、コロナ禍で都会がギスギスした空気になり、電車の中でちょっとでも咳をしようものなら嫌な顔をされるという状況で。そういう殺伐とした空気が嫌で、その時に東出さんが狩猟していることを知って撮り始めたんです。その時は”ラブ”というものが欠落していたんですよね。“ラブ”と聞くと人間同士の間にだけあるものと考えがちですけど、『WILL』の撮影を通しても、今回の映画を観た上でも、人間や動物という種類は関係なく結びつけてくれるものが、ラブ=愛なのかなと思いました」

それに対し山田は、本編に登場する元イギリス兵で動物の救出活動を続ける“トム”について、祖父の代から親戚の男性までみんな軍人として活動する家庭だと話し、「彼も中学を卒業したあと、何の疑問もなく自分は軍人になって悪い奴らを倒すんだと思って軍人になったそうです。そうして、アフガンとイラクに従軍した結果、精神を病んで生きる力がなくなってしまった。でもそんな彼を救ったのが、軍用犬の1匹である “ジプシー”という犬だったんです。そして、『WILL』で東出さんが山に入って動物と対面しているところを見た時に、やはり人間社会から離れたかったのかなと思ったんです。人間社会ですごく傷ついた人って、なかなか人間では治らないじゃないですか。でも生き物ってストレートだから、自然や動物にはそのような治癒力があるのかなと思いながら拝見しました」と動物が人間に与える影響について、ウクライナでの取材と映画『WILL』の内容を重ねて語る。

東出も『WILL』の撮影を振り返る。「スキャンダルの直後くらいから撮り始めたと思います。あの頃は、“このあと仕事はあるのだろうか”とか家族や子どものことも考えて、不安と恐怖でいっぱいでした。どうしたら生きていけるだろうかと思って山に入った時期です。山田監督のおっしゃる通り、動物を観察していて思うのが、この子たちは将来の不安とかを考えずに生きているなということです。“年金もらえるんだろうか”とか“借金どうしよう”とか全然考えずに、草を食べてボケーっとしてるじゃないですか。それってすごいことだと思うんです。私の現時点での考えとしては、私は動植物が好きで山暮らしが合っていますけど、虫が苦手な人や都会暮らしの方があっている人もいますよね。先ほど宮地さんも愛について話していましたが、愛とは一方的に与えたり与えられたりするだけではなくて、植物や動物や土や虫などあらゆるものとの関係性があって今自分がここにいるんだ、と考えられるようになりました。これが豊かさで、愛情深いということだと思うようになりました」と語る。そして、「ペットもそうですが、動物は“自然とはこういうものだったんだよ”ということを教えてくれる。私はそういう自然を感じられると、愛というものが芽生えて、“ああ、今生きていて幸せだな”と思える山での生活を過ごしています」

■最後に
改めて、本作について観客へ伝えたいこととして、宮地は「この映画を観ていて、本当にいろんな感情が浮かんだり、いろんな思考が巡りました。自分の中で考えがまとまらず言葉にできないこともまだ多いのですが、こうやって人と話すことや映画を見ることは“コミュニケーション”だと思うんです。そして、“コミュニケーションてなんだろう”と考えた時に、今の考えとしては“相手の中に自分を見つけること”だと思ってます。それが大事だと。この映画の中でいろんな人が出てきていろんな考えがあったと思いますが、どの人が自分に近しいというわけでもなくて、全員にあるはずなんです。ここにいる全員の中に僕がいるような。それを見つけることがコミュニケーションだと思います。僕はまだ言語化できないことがたくさんあるんですけど、一緒に考えながら生活していけたらなと思います。今日はありがとうございました」と最後の挨拶をした。

東出は、最後のメッセージとしてこのように語る。「ロシアとウクライナや、イスラエルとパレスチナの問題もそうですが、戦争は正義と正義のぶつかり合いだと感じました。どちらが正義でどちらが正義ではないと言い出すと、キリがないですよね。育った環境によっても何が正しいのか違うと思いますし。だから、正直に言うと私は正義を持っていないです。それに白黒つけるのはかなり難しいと思っていて、諦めがあるから正義を持っていないと今は言えます。落語にこのような話があります。男が家に帰ってきて、女房に『隣の家をのぞいたら、金がないと言って芋ばかり食べている。あいつのところに米を持って行ってやれ』と言って、隣の家に米をあげるんです。それで、男が自分の家で何か食べようとして『おい、食べ物あるか』と奥さんに聞くと『何もない』と言われて、『じゃあ芋でも食べるか』という展開になるんです。今起きていることでいうと、『戦争を止めてやるからレアアースをよこせ』というのは、そういうことなのか?と疑問に思います。辛い人がいるから支援するのではないかと。こちらが芋を食べながらでも支援する、ということで良いのではと思います。動物はそのくらい慈愛の精神を持っているように思います。正義とか不正義とか、どんなに言葉を尽くそうと思っても、あれだけの有識者の方たちが答えを出せない中で、これから私たちの生きる時代は混迷を極めるかもしれないです。でも落語の中にもあるように、愛や優しさや慈愛の精神を持ち続けていたら、近しい人たちと幸せになれるのかなと思います。なので、私はまず近くの親しい人たちと米とか芋をやり取りする中で愛情を見出しながら、犬と一緒に生活していきたいと思っています。みなさんも、愛情深い人に恵まれますことを祈っております。ありがとうございました」と締め括った。

 

『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』
全国公開中

監督・プロデューサー︓⼭⽥あかね
ナレーション︓東出昌⼤
⾳楽︓渡邊 崇
製作︓四宮隆史
プロデューサー︓遠⽥孝⼀ ⻑井 ⿓
撮影︓⾕茂岡 稔
編集︓前嶌健治
サウンドエディター︓丹 愛
バンドゥーラ演奏・ヴォーカル︓ナターシャ・グジー
アソシエイトプロデューサー︓⾏実 良
構成協⼒︓松⾕光絵
アシスタントプロデューサー︓泉野 真依⼦
宣伝︓加勢 恵理⼦
制作プロダクション︓スモールホープベイプロダクション
配給︓スターサンズ
製作:『⽝と戦争 ウクライナで私が⾒たこと』製作委員会
©『⽝と戦争』製作委員会

公式HP:inu-sensou.jp
公式X:@inu_sensou(https://x.com/inu_sensou