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【第37回東京国際映画祭】塚原重義監督、映画『クラユカバ』主演・神田伯山起用について振り返る「作品の時間の流れが止まる気がして説明口調が嫌い。講談調に流れるように言ってもらいたかった」

現在開催中の第37回東京国際映画祭にて、映画『クラユカバ』のトークショーが角川シネマ有楽町で開催され、監督・原作・脚本を務める塚原重義が登壇した。

塚原監督はバンド「SEKAI NO OWARI」の舞台設計やアニメ制作に携わるなど、長年個人映像作家として活躍してきており、本作『クラユカバ』が初の長編アニメーション映画となっている。同作は集団失踪事件の謎を追って地下世界「クラガリ」に足を踏み入れる私立探偵の活躍を唯一無二のレトロな世界観で描いた作品で、昨年のファンタジア国際映画祭の長編アニメーション部門で観客賞・金賞を受賞している。

本作は「クラガリ」というレトロな地下世界を舞台にしている。その舞台設定について塚原監督は「自分は東京出身で、東京という街の歴史について興味を抱いた時期があった。本作は東京北区王子をモチーフにしている。自分が思う架空の東京を強く意識してますね。」と語り、さらに「東京の地下鉄が好き。地下鉄って身近で行ける異界なんです。馬喰町駅とかすごいんですよ。やたらと地下水が沸いてて、そこら辺に水が滴ってる。こんな場所が東京中央区にある。手軽に行ける異界は地下だと思って使っていった」と地下世界を選んだ理由を語った。

こういった舞台設定があって、その上でストーリーを考えたという。塚原監督は「今回は地下を冒険する話にしようというのが大前提。そこから地下世界冒険作品って、どんな作品があるか調べた。日本神話の黄泉比良坂とか。あれは死者や過去にいなくなった人を探す話で、そこを一つのモチーフにしようと思った」とコメント。さらに「この作品は構想期間が長かったんですけど、なかなか企画が成立しなかった。企画書を持ち込んでも断られ続ける。そんな閉塞感のある日常というのを主人公に込めた。それで壮太郎が生まれた」と、この作品の制作過程の中で主人公・壮太朗というキャラクターが生まれたことを語った。

そんな壮太朗を演じたのは「最もチケットが取れない講談師」と言われる六代目・神田伯山が務めた。このキャスティングについて塚原監督は「壮太朗の声は迷ったんですよ。話の展開上、壮太朗はとにかくセリフが多くなる。なおかつ探偵役なので説明口調が多くなるんです。でも僕は説明口調嫌いなんですよ。その瞬間だけ作品の時間の流れが止まる気がして。ただそれを講談調に、流れるように言ってもらえたら何とかなると思った」と、神田伯山起用について振り返っていた。さらに壮太朗のキャラクターについては「実は構想初期はいなかった。タンネ(黒がねの装甲列車の指揮官)の方が、長編を作ろうと思った時からいた。壮太朗のキャラが出てきてからも、当初はあくまで視点役でだいぶキャラが薄かったですね。だけど製作の過程でもう少し主人公を強くしていこうとなった」と語った。

本作の製作過程について聞かれると「まずは中心となるプロットを先に完成させて、そのあとはいきなりコンテ作りだった。その段階で、ここは尺があった方がいいという部分は、積極的に掛け合いとかを入れていくという作り方をしました。普通のアニメってコンテを最後まで完成させてから作り始めるんですけど、今回はコンテを作りながら、作品を仕上げていった。だから製作チームの作業がコンテに追いついてくると、コンテ最後まで終わってないからどうしよう・・・って作り方でした。よくない作り方なので皆さんマネしないでください(笑)ただ、この作品ではその作り方で良かったと思います」と振り返っていた。

さらに、本作では操画監督という珍しいクレジットが出てくるが、それについては「これは僕の造語なんです。簡単に言うとフラッシュアニメーションで、自動中割ではないけど、自動中割的なことをやって、なるべく少人数で作り上げるための役割。アニメ業界は人手不足なんで・・・集まってくれたスタッフだけでなんとか作り終えきれる手法って、これしかないと思った」と語った。

本作が初の長編アニメーション映画となった塚原監督。本作はミステリー的な要素も含まれているが、それについて「本来は幻想文学的な作品にしようと思ってたけど、商業的にも成功させるにはミステリー仕立てにした方が良いということで、ミステリー要素を足したんです」と振り返った。

最後に次回作について聞かれると「今回初めて長編映画を作ってみて、観客に伝わることと、伝わらないことが分かってきたので、それを踏まえて、また映画を作りたいです。異界巡りはまたやりたいんですけど、よりエンタメに振り切った作品を作りたいですね」と、次回作への意欲を語りイベントは締めくくられた。

 

【キャスト】
神田伯山、黒沢ともよ、芹澤優、坂本頼光、佐藤せつじ、狩野翔、西山野園美

【スタッフ】
原作・脚本・監督:塚原重義
キャラクターデザイン:皆川一徳
特技監督:maxcaffy
操画監督:アカツキチョータ
美術設定:ぽち
美術監督:大貫賢太郎
音響監督:木村絵里子
音響効果:中野勝博
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
主題歌:チャラン・ポ・ランタン「内緒の唄」
アニメーション制作:チームOneOne
配給:東京テアトル ツインエンジン
製作:クラガリ映畫協會
アニメ公式HP:https://www.kurayukaba.jp/

 

<第37回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net

<TIFFCOM2024 開催概要>
■開催期間:2024年 10 月30日(水)~11月1日(金)
■公式サイト:www.tiffcom.jp