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【TBSドキュメンタリー映画祭2024】坂本龍一、土井善晴、MR.BIG、 注目アイドル・カラフルダイヤモンド… 遂に開幕の映画祭舞台挨拶に豪華ゲスト続々登場!

TBSテレビやTBS系列の各局の記者やディレクターたちが、歴史的事件や今起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、記録し続け、熱い思いと共にドキュメンタリー映画として世の中に発信し続けるブランド「TBS DOCS」。テレビやSNSでは伝えきれない事実や声なき心の声を発信し続けるこれらの本気のドキュメンタリー作品に出会える場として、2021年より開催されてきた「TBSドキュメンタリー映画祭」が、東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌と、全国6都市で3月15日(金)より開催。第4回の開催となる本年は、人種や戦争、社会問題など現代を取り巻く重要なテーマに迫る「ソーシャル・セレクション」、家族の形や身体的な障害など多様な生き方や新たな価値観を描く「ライフ・セレクション」、五感を司る表現者たちやテーマを通し新たな感性に出会う「カルチャー・セレクション」と、3つのテーマに沿って選ばれた15作品を一挙上映する。

さらに今年は初の試みとして、実際の外科手術を医師の視点で撮影し、人間の体の神秘に迫るショッキングかつ感動的な異色のドキュメンタリーで、カンヌ国際映画祭で上映され話題となった衝撃作「人体の構造について(原題)」、そして唯一無二の世界観で衝撃を与え続けるA24製作で、のアカデミー賞受賞監督、スティーヴ・マックイーンが贈る4時間を超える圧巻のドキュメンタリー「オキュパイド・シティ(原題)」といった世界が注目する2作品を<海外招待作品>として上映する!観た人の価値観を変えてしまうエネルギーに溢れた、“誰かの人生”に触れることができる作品をラインナップした本映画祭は注目必至だ。

ついに迎えた本映画祭は、3月15日(金)、16日(土)、17日(日)に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で各作品の舞台挨拶を実施。さまざまな作品の監督や出演者が登壇し、満席続出の大盛況となった舞台挨拶のレポートをお届けする。


<3月15日(金)実施 舞台挨拶>

『坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち』
監督:金富隆
ゲスト:大友良英(音楽家)

故・坂本龍一氏が遺した言葉を軸に平和への想いに迫る本作。金富監督は、本作で使用された坂本氏の貴重な映像の数々について「テレビの放送で流れるのは撮影したほんの一部。素材の90%は放送されることなく眠っています。坂本さんの言葉は今でも聞かれるべきものがあると思ったので、膨大に眠る素材を自分なりに必死に見ながら紡いでいきました」と、完成までの道のりを述懐。一方、坂本さんと親交の深かった大友氏は、「坂本さんの言葉がこのような形で残ることをテレビ局がやるというのが凄い。未来に伝えようという意思が伝わって来て感銘を受けました。坂本さんが亡くなりお葬式も出来ないまま1年が経ったので、動いている坂本さんを見てウルッとしました」と感動していた。

また金富監督は、坂本氏の人柄について「坂本さんは裏方の人間にもフラットに接してくれる。今回の作品を通して改めてそんな方だと思った」と述べると、大友も「坂本さんは誰に対しても対等であろうとする人。坂本さんはキャリアもポジションも含めて周囲が自分と気軽に接しにくいのを承知で、色々な人たちと対等であろうとする努力をしているように見えた」と優しい人柄を偲んでいた。

 

『私の家族』
監督:久保田智子
ゲスト:杉山文野(東京レインボープライド代表)

2019年に特別養子縁組で新生児を家族に迎えた、元TBSアナウンサー・久保田智子監督自身の家族に迫る『私の家族』。久保田監督は、「作り手としては取材対象に近づいて生の映像を撮りたいと思うけれど、一方で自分は取材される側でもあって…。そこには自分を守りたいという気持ちもありました。曝け出して大丈夫なのか?私の家族はどう思うのか?そんな葛藤がありました」と心境を吐露。不安な背中を押してくれたのは「せっかく作品として発表するのならば、社会に影響を与えられる方が良いのではないか?」という夫からの一言だったという。久保田監督は「この作品は家族が賛成してくれたからこそ出来た映画」と家族のサポートに感謝していた。

また久保田監督は、「特別養子縁組を選択する前は、家族とは子供を産んで育てることだと思っていました。それが自分に出来ないと思った時に、急にマイノリティーになる瞬間があると感じました。当たり前が出来ないと知った時に、どう生きたらいいのかわからない葛藤もありました。その意味でも選択肢があることは大切。一般的な当たり前から外れても選択肢さえあれば別の選択をすればいいと前向きに思えるから」と、特別養子縁組を経ての想いを口にしていた。

舞台挨拶ゲストとして登場したのは、東京レインボープライド代表で、自身もトランスジェンダーの杉山文野。友人からの精子提供により、パートナーと二人の子供を育てている杉山氏。本作を観て、「自分には子育ては出来ないと思っていたので、ゼロだと思っていた分、実際に子育てが出来るとそのふり幅分楽しんでいるところがあります。血の繋がりさえ気にしなければ、子育ては出来る」と実感したという。LGBTQ+当事者で実際に子育てをしている人もいるそうだが、「日本では法的なハードルがあり過ぎてその数は限られている。選択肢が増えることによって子育てへの様々な関わり方が生まれたら嬉しい」と時代の変化に期待していた。

舞台挨拶の最後には、久保田監督は「自分のありのままを受け入れるのは難しかったけれど、ありのままの自分を受け入れて生きるしかないと思うことが出来て、それを発信するところまで来たわけですから、作品が完成して上映に立ち会っていることが感慨深いです」と噛み締めるようにコメントした。

 

『映画 情熱大陸 土井善晴』
監督:沖倫太朗
ゲスト:土井善晴(料理研究家) LiLiCo(TBSドキュメンタリー映画祭2024アンバサダー)

「一汁一菜」というシンプルな暮らしを提唱し、その気さくな人柄も相まって幅広い層から支持されている土井善晴。テレビ版をベースに映画化した本作について、沖監督は「土井先生の喋りは、どこを切ってもうっとりと聞いていられるので、番組の25分の尺に収めるための編集が大変でした。しかも土井さんは突然大事なことを言ったりするので(笑)、そこも難しかった」とその苦労を語った。土井氏とバラエティ番組で間接的に関わったことがあるというLiLiCoは、「土井さんには2回救われました。1回目が、その番組の企画で土井さんが私の料理の盛り付けを凄く褒めてくれたこと。そこから料理にハマりました。そして2回目が、今回のドキュメンタリー映画。料理ってこれで良いんだと、心の中が曇りから晴れになりました!」と笑顔で告白。

そんな土井は、多忙から解放されたことで、料理に対して自由な発想を得ることが出来たという。「長らく『おかずのクッキング』をやっていて忙しかったのですが、それが終わったら自由になれた。心が自由になるのは幸せなこと。プレッシャーを感じていたんでしょう。あれは私の料理ではなく、みんなのための料理を作っていたんです。それが終わった途端、自由になったら毎回新しい料理が出来た」と、心境の変化を実感。そして「日常の料理にレシピなどいりません。料理なんて習わなくていい、ホンマにそう!」と名言を放っていた。

 

『ダメな奴 ~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~』
監督:嵯峨翔平
ゲスト:紅桜(ラッパー)

伝説のラッパー・紅桜の再起を追った本作の舞台挨拶には、嵯峨翔平監督と紅桜が登壇した。この日初めて本作を鑑賞したという紅桜は、「自分の顔が出ていて照れ恥ずかしい。自分の事よりも、仲間たちの表情が見られて嬉しい」と照れつつも公開を喜んでいた。思春期からラップ好きだったという嵯峨監督は、紅桜のことはYouTubeで見て初めて知ったそうで、「色々なラッパーがいる中で、紅桜だけが自分にガーンと来た。この人を追いたいと思って会社に企画書を出したら、『コンプラ的に大丈夫か?』と言われたので調べたら、なんと獄中にいた」とまさかの出会いを振り返った。

嵯峨監督からオファーの手紙を受け取った際、紅桜は「何を考えてるんだ!?」と思ったそうだが、「誠心誠意、自分の姿を見てもらおうと思った」と出演を快諾。一方、嵯峨監督は紅桜からの返信の手紙について「とても綺麗な字で、男性とは思えぬ文字と間隔だった。紅桜はちゃんとした凄い奴だと字から読み取った」と意外な一面を紹介した。

『ダメな奴』というインパクト大のタイトルについて、嵯峨監督は「紅桜といるとダメな奴だなと思うこともあるけれど、そういうヤツこそ愛すべき存在だと僕は思う。優等生、コンプラ、正論が幅を利かせている中で、人間は多面的だぞと。そんな思いを込めています」と説明。これに対し紅桜は「面白いからいいかなと。自分もダメな奴だけど、頑張る。そんな事を感じてもらえたらいいのかなと思います」と理解とコメントした。

イベントの最後には、そんなダメな奴、紅桜を支える妻が大きな花束を持ってサプライズ登場。そんな妻の姿に紅桜は、「俺は大好きとしか言えない。大好きすぎてたまらない」と愛情を溢れさせ、会場が大きな拍手に包まれていた。


<3月16日(土)実施 舞台挨拶>

『サステナ・フォレスト ~森の国の守り人(もりびと)たち~』
監督:川上敬二郎
ゲスト:蔵治光一郎(東京大学大学院教授)

かつて“森の国”と呼ばれた日本の現在を、森の守り人達が語る『サステナ・フォレスト~森の国の守り人(もりびと)たち~』の舞台挨拶には、川上敬二郎監督と、作品にも出演している蔵治教授が登壇。蔵治教授は「林業が抱える複雑な問題をわかりやすくシンプルなストーリーにして伝えている。まさに監督の才能のたまもの」と完成作を絶賛し、「都会に住む私たちの生活から遠ざかっている問題を、自分事として受け取って観てほしい」と呼び掛けた。

一方川上監督は、日本が抱える問題点について「日本の国土の約7割は森林で、先進国の中ではフィンランド、スウェーデンに次ぐ第3位。日本はサンタクロースやIKEAを生んだ国レベルの森の国にも関わらず、6割くらいは輸入に頼っており、豊かな森が活かされてない」と指摘。これに蔵治教授も、「日本の木材生産量は非常に少ない。森林面積で考えたら今の5倍くらい増やしても大丈夫なはず」と解説を加えた。

ネックになっているのは“森の国の守り人”=林業従事者の減少だという。蔵治教授は「現場で働く担い手が少ない。本来は10万人くらいの人間が必要だけれど、現在はそのほぼ半分。さらに減少傾向にある。待遇面もそうだが、林業が魅力的かつ安全な仕事だと知ってもらうことが大切」と訴え、川上監督も「メディアの力不足によって林業や森林の魅力が伝わっていない。その思いがこの映画を作りたいと思ったきっかけ」と話した。

日本の大切な自然を守り、育むためには「教育の中で持続可能な森林作りを教えるのもありだと思う。スマホもいいけれど、自然の中に入ろうよと気にかければ若い人たちにも森の魅力や課題、偉大さを感じてもらえるはず」と川上監督。蔵治教授も「利便性と経済性を大切にした結果、都会暮らしが増えた。そんな時代において、森に入ることは贅沢なことだとされているけれど、その贅沢をエンジョイする世の中になってもいい。ヨーロッパでは入林権が国民に認められており、散歩する程度ならば所有者の許可がなくても自由というルールがある。日本にはそのルールがないので、そこの変化にも期待したい」と提言していた。

 

『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム~』
監督:津村有紀
ゲスト:古川流唯・内海太一・設楽賢・高垣博之・國村諒河・岡大和・小辻庵・関優樹・永遠・加藤青空

名古屋を拠点に活動するBOYS AND MENの弟分・カラフルダイヤモンドの奮闘を追った『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム~』。舞台挨拶には、津村有紀監督とカラフルダイヤモンドのメンバーから古川流唯、内海太一、設楽賢、高垣博之、國村諒河、岡大和、小辻庵、関優樹、永遠、加藤青空が登壇した。

チケット即完で迎えたこの日の舞台挨拶。古川は「凄く緊張していたけど、皆さんに笑顔で待っていただけて…。そして僕らカラフルダイヤモンドの歴史を見てもらえて嬉しいです!」と喜色満面。設楽も「場内に入った瞬間、皆さんの顔がいっぱいあって良かった。ドキュメンタリーということで堅苦しいイメージもあったかもしれないけれど、皆さんが笑顔で観てくれたのが嬉しいです。この作品を通して僕らの魅力が伝わったら!」と期待を寄せた。高垣は、「感動的なシーンもあったので、皆さんのお顔に涙の跡の線2本があったら嬉しい。ポップコーンを食べながらカラフルダイヤモンドを見ることはレア体験。2回目を見る人は、ポップコーンをマストで作品を見てほしいです!」とお勧め。岡は「上映初日という特別空間を皆さんと一緒にいられるのが幸せです。ステージに立って良かった、ドキュメンタリー作品になって良かったと思えました!」と感激していた。

グループにとって初の密着取材となった本作。これに小辻は「初の密着ということで緊張したけれど、メンバーそれぞれの顔がしっかりと映っていて、しかもメンバーの知らないところも知れたりして嬉しかった」と達成感を覚えたことを明かす。関は「真面目に語っているシーンは正直ド緊張しました。でも監督とどんどん打ち解けて、素の表情になっていきました。インドカレー屋さんのシーンでは、思わず素の姿になっています!」と見どころポイントも挙げていた。永遠は、「映画の経験もドキュメンタリーの撮影も初めてだったのでド緊張。それもあってか僕は素が出る前に撮影が終わりました。…この作品に映っている永遠は、永遠の中の永遠じゃないところが出ています。まさに永遠役の永遠でした」といまだ緊張しきり。加藤も「カメラや照明、そして何人もの大人に囲まれて、そんな中で椅子に座らされて質問されて…。緊張しないわけがない!カメラには映っていないけれど手はブルブルでした。ヤバかったです!」と大いに緊張していたことを明かしていた。

劇中には、國村と内海が神妙な面持ちで本音を吐露するシーンも。内海は「お好み焼き屋さんで1時間語る予定が、大いに盛り上がって3時間くらいになった。お店の席に座った時は緊張していたけれど、本音をぶつけ合うことが出来ました」と回想。國村も「毎日会っているのに、最初は元彼に会ったみたいな気まずい雰囲気に(笑)。一緒に暮らしているのに、『最近元気?』とか聞いたりして。でも自分の中で思うところもあったので、今日はその話をするぞと挑んだ。あの瞬間に思いをぶつけることが出来て、本音トークが出来ました」と手応え。内海は「あの本音のぶつけ合いをきっかけに前に進めた気がする」と本作の撮影がグループとしてのターニングポイントだと実感していた。

そんなメンバーたちの姿に、津村監督は「彼らはこちらが質問を投げかけなくても色々な話をしてくれて、それが自然とドキュメンタリーになった。グループとしてはもちろんの事、それぞれ個人としても考えが深くて、ご本人たちの哲学も滲み出しています。私は彼らよりも倍以上の年齢だけれど、彼らの考えや悩みが重なるところもあって勉強になりました」と影響を受けていた。舞台挨拶の後には、カラフルダイヤモンドのメンバーたちが観客を見送る「ハイタッチ会」も実施。映画の感想や応援メッセージを伝えられたメンバーたちは、ますますまぶしい笑顔を見せていた。


<3月17日(日)実施 舞台挨拶>

『旅する身体~ダンスカンパニー Mi-Mi-Bi~』
監督:渡辺匠、志子田勇
ゲスト:KAZUKI(サインパフォーマー) 東ちづる(俳優・一般社団法人Get in touch 代表)

「未だ見たことのない美しさ」を観客に届けるダンスカンパニー「Mi-Mi-Bi」に密着した本作。志子田監督は、作品が完成した際のMi-Mi-Biメンバーの反応について「僕の目という客観性を通して、自分たちの活動がこういう風に他者から見られるのかということを知っていくという反応がありました」と報告。制作する上では「ナレーションやテロップを排したのは、彼らが本番で見せるダンスをそのまま映像として残したかったから」と臨場感にこだわったことを明かした。一方、渡辺監督はバリアフリー上映に触れ、「バリアフリー上映製作のプロの方にも協力していただき、通常ではない形で上映をしています。より多くの方々に観ていただきたい」と呼び掛けていた。

本作にも出演しているKAZUKIは、「ドキュメンタリー映画を観る機会がないので、撮影中はどのように自分が映るのかイメージが出来なかった。でも完成作を観て、自分は人の目にこう映っているのかという発見があった。特性を持った人たちとの間には見えない壁があるはずなのに、グラデーションが溶けるような心の繋がりが一つになって作品としてまとめられていて感動しました」と絶賛していた。

当日も含め既に2回本作を観たという東は、「本番までのプロセスを見ることが出来て驚いたし、表現することは生きることだと実感した。前のめりになって観ました」と感動。バリアフリー上映にも触れ、「見えない人にも聞こえない人にも楽しめる作品であることを広く伝えたい」と意気込み「私たちは特性を持つ沢山の方々と生きている。その事実を映画で伝えることは大きな力になる。様々な特性を持つ人たちがエンターテインメントの世界でもっと活躍してほしい。そのチャンスを作る一助にこの映画はなると思います。施しではなく、誰にとってもチャンスのある世界になればいい」と期待を込めていた。

 

『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』
監督:佐井大紀
ゲスト:小川哲(小説家)

1980年代当時、ハーレム教団と称され注目を集めた謎の集団「イエスの方舟」の現在に迫る『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』。佐井監督は「イエスの方舟」を題材にした理由について、「当時からハーレムやセックスカルトという言葉が当てはまる集団という報道のされ方をしてきたが、彼女たちの生活を見ることでその存在をどう受け取るのか考えてもらいたかった」と明かし「自分自身、今回の取材を通してわからなくなったりもしました。彼女たちからは強い思いで自分たちの人生を突き進むたくましさを受けましたが、距離を詰めるたびに“イエスの方舟”という実態がわからなくなる不思議な感覚がありました」と振り返った。

ゲストとして登壇したのは、数々の賞を受賞する小説家・小川哲。小川は本作を見て、「佐井監督の作品は伝えたいことではなく、問いたいこと考えたいことが先にあり、問いかけが原動力となり、それにドリブンされる形で映像が進んでいく。問いが先にあると全体の構成がアンバランスになるが、カメラを持っている当事者の疑問がダイレクトに伝わってくる。今回はその問いすらも彼女たちの生活に触れることで変容し、監督自身も全く想像しない地点に辿り着いている」と分析。「その姿勢がモノ作りをする上で誠実だと思った。全体の構成を考えて作るのも重要だが、僕はそこに共感する」と激賞した。

現在放送中のTBSドラマ『Eye Love You』を手掛けるなど、普段はドラマのプロデューサーである佐井監督は、「普段の仕事では構成を先に決めて、どのような目線で視聴者に見てもらうかを考えているけれど、ドキュメンタリーはそのテレビドラマ的な作り方でやるとウソっぽくなる。最初に方向性を決めることも大切だけれど、ドキュメンタリーではそこをあえて外したらどうかと意識して取り組んでいる」と打ち明けた。映画では、イエスの方舟として共同生活を送る女性たちに直接マイクを向けているが、佐井監督は女性たちの共通点について、「知的で気の強い女性たちで、それぞれが明確な意思を持っている。洗脳されているからそうなのか、それとも彼女たちが元々持っているものなのかはわからないけれど、全員の女性からは強い意志と知性を感じました」と解説していた。また小川は、20代にしてセンセーショナルな題材に挑む佐井監督の姿勢を賞嘆し、「次の作品も含めて、佐井監督が50歳、60歳になった時にどんな大人になっているのかも気になるところ。これからも長い目で見守っていきたいです」と才能に惚れこんでいた。

 

『最後のMR.BIG~日本への愛と伝承~』
監督:川西全
ゲスト:伊藤政則(音楽評論家)

“さよならツアー”のために来日したアメリカの人気ロックバンドMR.BIGに密着した本作。音楽評論家の伊藤は、「熱量がないとここまで作れない。個人ではなく会社としてここまでやったという功績は大きい。(亡くなったMR.BIGのメンバー)パット・トービーの視点もあり、MR.BIGに対して日本のファンがどう向き合ってきたのかの視点もある。これまでにない視点で描かれるMR.BIGのドキュメンタリーだ」と絶賛した。さらに伊藤はMR.BIGの魅力について、「音楽は当然ながら、彼らには庶民レベルでの人としての良さがある。人間力が高い」と分析。

川西監督も「インタビューでは4人のバランスの良いケミストリーを感じた。前に出てくるビリー・シーンさんとエリック・マーティンさん、黙ってしまうポール・ギルバートさん、そこを上手くコントロールするパット・トービーさん。そのバランスが美しい」と素顔を紹介した。また、MR.BIGの日本愛をヒシヒシと感じたという川西監督は、「震災など日本が苦しんでいる時期に来日してライブをやるという行為は、まさに無償の愛に近い。そこに打算はない。それがMR.BIGと日本のファンのお互いが惹きつけられる要素。アメリカでのインタビューの際も、日本の事をいつも気にかけてくれていました」と、バンドの親日家ぶりを回想した。

今回の作品ではMR.BIGの“さよならツアー”の様子が収められているが、伊藤は「実は今年の夏あたりにニューアルバムを出すらしい」とまさかの事実を明かし「もしそれが300万枚くらい売れたらどうするの?バンドは終われるの?それだけ好評ならばツアーだってやるだろう」と今後の展開に期待。“引き際”問題もあるが、伊藤は「彼らが出来ると思うならばやればいい。年齢を重ねた衰えなんて、それはリスナー側の問題。ファンが許せばそれでいい」と、MR.BIGの活動の継続を願っていた。

 

『オキュパイド・シティ(原題)』(海外招待作品)
監督:スティーヴ・マックイーン監督
ゲスト:ビアンカ・スティグター(原作者)
※オンラインでの舞台挨拶

海外招待作品からは、A24が製作した上映時間4時間超の大作『オキュパイド・シティ』が登場。『それでも夜は明ける』『SHAME -シェイム-』で知られる、アカデミー賞受賞監督スティーブ・マックイーンと、監督の妻であり原作者のビアンカ・スティグターが、オンラインで舞台挨拶を実施。夜遅い時間帯にも関わらず訪れた多くの日本の観客に向けて、「この長い映画のために時間を割いてくれてありがとう」と感激の面持ちで挨拶した。

スティグターによる書籍「Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945)」をベースにした本作について、マックイーン監督は、「妻の出身地アムステルダムを知っていく中で、アムステルダムとは過去が現在にそのまま生きている都市だと思いました。なぜならばアムステルダムには、日々の生活の中にナチスに占領された証拠が残っているから。そこで映画監督として、過去と現在の二つの時間を、“場所”という一つのフレームに捉えることで、生と死を一度に捉えることが出来るのではないかというアイデアが思い浮かびました。現在に過去を投影する、しかも過去の映像を使うのではなく、妻が書いた文字を使いながら過去と現在をオーバーラップさせようと思った」と解説した。

一方、妻スティグターは「アムステルダムの過去の映像を使用しないことによって、この映画は記憶に対する瞑想のような作品になりました。現在と過去がボイスオーバーや映像で交わることで混乱を呼び起こすと同時に、過去と現在が繋がっているのだという効果が生まれたはずです」と確信。これにはマックイーン監督も、「人生には混乱がつきものだから、この映画を観て受け取った混乱は間違いではない」と狙い通りだと話した。

またスティグターは、本作を4時間超えの大作にした理由を問われると「題材がその時間を求めたからです。単に物事を知ることと全身全霊で感じることは違います。この作品は歴史の“授業”ではなく“瞑想”ですから。その瞑想に対して観客が身をゆだねて心を開いてくれれば、本作の意図はおのずと感じることが出来ます。皆さんをそのような状況にするための必要な4時間なのです」と必然的上映時間だと答えた。

最後にマックイーン監督は、「本作はアムステルダムという具体的な都市の物語であると同時に、どこにでも当てはまる普遍的な物語でもある」とアピールして「改めて日曜日の遅い時間にも関わらず、この作品のために多くの時間を当ててくれて感謝します。次は日本で直接皆さんとお会いしたいものです」と来日を約束していた。

 

<開催概要>
★東京= 会場:ヒューマントラストシネマ渋谷|日程:2024年3月15日(金)〜3月28日(木)
★大阪= 会場:シネ・リーブル梅田|日程:2024年3月22日(金)〜4月4日(木)
★名古屋= 会場:センチュリーシネマ|日程:2024年3月22日(金)〜4月4日(木)
★京都= 会場:アップリンク京都|日程:2024年3月22日(金)〜4月4日(木)
★福岡= 会場:キノシネマ天神|日程:2024年3月29日(金)〜4月11日(木)
★札幌= 会場:シアターキノ|日程: 3月30日(土)~4月11日(木)

■公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/
■公式X:@TBSDOCS_eigasai
■コピーライト表記:@TBS