TBSテレビやTBS系列の各局の記者やディレクターたちが、歴史的事件や今起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、記録し続け、熱い思いと共にドキュメンタリー映画として世の中に発信し続けるブランド「TBS DOCS」。テレビやSNSでは伝えきれない事実や声なき心の声を発信し続けるこれらの本気のドキュメンタリー作品に出会える場として、2021年より開催されてきた「TBSドキュメンタリー映画祭」が、東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌と、全国6都市で3月15日(金)より順次開催となる。
第4回の開催となる映画祭では、人種や戦争、社会問題など現代を取り巻く重要なテーマを考える今だから見るべき作品を選んだ「ソーシャル・セレクション」、家族の形や身体的な障害など、多様な生き方や新たな価値観を見出せる作品を選んだ「ライフ・セレクション」、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など、感覚を司る表現者たちやテーマを通して新たな感性に出会える作品を選んだ「カルチャー・セレクション」と、3つのテーマに沿って選出された15作品を一挙上映する。
この度、本映画祭の開催を記念して、映像業界を目指す学生限定の特別ワークショップを開催!ドキュメンタリー映画コミュニティ「D会議室」主催の本ワークショップでは、東京・大阪・名古屋・福岡の4都市から集まった学生たちを前に、本映画祭にゆかりの深い注目のドキュメンタリー監督3名が集結し、自身の作品を通してドキュメンタリーの持つ魅力や影響力について熱弁を振るった。登壇したのは、TBSドキュメンタリー映画祭2024で『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』の上映が控える、佐井大紀監督。同じく本映画祭で『劇場版 僕と時々もう1人の僕~トゥレット症と生きる~』が上映される、柳瀬晴貴監督。そして、前回のTBSドキュメンタリー映画祭2023で上映された『93歳のゲイ』の、吉川元基だ。佐井監督は東京、柳瀬監督は名古屋、吉川監督は大阪からそれぞれリモートでつないでの登壇となった。
それぞれ入念な取材のもと完成した作品だが、監督陣が何よりも大切にしたのは、取材対象との向き合い方だったという。
80年代に謎のハーレム教団として世間を騒がせ、主催者亡き後も今なお女性たちが共同生活を送る「イエスの方舟」の実態に迫った『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』の佐井監督は、「カメラを向けるというのは、暴力的なことでもあると思います。イエスの方舟という一つのコミュニティを描いたので、取材対象となる女性たちとの信頼関係がとにかく大切で、どう距離を取っていくか重視しました」と、自身の作品を振り返る。
自分の意思に反して体が動いたり声が出たりするトゥレット症候群の人々の、さまざまな日常を映し出した『劇場版 僕と時々もう1人の僕~トゥレット症と生きる~』の柳瀬監督は、「たまたまウーバーイーツを頼んだら配達員の方がトゥレット症で、彼を取材するために半年ほど家に通って信頼関係を築いていきました。カメラを回さず話すことを続け、取材させてもらうことが多くの患者さんのためになるかもしれないことに共感してもらい、最終的に承諾してもらいました。」と、運命的な出会いから時間をかけ信頼を獲得していったのだという。
孤独に生きてきた93歳の長谷さんの姿を通し、この国の同性愛の歴史を紐解きながら、本当の自分を隠し続けた彼の日々を見つめるドキュメンタリー『93歳のゲイ』の吉川監督は、「高齢者のLGBTQの存在を想像できない人が多い中で、日本の同性愛の歴史を掘り下げれば伝えられることがあると思い、長谷さんにアプローチしていきました。取材希望を伝えると、長谷さんは『僕には家族も身寄りもいないから、どう描いても大丈夫なので取材してほしい』と言ってくれたんです。」と、作品にかける熱い思いが伝わったことで取材が実現したことを明かした。
参加した学生からは、「この作品が公開されることで、社会にどんな影響が生まれたらいいと思いますか?」という質問も。
佐井監督は、「信じることとは何か、宗教はどんな影響をおよぼすのかということについて、この映画を観たらもう少しフラットに感じられるはず。ただ対象を追いかけるだけでは、きっと本質的な部分にはたどり着けないと思う。僕は記者ではないので、違う角度で、個人の宗教を切り取って世の中の人に受け取ってほしいと思っています。」とコメント。柳瀬監督は、「この映画を通して、トゥレット症を広くみなさんに知ってほしい。病気について詳しく知ってもらった上で、しゃっくりやくしゃみのような生理現象と同じだよね、という扱いになればいいなと思います。」と作品に込めた願いを明かした。前回の映画祭で作品が上映された吉川監督は、「今ではLGBTQというワードも広まり、同性婚を求める声が国会で取り上げられたりとしていますが、いきなり変わったのではなくて、ずっと戦ってきたり差別や偏見に晒されて来た人たちがいます。本作で長谷さんを通して、すぐ隣にそういう人たちがいることを知ってもらいたいという思いで作りました。」と、あらためて作品にかけた思いについてコメントした。
学生が宗教を語る、若者がカルトを討論!あの昭和の騒動を今の若者たちが観て何を思うのか!?宗教とマスコミ報道に一石を投じる「方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~」が令和の世に映し出すものとは?
さらに本ワークショップでは、3月15日(金)よりTBSドキュメンタリー映画祭2024での上映がスタートする佐井監督の『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』の特別上映を実施。いち早く鑑賞した学生と佐井監督の質疑応答や、「イエスの方舟はカルトなのか?」「異常なのは報じたメディアの方ではないか?」などの議題をもとに学生たちとの討論会も行われた。
最後には、学生たちが『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』のキャッチコピーを考えるグループワークを実施。事件のリアルタイム世代を狙う意図も込めた現在のキャッチコピー「鑑賞後もあなたは、ハーレム教団と呼びますか?」に対し、学生たちからは「罪とされた私の信条」「完璧で究極のアイドル・おっちゃん」などさまざまな角度のコピーが飛び出し、佐井監督が「自分でも気づかなかったアイデアに驚きました」「今から差し替えたいぐらい!」と絶賛する一幕も。ドキュメンタリーの持つ強さや面白さ、影響力について、そこに込めた思いはもちろん、映像効果や演出などテクニカルな話題にもおよぶなど、映像業界を志す学生たちにとって有益な話が多数飛びだす、大盛況のワークショップとなった。
同作をはじめ、ここでしか観られない良作ドキュメンタリー勢揃いの「TBSドキュメンタリー映画祭2024」は、3月15日(金)より全国6都市[東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌]にて順次開催となる。