【東京ドキュメンタリー映画祭2023】『香港時代革命』舞台挨拶レポート&監督へインタビュー!「憧れの香港がこんなふうになっているのかっていう悲しさと、すごく複雑な気持ち…」
【東京ドキュメンタリー映画祭2023】
『香港時代革命』
舞台挨拶レポート&平野愛監督インタビュー!
6回目となる「東京ドキュメンタリー映画祭」が本日12月9日(土)より開幕した。トップバッターを飾ったのは『香港時代革命』。本作は、2019年に香港で勃発した自由と民主化を求める大規模な抗議デモを記録を続けるトラック運転手や学生記者に密着し、激動の香港に生きる人々の姿を見つめたドキュメンタリー作品。上映後には、平野愛監督が登壇し、舞台挨拶が行われた。
はじめに、平野監督は「皆さんの感想はいかがでしょうか。今こうして見ると、もう隔世の感がある感じがしますけれども、本来ならば佐藤(充則監督)もここに来て、皆さんにご挨拶させていただければと思っていたのですが、香港で明後日に香港区議会議員選挙があるということで、ちょうど今撮影に入っています。この映画は、2019、2020年の頭に撮っていましたが完成させたのは2021年で、私達は今も撮影を続けています。香港は本当に変わってしまいましたし、でも皆さんが見てくださったみたいにどこかで忘れないでいることっていうのが大事なのかなと、私自身も今日改めて映画を見て思いを新たにしたところです。本当にありがとうございました」と挨拶。また、「私は93〜97年まで上海に留学していた間、香港への憧れをものすごく強く持っていました。だから、実際デモの現場に立ったときに、もう何というか世界が変わったような気持ちでした。憧れの香港がこんなふうになっているのか…っていう悲しさと、すごく複雑な気持ちでしたね。ああ足が震えるってこういうことなんだなとか、催涙弾がヒリヒリするってこういう感じなんだとか、それで目をこすると本当に目が開けられないんだとかっていう、人生でこんなことがあるのかなっていうことをいっぱい感じました」と取材時の体験と思いについて語った。
司会者から「香港のデモや運動の記録というのは香港のドキュメンタリー映画としてありますが、この記録のすごく意味があるなと感じたところは、日本人が見た香港の記録となっているというところにあると思います。その距離感の近さなども感じたのですが、どういうふうな形で取材に行かれたのでしょうか」と聞かれると、平野監督は「現場にはいるんですけど、やっぱり日本人の距離感でしか撮れなかったですし、それでよかったというか、仕方がなかったというか、ただ私達は(主人公の一人の運転手)ポールの後にとにかく着いて行くってことしかできなかったので、ポールの目線で日本人なりの、皆さんと感覚的に変わらない香港への距離感で撮れたんじゃないかなと思っています」と話した。
「中国を応援する人たちといる場面もありましたが、そのあたりはどういう経緯で?」という質問には、平野監督は「これがいいのか悪いのか、私達はやっぱ上海にいたので、中国にも大変な愛情がありますし、私達が上海にいたっていうだけですごい親しみを感じてくれて、いろんなところに連れて行ってくれました。そのことを利用するわけではなかったんですけれども、あのおじちゃん、おばちゃんたちは本当に良い人なんですよ。ご飯をたくさんおごってくれたりとか、本当に優しい人たちで、彼らの気持ちも聞いてみたいし、彼らも私たちに言いたいっていう気持ちがあったと思うんですね。というのも当時はやっぱり民主派の皆さんの意見っていうのが全面的に出ていましたし、そういう打ち出しもありましたから。中立を取らなきゃいけないということをそこまで意識していたわけではなかったですが、やっぱりどこかであっち側の意見も聞きたいなっていうのもあり、それで彼らに着いて行きました。それはもしかしたら日本人だから、香港人じゃなかったから撮れた部分でもあったのかなと思います」と回答した。
最後に、平野監督は「私自身が思うのは、中国=中共(中国共産党)。中共=中国ではない、その図式ではない形で理解できないかなというふうにずっと思っています。私は中国も好きですし、中国人のことも好きです。香港人も好きだし、香港も好きです。だから難しいんですけど、中立というような正しい言葉では言いたくないんですけど、自分が愛情を持っているところを全て“中共”でまとめられるのは、やっぱりある種共産党のやや卑怯なところかなとも思ったりします。自分の愛着とか、郷愁とかっていうものをすべて、=中国、=中共としてしまうのは共感できないところかなと思っています」と自身の思いを熱く語り、舞台挨拶は終了した。
平野愛監督インタビュー!
ムービーマービーでは、舞台挨拶後の平野監督にインタビューをすることができました!その模様をお届けします。
MM:上海の大学に通われていたということですが、そもそも上海に興味を持ったきっかけや留学の動機は?
平野監督:母方の祖父母が戦時中に満州に住んでいたんですが、日本へ引き上げをする時に祖母が私の母を妊娠していたんです。現地のお医者さんにはもうこの状態では赤ちゃんもお母さんも危険だから降ろしなさいって言われたらしいんですが、祖母は死んでも産むっ!て言って、死ぬ気で帰ってきたんだそうです(笑)それで母が生まれ、私がいるという話をよく小さい時に聞いていて。だから中国へのある種特別な思いっていうのは小さい時からずっと持ち続けていました。それで、たまたま上海で留学生を受け入れるっていうプロジェクトがあることを知って、興味本位で行っちゃったっていう感じです。
MM:そうだったんですね。香港のデモを取材しようと思われたきっかけは?
平野監督:上海の大学を卒業した後に、NHKのドキュメンタリー番組を中心に撮影・制作をしている制作会社に就職したのですが、そこで中国中のいろんなところに取材に行ったんです。それで香港の友達も含め、現地でたくさん友達ができたのですが、2019年の時にその友達から「今、香港が大変なことになっている」「警察の暴力によって市民が傷つけられている。それをどうにか日本でも情報を流してほしい!」っていう連絡がいろいろ来て。私自身、デモのことは知っていたのですが、実際にどうなっているかは知らなかったので、とにかく行って見てみないとわからない!ということで、もう番組とか関係なく、とにかく撮影しなくては!記録しなくては!というような気持ちでした。それで、一番親しい友達が運転手さんのポールだったので、ポールに頼んだら了承してもらえたの始まったという感じです。
MM:では、ご友人やお知り合いの方々の思いから取材が始まったんですね。
平野監督:そうですね。なので、はじめは国際情勢の中での香港の立ち位置…みたいなこととかはあんまり考えてなかったです。
MM:今作を編集するにあたり、泣く泣くカットした印象的なエピソードなどはありますか?
平野監督:今回の作品は、元々はNHKで2020年に49分間で放送されたものになります。だから、その時はカットせざるを得ないところが多くて、やっぱり行間とかが何となく自分たちとしてはやや思う部分もあったりして、正直そこにフラストレーションがありました。なので、この映画はもう入れたいものは入れよう!という思いで作ったので、基本的に私達の思いや入れたい部分は全部入っているのではないかなと思っています。
MM:最後に、今回の2019年の香港のデモに関して、日本人の関心は低いと思いますか?
平野監督:当時はそれなりに関心があったと思うんですよね。いろんなテレビ局が取材にいっていましたし。世界中からも来ていて、ホテルがみんな一緒だったので、みんなドロドロになって取材から帰ってくるみたいな面白いこともありました。でも、私達がこの夏、まだ裁判が続いているようなところに行った際には、やはり地元の小さいメディアの記者しかいませんでした。だからやっぱり伝わりづらくなっているだろうなと思いますし、日本人の関心も低くならざるを得ないのかなっていう、自分の力不足も含めてやや忸怩たる思いはあります。そういう意味でも、こういう映画を上映してくださって、関心を引き戻すというか、忘れないでいることが私達にできることなのかなと思います。
MM:ありがとうございました!
『香港時代革命』
監督=佐藤充則、平野愛/2022年/117分/日本
2019年、香港では自由と民主化を求める大規模な抗議デモが勃発。警察の暴力に抵抗するデモ隊を、市民や学生の立場で支持し、撮影する人々がいた。しかし破壊行為への反感から政府支持の市民も現れ、デモは行き詰まる。分断の進む中、もがきながら記録を続けるトラック運転手や学生記者に密着し、激動の香港に生きる人々の姿を見つめる。
【東京ドキュメンタリー映画祭2023】
日程: 2023年12月9日(土)~12月22日(金)
場所:新宿 K’s Cinema
公式サイト: https://tdff-neoneo.com/
twitter: @TDFF_neoneo
FACEBOOK:@TDFF.neoneo
Instagram:@TDFF.neoneo
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