【第36回東京国際映画祭】「トラン・アン・ユン マスタークラス」開催!最新作『ポトフ 美食家と料理人』は“食”と“夫婦の愛”の物語。「食べ物に関する映画をずっと撮りたいと思っていた。料理はとても具体的なアート」
10月23日より開催されている第36回東京国際映画祭。そのイベントとして、2日目の10月24日に「トラン・アン・ユン マスタークラス」が開催された。
トラン・アン・ユン監督は1993年『青いパパイヤの香り』でカンヌ国際映画祭カメラドールを受賞し、アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。その後、『シクロ』『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』、そして村上春樹原作の『ノルウェイの森』などを手掛けてきた。最新作、美食家と料理人の情熱と愛を描いた『ポトフ 美食家と料理人』は今年度のカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、東京国際映画祭でもガラ・セレクション部門に出品されている。今回のマスタークラスでは『ポトフ 美食家と料理人』の話を中心に、トラン・アン・ユンの今までの作品を振り返った。
最初に『ポトフ 美食家と料理人』は「食べ物に関する映画をずっと撮りたいと思っていました。料理はとても具体的なアートなんです」と答え、「そしてもう一つは、人生の秋、後半に差し掛かった夫婦の愛を描いてみたいと思いました」と“食”と“愛”2つのテーマを挙げた。また、中心人物となる俳優に、私生活でかつてパートナーだったジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルを選んだ理由について「今まで共演する機会を持たなかった間柄だったので、起用したいという時にジュリエットは不安に思っていたようですが、ブノワにオファーすると即快諾してくれました。撮影現場では良い雰囲気が2人の間に流れていました」と話した。さらに2人の撮影秘話として「あるシーンで2人がキスをするのですが、僕はシナリオにそんな事は書いていなかったんです。カットをかけた時、ブノワが必死に駆け寄ってきて『このキスは指示したのか?』と聞いてきました。僕は『していないよ。でもきっと役になりきった彼女がそうしたいと思ったんだ』と、僕のせいじゃないよと答えました(笑)」と素敵なエピソードも披露してくれた。
そして2人の俳優と共に、物語の中心となる“料理”は「今回は高級料理ですから、美しく撮るということもできたかもしれません。ただそれよりも、調理というアートに勤しんでいる彼らの手の動きや、食材が少しずつ姿を変えていく様子を僕自身はカメラに収めたいと思いました」と話した。料理と俳優たちの予測できない動きを捉えることが一番苦労したところだったようだ。本作だけでなく『青いパパイヤの香り』の時から“台所”を美しく捉えていたことには「台所が大好きなんです。母が料理をしていた記憶があるからだと思います。今考えると私の美的感覚はそのころに生まれて発展していったんじゃないかなと思っています」と料理についての特別な思いも語ってくれた。自身の妻であり、最新作でも制作側で参加しているトラン・ヌー・イエン・ケーとの関係について問われると「妻は信じられないような観察眼を持っています。しかもすぐにモニターで見ている時に察知をしてくれるのです。時間をかければ僕もわかるかもしれないけど、すぐに察知してくれる彼女の才能はとても重要なんです」と働きぶりを絶賛した。
また、『ノルウェイの森』など日本とのかかわりも深い監督は、今年生誕120周年を迎える小津安二郎監督作品の中でも『秋日和』が好きだとのこと。現代の監督の中では、同世代の橋口亮輔監督と是枝裕和監督の名を挙げた。最後にQAセッションを行いマスタークラスは終了。最新作『ポトフ 美食家と料理人』の2つのテーマを語ると共に、自身の作品への想いが溢れるトークとなった。
伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。
執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/
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【ストーリー】
〈食〉を追求し芸術にまで高めた美食家ドダンと、彼が閃いたメニューを完璧に再現する料理人ウージェニー。二人が生み出した極上の料理は人々を驚かせ、類まれなる才能への熱狂はヨーロッパ各国にまで広がっていた。ある時、ユーラシア皇太子から晩餐会に招待されたドダンは、豪華なだけで論理もテーマもない大量の料理にうんざりする。〈食〉の真髄を示すべく、最もシンプルな料理〈ポトフ〉で皇太子をもてなすとウージェニーに打ち明けるドダン。だが、そんな中、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンは人生初の挑戦として、すべて自分の手で作る渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようと決意するのだが──。
監督:トラン・アン・ユン
脚本・脚色:トラン・アン・ユン
出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル
料理監修:ピエール・ガニェール
配給:ギャガ
原題:La Passion de Dodin Bouffant/2023/136分/フランス/ビスタ/5.1chデジタル/字幕翻訳:古田由紀子
(c)2023 CURIOSA FILMS ー GAUMONT ー FRANCE 2 CINEMA
公式HP:https://gaga.ne.jp/pot-au-feu/
公式Twitter:@Pot_au_Feu_1215
12月15日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか ほか全国順次公開
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