【第36回東京国際映画祭】役所広司&ヴィム・ヴェンダーズ監督ほか豪華キャスト登壇!映画『PERFECT DAYS』舞台挨拶レポート!「本作を撮って自分には日本の魂があると感じた」
「第36回東京国際映画祭」(TIFF)のオープニング作品を飾った映画『PERFECT DAYS』(12月22日公開)の舞台挨拶がヒューリックホール東京で実施され、主演を務めた役所広司、共演の柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和、柳井康治、高崎卓馬、ヴィム・ヴェンダーズ監督が舞台挨拶に登壇した。
今年のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品され、主演の役所広司が日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる最優秀男優賞を受賞したことでも話題の『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷の公共トイレ清掃員として働く主人公が、淡々と生きる日々のなか思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、主人公の過去に少しずつ光が当たっていく様子を描いている。
メガホンを取ったヴィム監督は、「自分はドイツ人映画監督だと思っていたのですが、本作を撮って自分には日本の魂があると感じました。長いこと本作の準備をしてきて、ようやく皆さんにお披露目できる運びになりました。これまで色々なところで上映をしてきましたが、今夜が本番です。そして皆さんに上映をお楽しみいただきたいと思います」と本作への熱い想いと共に挨拶をした。また、本作を制作するきっかけを聞かれた監督は「素晴らしい場所があると聞いて、日本のトイレに出会った。当初は、日本のトイレや建築家についての小さな映像作品を作ろうと思ったけれど、見たことがない素晴らしいものを目にしてドキュメンタリーではなく物語のある映像作品にしたほうがいいのではないかと思い、映画を制作することになった」と制作経緯を語った。またキャストについて「役所広司さんが参加してくださることになり、誰よりも尊敬している役所さんと一緒にお仕事ができるということでとてもプレッシャーに感じました」と役所と共に仕事をできた喜びを語った。
そんな監督だが、主演を演じた役所広司から「監督はきょう4時間飛行機が遅れて、ちょっと前に日本に着いたから時差ボケっぽい」という指摘が。すると、役所の肩にもたれかかり眠いアピールをするなど可愛らしい一面を見せ会場を和ませた。主人公・平山を演じた役所は自身の役柄について「撮影中、監督は『平山みたいに生きたい』とおっしゃっていたので、僕もそういう人物を目指せばいいのかと思い、普段は都会の中で生きている男ですが、森の中で呼吸しながら生きているように演じました。」と語った。
平山の同僚清掃員を演じた柄本時生は「とにかくこんなご褒美はないぞ」とヴェンダーズ作品への出演を大喜び。自身の役柄について「とてもテキトーでわかりやすい憎めない人間性がある。そのテキトー具合をどう見つけられるかなと思いながら、楽しく演じさせていただきました」と振り返った。
平山の同僚清掃員のガールフレンドを演じたアオイヤマダは、自身が演じたアヤについて「謎が多い人物。私の中では人物像があるのですが、監督に言われたことではないので、ここでは伏せておきます」と語り、続けて「監督は、アヤに当てはまる人物を見つけるのではなく、私を見つめてくれました」と撮影当時を振り返った。すると監督は、「アヤははじめ紙の上でしか存在しなかったんです。彼女が命を吹き込んでくれました」とアオイに感謝した。そして「今夜また、紙の状態でいらっしゃいますね」と本日のアオイの衣装について言及し、アオイはダンサーらしく衣装のフリルを揺らし観客を魅了した。
本作が女優デビュー作となる中野有紗は「初めて演技で右も左も分からないまま、こんなにも素晴らしいチームに加えていただけて、その上こんなにも素敵な場にも連れてきてくださって本当に今、ありがとうございますの気持ちでいっぱいです」と先輩俳優陣の優しい眼差しのなか語った。中野について監督は「初めて映画の中で演技をする人は、まず最初のシーンの演技の中に、その人が役者なのかという真実があるんです。今回、はじめに撮ったシーンが銭湯の場面だったが、そこで彼女は生まれ持っての女優だと思いました」と印象を語った。
奇妙なホームレス役を演じた田中泯は「この映画では、僕は役所さんにしか見えない人を演じました。一言も喋りません。なので、ここでも喋らないでおこうかなと思ったのですが(笑)」とユーモアを交えて話したうえで、監督との撮影時のやり取りについて「一番初めの撮影で、監督から『泯、あの木の下でまもなく木漏れ日が差すからそこで踊ってくれ』と言ってくれたんです。映画監督から踊ってくれと言われたのは初めてだったので、凄く嬉しかったです」と振り返った。
続けて締めの挨拶を任せられた三浦は、「とにかくヴィム・ヴァンダーズ監督の作品なので不安のまま現場に行きました。出来上がりが素晴らしいです。私は最後の方にちょこっとだけ出ているので、見逃さないようにしてください」と自身の出番について語り、会場が笑いの渦に包まれるなか舞台挨拶は幕を閉じた。
【作品概要】
第76回カンヌ国際映画祭、最優秀男優賞受賞作。東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
配給:ビターズ・エンド
©2023 MASTER MIND Ltd.
公式サイト:https://perfectdays-movie.jp/
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