【海外ニュース】アリ・アスター監督、ホアキン・フェニックスと二度目のタッグを示唆？しかも西部劇!?
『ヘレディタリー 継承』、『ミッドサマー』に続く3作目『Beau Is Afraid(原題)』の公開を4月に控えているアリ・アスター監督。彼が米The New York Timesのインタビューで、本作と早くもさらなる次回作の構想について語った。
『Beau Is Afraid』はホアキン・フェニックス主演のブラックコメディで、精神が不安定な中年男性ボーが、母親の死をきっかけに自らの闇と向き合う旅に出る様を描く。4時間もの長尺になるとも言われていたが、3月30日現在、インターネット・ムービー・データベース上では179分、約3時間と表記されている(それでも十分長尺だ)。上映時間よりも、これまでホラーを作り続けてきたアスターが、突然コメディを撮った事実に驚く方が多いかもしれない。しかし、彼はあの『ミッドサマー』すらもジョークだったと話している。
『Beau Is Afraid』は、アスターが2011年に撮った短編『Beau(原題)』が基になっている。本作の脚本はアスターが自身を笑わせるために数年がかりで書き上げた、「あらゆる種類のアイディアと、自分でも理由がよく分からないが心に残ったものを入れた容器」であるという。「僕が作り上げたのは滑稽でフロイト的な冒険譚であり、多くのエピソードにあふれていて、そして面白いと思うよ」と自信ありげだ。フェニックスは、「絞首台のユーモア(絶望的な状況におけるユーモア)だよ。トラウマを抱えたキャラクターは、それに何かしら面白い部分を見つける以外に選択肢がないんだ」とコメント。アスターは、フェニックスとの数ヶ月にわたる事前打ち合わせを「結婚前のお付き合い」と表現し、「人生で最高の経験だった」と振り返っている。
アスターは、フェニックスが以前主演したモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)映画『容疑者、ホアキン・フェニックス』を見てその演技に心を掴まれたという。同作は、いきなり俳優を辞めラッパーに転向すると言い出し数々の奇行に走ったフェニックスの記録映像で、後から実はフェイクだったとネタバラシするも本気で心配していた俳優仲間やファンを呆れさせてしまった問題作だ。「彼が自分の名前を使ってやったことはとても勇敢で、間違いなく自殺行為だった。それが僕にはスリリングだったよ」と語るアスターは、すでにフェニックスとの新プロジェクトが動き出していると明かした。詳細は不明だが、ほぼ確実に西部劇になるという(これも意外に思われるかもしれないが、アスターは以前に米Inverseのインタビューで西部劇の脚本を執筆済みと話している)。
アスターは自身のセラピーのために映画を作っていると発言したことがある。抱えている問題(家族関係？)の詳細は明らかにされていないが、今回はあくまでホラーではなく、アスター自身が非常に楽しんで作ったコメディだと言うのなら、それを受け入れようではないか。…しかし、インタビュアーから作品に通底する罪悪感について問われた彼は少し怖い返答をする。「罪悪感？ それは人生の大部分を占めるものじゃないかな。これは大いなるユダヤ人コメディのような映画(アスターはユダヤ系)で、罪悪感とは最初に鍋に入れられるものだ」「これまでに作ったどの作品より僕らしいと感じる。でも、僕はまだ僕のままだ。だから、より幸せになったかと言われると、そうでもないな」。
最後に、YouTubeで公開された動画でのアスターのコメントを紹介しよう。「この映画について、10年くらい考えていた。これを作るなんて、自分でも信じられない気持ちがある。壮大で、特大だよ。全てのディテールの中には、さらなるディテールがある」「これは、ボーが母親の家に行くだけだけど、ユダヤ人版の『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな映画だね。皆さんに、負け犬になる体験をさせたいな」。そう言ってアスターは笑う。なるほど、フェニックスと気が合ったのもよく分かる。笑うに笑えないジョークは、ジョーカーの十八番ではないか…。
ソース
・https://www.nytimes.com/2023/03/28/movies/ari-aster-beau-is-afraid-midsommar.html
・https://www.inverse.com/entertainment/57273-ari-aster-midsommar-interview
・https://www.youtube.com/watch?v=7uzVaasp7Sw
