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【第35回東京国際映画祭】『バルド』 「この作品は作らざるを得なかった」アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督来日記者会見レポート

第35回東京国際映画祭
ガラ・セレクション出品作品
『バルド、偽りの記録と一握りの真実』

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ来日記者会見レポート

本日10月29日土曜日、『バルド、偽りの記憶と一握りの真実』の来日記者会見が東京ミッドタウン日比谷「BASE Q」にて行われ、監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが登壇した。

今年の東京国際映画祭で復活した黒澤明賞を受賞したイニャリトゥは「映画の殿堂があるならそこには神がいます。そのうちの一人が黒澤明監督だと私は考えています。その監督の名を冠した賞を受賞できるのはとても嬉しいです」と喜びを語った。そんな黒澤明については「私の父が『羅生門』を若い時に勧めてくれた。その非常に独自な視点は『アモーレスぺロス』に大きな影響を与えています。一つの出来事を様々な視点で見る、経験する。それを黒澤監督は『羅生門』で見せてくれました。まさに監督は3つ目を持っていた。監督からは3つ目の目で見ることを学びました」と自身の作品に与えた影響について語った。

本作はメキシコ出身のロサンゼル在住のジャーナリストの主人公シルベリオ・ガマという人物を描いている。夢のように詩的でシュールな、そして親密さと壮大さを兼ね備えた、イニャリトゥ監督にとって自伝的要素の強い作品だ。本作はNetflix配給作品で12月16日よりの配信だが、それに先立ち現在開催されている第35回東京国際映画祭で日本初上映となる。

そんな最新作についてイニャリトゥは「この作品は私にとって作らざるを得なかった」と作品に対する強い想いをコメント。主人公の境遇が自信と共通点があることについては「本作は非常に内省的な作品といえます。私は21年間アメリカで移民者として生きてきました。私の中には国を去った自分と、国に帰ると元に戻る自分という、2人の自分がいる」と、移民をしたものが経験する複雑な状況が、大きな要素になっていると語った。

ちなみに”バルド”というタイトルはチベット語で『中間の状態』という意味である。そういったタイトルからも監督自身が抱える心情を反映した自伝的作品であると言われているが、これについて監督は「バルドは特殊な映画で、個人的視点と実体験を多く用いています。ですが私はバイオグラフィを信じていません。この作品は非常に内省的な旅路ですが、記憶は記憶であって、記憶は真実が抜け落ちていたりするんですよね。本作ではあえて現実を欺く。フィクションであるということはある意味真実を昇華させたものだと思います」と自伝的作品とも一線を画する、監督が語る通りまさに”特殊な映画”であると語った。

これから映画を見る人に向けて監督は「この作品が非常に私の個人的な視点から起因した部分ですが、繋多くの人と共有出来るテーマ、父性や喪失感、愛情、何か不確かなものを感じる気持ちがあると思います」と国籍に関係なく共感できる部分があるとコメント。

日本の映画ファンには「こんなに離れているメキシコと日本ですけど文化的に非常に近いものを感じます。例えば坂本龍一さんの音楽は私の人生のサウンドトラックと言えますし、『レヴェナント』でお仕事が一緒でにきて光栄でした。映画では小津監督や溝口監督といった作品にも非常に触発されました。この作品はメキシコの映画ですが、地球の反対側の日本との橋渡しになるような、魂が呼応するような映画になればと思います」と挨拶。そして最後には自身が日本で撮影した『バベル』にも触れて「私が『バベル』を日本で撮ったときのクルーの皆さん、菊地凛子をはじめキャストの皆さんに愛を伝えたいと思います」と語り、来日記者会見は締めくくられた。

アカデミー賞有力作品とも言われている本作。一体どんな作品になっているのか。『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は11月18日より一部劇場で上映、12月16日よりNetflixにて配信される。


【ストーリー】
ロサンゼルスを拠点に活躍する著名なジャーナリストでドキュメンタリー映画製作者のシルベリオ・ガマは、権威ある国際的な賞の受賞が決まり、母国メキシコへ帰ることになる。しかし、何でもないはずの帰郷の旅の過程で、シベリオは、自らの内面や家族との関係、自らが犯した愚かな過去の問題とも向き合うことになり、そのなかで彼は自らの生きる意味をあらためて見いだしていく。

『バルド、偽りの記憶と一握りの真実』
監督・脚本・編集・製作:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ダニエル・ヒメネス・カチョ、グリセルタ・シチリアーニ ほか
上映時間:174分
公式HP:https://www.bardo-jp.com/
一部劇場にて11月18日(金)より公開、Netflix映画「バルド、偽りの記録と一握りの真実」12月16日(金)独占配信