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【レビュー】ガチな「バイオハザード」ゲーマーが語る『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

日本を代表する世界的ゲームシリーズ『バイオハザード』を原作とするリブート版実写映画、『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開された。この場をお借りして、ガチな原作ゲーマーという目線から、「バイオハザード」というゲームの実写化について、そして最新作を批評してみたい。

 

 

■原作ゲームとはかけ離れていたミラ・ジョヴォヴィッチ版『バイオハザード』

まず知ってほしいのが、ゲーマーのミラ・ジョヴォヴィッチ主演の前シリーズ(以下、ミラ版)の評価について。2002年の第1作に始まり、計7作品も作られたヒットシリーズだけに、原作ゲーマーからも支持されていそうだが少なくともガチなバイオゲーマーである筆者と、その周りのゲーマーからは酷評である。支持されているのは1作目と2作目までで、3作目以降はもう惰性で見ているだけ、5作目以降は劇場にすらいかなくなった始末である。理由はいろいろあるが、一番は“原作とかけ離れた映画”だったこと。ミラ演じる主人公アリスは映画だけのオリジナルキャラで、原作ゲームの人気キャラクターも登場はするものの、その扱いは“雑”の一言。ミラ版は、あくまでミラのアクションを見せる映画であり、原作メーカーのカプコンからも「ミラ版はゲームとは別物」という見解が出され、大方のコアな原作ゲーマーはミラ版に対し「勝手にやってくれ」というスタンスになっていったわけだ。

ミラ・ジョボビッチ主演『バイオハザードIV アフターライフ 』(2010)

 

■ゲーム『バイオハザード』について知ってほしいこと

ここで少しゲーム版について話しておきたい。“謎解きしながらゾンビを撃ち殺すホラーゲーム”、「バイオハザード」は約25年つづく人気シリーズだ。プレイヤーが操作する主人公はおもに4人。正義の警官クリス・レッドフィールドとその妹のクレア、そしてクリスの同僚で相棒のジル・バレンタイン、そしてクレアの相棒的存在のレオン・S・ケネディ、1作目と2作目の主人公たちが、その後のシリーズでも屈指の人気を誇るキャラなのである。しかし最初は「怖い」と評判だったゲームは、どんどんスケールが大きくなり、『ミッション:インポッシブル』さながらのアクション映画のようなゲームになっていった。そこで原点回帰という名目で、ホラー色を強めた作風に戻り、2019年には、かつての人気作「バイオハザード2」を最新のグラフィックでリメイクした「バイオハザード RE:2」が登場。世界中で大ヒットを記録した。

(C)CAPCOM CO., LTD. 1998, 2019 ALL RIGHTS RESERVED

 

■待ちに待った“原作ゲームに基づいた実写バイオハザード”

そして、ついに公開された『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』。本作の最大のふれこみは、ヨハネス・ロバーツ監督の言葉にもあるように、「原作ゲームシリーズに基づいた映画を目指した」という点だ。それを証明するように、事前情報のビジュアルなどはまさに原作ゲームに基づいたもの。特に前述の「バイオハザード RE:2」に大きく触発されて映画化に至ったようで、劇中のセットなども忠実に再現され、人気キャラクター4人も総出演。「ついにゲーマー納得の実写版が見られるのか?!」と、大きな期待を持って迎えた最新作は、残念ながら「これなら作らない方がよかった」と言える映画だった。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(2022)

 

■「1」と「2」の合体ストーリーという手段の間違い

細かい不満点を書き出すと1万字をゆうに超えてしまうので割愛するが、大まかに説明すると、「原作ゲームシリーズに基づいた映画を目指した」と謳っているのにも関わらず、結果として原作をないがしろにしてしまったことだ。最新作では前述の4人の人気キャラを出したいがためにゲームの発端である「1」と「2」のストーリーを合体させたのだが、そもそもゲーム「バイオハザード」と「バイオハザード2」は、描かれる事件の日付が数日違い、さらに場所も離れているため、主人公たちが一堂に会するのには無理がある。そこで強引に4人を同じ場所に集めるためにオリジナルの展開が描かれ、それを実現させるためにキャラクター設定の変更を余儀なくされているのだが、これがファンとして受け入れ難い変更であり、鑑賞中に「え?そういう設定?」となってまったくストーリーに入り込めない。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(2022)

 

■ゲームファンが実写化に期待すること

ゲームファンが好きなゲームの実写化に対し期待するのは、日夜プレイしている愛すべきゲームキャラクターたちが、実在の俳優たちの素晴らしい演技でさらなる魅力を増し、ゲームでは味わえないしっかりとしたストーリーで活躍する姿を見ることだ。しかし、原作ファンならよく知っているストーリーを強引に合体させたことで違和感が続き、さらに愛すべきキャラクターたち、特にレオン、ジルについては、別人のように性格が変えられてしまった。受け入れがたいのは決してビジュアルではない。見た目は近いに越したことはないが、キャスティングの都合もあるだろうし、そこは役者の力量と演出でどうにかなる問題だ。原作ファンに向けた実写化ならば、人気キャラの設定は極力守るべきで、もし変更するならば、原作を超える魅力を出すほかない。そのいい例がミラ版『バイオハザード2:アポカリプス』だ。シエンナ・ギロリーが演じたジル・バレンタインは、性格が荒っぽくなったものの、ハマり度合いが尋常ではなく、「完璧なジルが出てきた!」とファンの間で大評判になったものだ。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(2022)

 

■それでも我々原作ゲーマーは期待する

原作ゲーマーにとって、ミラ版は決して興味のあるものではなかった。しかし最新作『ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』を観てしまった今となっては、ゲーマーにこそ受けなかったが、やりたいことをしっかりやっているし、何よりしっかりヒットしている。あのシリーズが長年続いたことでゲームに興味を持った人もかなり多いだろうし、それがゲームの売り上げにつながっていることは間違いない。その売り上げが、我々ゲーマーが最も欲している“面白い続編づくり”につながっているだろう。我々ゲーマーが受けた恩恵ははかり知れない、そのことに今さらながら気づいてしまった。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』のアメリカの興行収入は芳しくなく、観客の評判もよろしくない。おそらく日本でもヒットしないだろう。原作ゲームファンをないがしろにしたと思っていたミラ・ジョヴォヴィッチ版『バイオハザード』シリーズのほうが、原作に寄せたという謳い文句の最新作よりもゲーマーに恩恵を与えていたなんて、何という皮肉だろうか。

ゲーム「バイオハザード」の実写化はうまくいかない。

この言葉の重みを痛感すると同時に、うまくいかない理由は何なのかが、全くわからなくなってしまった。またいつか実写化される時まで、またゲーム「バイオハザード」の世界に戻ります・・・。

 

文:「バイオハザード」ゲーマー(元世界ランク3位)

 

【キャスト】
出演:カヤ・スコデラリオ(クレア・レッドフィールド役)/ハナ・ジョン=カーメン(ジル・バレンタイン役)/ロビー・アメル(クリス・レッドフィールド役)/トム・ホッパー(アルバート・ウェスカー役)/アヴァン・ジョーギア(レオン・S・ケネディ役)/ドナル・ローグ(ブライアン・アイアンズ役)/ニール・マクドノー(ウィリアム・バーキン役)

【スタッフ】
監督・脚本:ヨハネス・ロバーツ
原題:Resident Evil: Welcome To Raccoon City
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

公式サイト:https://www.biomovie.jp/

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