『TBSドキュメンタリー映画祭2025』開催直前!MM編集部厳選の4作品をピックアップ!②『巨大蛇行剣と謎の4世紀』剣じゃない盾じゃない、面白いのは“人間”なんだ
TBSテレビやTBS系列各局の記者やディレクターが、歴史的事件、現在進行形の出来事、そして市井の人々の日常を追い続け、記録し、情熱を込めて世に送り出してきたドキュメンタリーブランド「TBS DOCS」。その想いが結実した場として2021年にスタートした「TBSドキュメンタリー映画祭」が、2025年も3月14日(金)より東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌の全国6都市で順次開催されます。
今回ムービーマービーでは、本映画祭の上映作品17タイトルの中から編集部おすすめの4作品をピックアップ。それぞれ、「勇気が出る」「感動する」「考えさせられる」「人間が面白い」「社会問題に触れる」「知的好奇心を刺激する」の6項目を5段階で採点!ぜひとも、映画館に足を運ぶ参考にしてください!
『巨大蛇行剣と謎の4世紀』
”謎の4世紀”…1600年前、巨大蛇行剣はなぜつくられたのか。
2022年、奈良市の富雄丸山古墳で2メートル37センチに及ぶ巨大蛇行剣が見つかった。同時に発見された鼉龍文盾形銅鏡とともに”国宝級の発見”とも言われ、約1600年前の”謎の4世紀”に製造されたとみられている。日本で古代国家が形成された時期にも関わらず、文書などが残っておらず、分かっていないことが多い”謎の4世紀”。この時代に一体何があったのか。巨大蛇行剣は、なぜ、そして、どうやってつくられたのか…。
「剣じゃない盾じゃない、面白いのは“人間”なんだ」
日本の古代史最大の謎は何か?
「邪馬台国」であろう。疑いのないところだ。
あの国がどこあったのか? 我々は古代中国でもっとも有名な史書「三国志」の中の「魏志倭人伝」という記録から探るしかないのである。
何故それが最大の謎といえるのか? 3世紀後半の日本の様子を記した「魏志倭人伝」では日本のリーダーは女王・卑弥呼だが、次に中国の記録に出てくる日本は5世紀前半で、そこでは既に今と変わらない天皇(大王・倭の五王)を戴く、豪族たちの連合国家になっている。その間の100年に何があったのか?
このぽっかり空いた歴史の空白を「謎の4世紀」という。この空白の中で生まれたのが大和王権、いわゆる「天皇」だ。そう、天皇の始まりが謎の中心にあるから、邪馬台国は最大の謎なのだ。
だから我々、歴史ファンの命題は「邪馬台国」単体のことではなく、「あれと大和王権(天皇の王権)がどういう関係なのか?」そして、「この100年の間に何が起こって天皇ができあがったのか?」ということなのである。でも未だにわからない。それと同じことがこの映画の中にある。
この映画には「天皇」の始まりに関する重要なヒントが隠されている。ただ、文献がない時代なため、歴史的なアプローチは限界があるので、考古学の出番である。
映画の中で我々は、世にも不思議な巨大蛇行剣を目の当たりにする。雲を衝くような大きさ。怪しげな光沢、クネクネと蛇のようにうねった両刃。ポイントはこの異様な大きさカタチだけではない。蛇行剣はこれまで「円墳」からしか出てきてない、ということもポイントだ。そう、そこから歴史ミステリーの扉が開く。ブレイン・ディテクティブ(脳内探偵)のはじまりだ。
古代、ヘビ信仰を持っていたのはだれか?
→三輪山、日本最古の神社である大神神社はヘビ。出雲の神様もヘビ。。
円墳は誰の墓なのか?
→通常、天皇家は前方後円墳だから円墳は現地豪族。しかもこの大きさ、日本最大級の円墳は初代の神武天皇に倒されたナガスネヒコのものじゃないのか?
円墳の造り出しという部分から出土されてきたのも注目ポイント。
→拝領品ではないか?だとするとだれからの拝領品か?
以上の状況から考えられるのは、ニギハヤヒに始まる物部一族。 何かしら関係がある。物部一族は天皇家に古くから付き添い、軍事と祭祀をつかさどり、「もののふ」や「もののけ」などにその言葉が残るほどー。さらに物部の祖ニギハヤヒは天皇家と同じ出自ではないかと言われており、天皇が祭祀王ならフィクサー(実質的な政治権力を掌握する重鎮)の役割を果たしていたのかもしれない。
ぼろぼろで発掘されたのに、驚異的な保存技術・修復技術剣で歴史の重みを感じるレベルに達した蛇行剣、同時に発見された盾形鏡の研究から立体的にわかることも様々あるだろう。ぜひ奈良まで観に行きたい。興味は尽きない。だが、我々歴史ミステリーファンが一番興味があるのは、どれほど大きくてもうねっていても刀のことじゃない、あの世にも珍しい巨大な鏡じゃない。
「これが天皇とどう関係するのか?」
というのが大事なのだ。歴史ミステリーファンは考古学者ではないからやはり、「人間のことが」おもしろいのだ。
世界に並ぶものなき最長の王朝である日本の天皇家。現代でもその存在は、国内ばかりか世界から大きな関心を持って語られる。「日本そのもの」と言えるあの家がいつから頂点に君臨し、日の本をひっぱってきたのか?これは、古代を見遥かす歴史ミステリーファンの中では最上級の問いだ。
さあ、あの常識をはるかに超えた剣の向こう側に、100年の空白にイメージを拡げようではないか。
この作品を6項目で評価!☞
第5回「TBSドキュメンタリー映画祭2025」
2025年3月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国6都市にて順次開催!
<開催概要>
東京=会場:ヒューマントラストシネマ渋谷|日程:3月14日(金)〜4月3日(木)
大阪=会場:テアトル梅田 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
名古屋=会場:センチュリーシネマ |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
京都=会場:アップリンク京都 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
福岡=会場:キノシネマ天神 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
札幌=会場:シアターキノ |日程:4 月 5 日(土)〜4 月 11 日(金)
公式サイト:https://tbs-docs.com/
公式X:https://x.com/TBSDOCS_eigasai
【舞台挨拶情報】
2025 年 3 月 14 日(金)~4 月 3 日(木) @ ヒューマントラストシネマ渋谷(東京会場)
『彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~』
3 月 14 日(金)14:00 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:西村匡史 ゲスト:近日発表
『米軍ア メ リ カが最も恐れた男 その名は、カメジロー』
3 月 14 日(金)16:00 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:佐古忠彦 ゲスト:内村千尋(瀬長亀次郎次女・不屈館館長)
『REASON~あの日、HIPHOP に憧れた少年たち~』
3 月 14 日(金)18:45 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:嵯峨祥平 ゲスト:近日発表
『埋もれる叫び~南米アマゾンで広がる子ども達の異変』
3 月 15 日(土)14:15 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:萩原豊
ゲスト:真山仁(小説家)、舛方周一郎(東京外国語大学 大学院総合国際学研究院 准教授)
『小屋番 KOYABAN ~八ヶ岳に生きる~』
3 月 15 日(土)16:30 の回 舞台挨拶
【登壇者】 企画・プロデューサー:永山由紀子/撮影・音声・監督:深澤慎也 ゲスト:菊池哲男(山岳写真家)
3 月 22 日(土)14:15 の回 舞台挨拶
【登壇者】 企画・プロデューサー:永山由紀子/撮影・音声・監督:深澤慎也
ゲスト:菊池哲男(山岳写真家)、一双麻希(女優)
『渡邊雄太 ~傷だらけの挑戦者~』
3 月 15 日(土)18:45 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:久米和也 ゲスト:近日発表
『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』
3 月 16 日(日)14:15 の回/16:30 の回/18:45 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:津村有紀 ゲスト:カラフルダイヤモンド メンバー10 名
(古川流唯/中下雄貴/設楽賢/小辻庵/岡大和/國村諒河/高垣博之/関優樹/永遠/加藤青空)
※ハイタッチあり(映画祭パンフレット購入者限定)
『巨大蛇行剣と謎の4世紀』
3 月 20 日(木)16:15 の回/18:30 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:山﨑直史 ゲスト:山崎怜奈(タレント)
3 月 22 日(土)16:40 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:山﨑直史 ゲスト:今村翔吾(歴史・時代小説家)
『あの日、群馬の森で -追悼碑はなぜ取り壊されたのか-』
3 月 21 日(金)18:30 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:三宅美歌/日下部正樹 ゲスト:安田浩一(ジャーナリスト)
『War Bride 91 歳の戦争花嫁』
3 月 23 日(日)16:15 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:川嶋龍太郎 ゲスト:奈緒
『巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯』
3 月 23 日(日)18:45 の回 舞台挨拶
【登壇者】 監督:大村由紀子 ゲスト:内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)