ダニー・ボイル作品特集④『スティーブ・ジョブズ』
ダニー・ボイル作品特集④
いよいよ今週末に公開が迫った映画『イエスタデイ』。世界中の人々が伝説のバンド“ザ・ビートルズ”を忘れた世界で、そのザ・ビートルズの楽曲で人気を獲得していく歌手の物語だ。そんな『イエスタデイ』を手掛けたのはイギリスが誇る名監督ダニー・ボイルだ。今週の「今夜何観る?」コーナーでは、そんなダニー・ボイル監督作品をご紹介!
『スティーブ・ジョブズ』(2015年)
●唯一無二の“ジョブズ映画”
本作はアップル社の共同設立者のスティーブ・ジョブズの伝記映画だ。iPhoneやiPadはもはや今の私たちの生活には欠かせない必需品とも言えるものだ。そんなアイテムの生みの親とも言えるのがスティーブ・ジョブズだ。既に故人である。
『スティーブ・ジョブズ』というタイトルの映画、実は2本ある。1本はアシュトン・カッチャー主演の映画でジョブズの生涯を描いた伝記映画。そしてもう1本が本作だ。こちらはスティーブ・ジョブズが唯一執筆に協力した伝記本を基に、人々の心を掴んだ3つのプレゼンの舞台裏を描いている。
【ストーリー】
1984年、アップル社の新製品発表会本番を40分後に控え、スティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)は部下のアンディ(マイケル・スタールバーグ)ともめている。今回ジョブズはどうしてもMacintoshに「ハロー」とあいさつさせたかったが、当の主役は沈黙したままだ。マーケティング担当者のジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)は諦めるよう説得するが……。
本作がなぜ唯一無二のジョブズ映画と言われる所以はやはり本作の基になった伝記本の存在が大きいだろう。スティーブ・ジョブズに関する著書は数多く存在するが本人が全面的に協力した伝記本はたった一冊しか無い。それが本作の基になっている。
そしてその伝記本を基に作られた映画の監督に抜擢されたのがダニー・ボイルだ。本作はジョブズの生涯を描いたいわゆる普通の伝記映画ではない。本作の物語の大きな柱であるジョブズの伝説の3つのプレゼン、その直前40分の舞台裏がそれぞれ描かれている。その中で彼が直面するトラブルをスリリングに描きつつ、娘との長年にわたる確執といったパーソナルなドラマにも踏み込んでいく、大胆な作品になっている。
本作の脚本を務めたのはアーロン・ソーキン。『ソーシャル・ネットワーク』、『マネーボール』などこの手の伝記映画はお手の物。ダニー・ボイルとともに本作を支えた。そして役者も実力派ぞろい。マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレットはオスカーにノミネートされた。
2011年、あまりにも突然にこの世を去ってしまったスティーブ・ジョブズ。しかし、彼の発明や言動は今なお世界中の人々に大きな影響を与えている。映画の良い所はそうした偉人たちの功績を映像に残しておけることだろう。しかもその作品の評価が高ければ高い程、後世に長く残る作品になる。ダニー・ボイルはまさに後世に残る傑作を作ったと言えるだろう。
『スティーブ・ジョブズ』(2015年)
監督:ダニー・ボイル
キャスト:マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン ほか
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