“不器用な男が突っ走る”映画特集②『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
『宮本から君へ』公開記念
“不器用な男が突っ走る”映画特集
不器用な熱血サラリーマンの青春を描く映画『宮本から君へ』(9/27公開)。新井英樹の人気漫画を実写化した本作は池松壮亮が演じる宮本の暑苦しくも切ない生き様を描いた極限の人間讃歌エンターテイメント作品だ。今週の「今夜何観る?」コーナーでは、映画『宮本から君へ』公開にあわせて、“不器用な男が突っ走る”作品4本をご紹介!
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年)
●「宮本から君へ」オマージュが炸裂!
「ビッグコミックスピリッツ」にて05年~08年まで連載された、うだつの上がらないサラリーマンの青春模様を描いた花沢健吾による同名人気漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の映画化。後に『何者』や『娼年』を手掛け、ポツドールの主宰を務める演劇界の鬼才・三浦大輔が現代版「宮本から君へ」と呼ばれている本作のメガホンをとった。
主演は原作の大ファンだと公言するロックバンド・銀杏BOYZの峯田和伸。『アイデン&ティティ』、『色即ぜねれいしょん』など演技の世界でも注目を集める峯田が、情けなく不器用なサラリーマン田西敏行を熱演。共演に、田西が恋する会社の後輩の植村ちはる役には黒川芽以、田西からすべてを奪い取るイケメンサラリーマン青山を、松田龍平が演じる。
弱小おもちゃメーカーで働く彼女いない歴29年のサラリーマン、田西敏行。営業先では「面白くない」とバカにされ、出世なんて程遠いダメ社員。同僚・ちはるにひそかに恋心を抱きながらも、当然彼女にうまく近づけない。誕生日をテレクラで迎えてとんでもない女にひっかかるわ、実家暮らしでエロビデオを見て就寝する怠惰な毎日を送っている。仕事も恋もダメな田西に、なんとチャンスが到来する。仕事先で出会ったエリート営業マン・青山の手ほどきで、ちはるとの恋が実りかけるが・・・。青山の本性に気付き、ちはるの身に起きたある出来事を知った田西は激怒する。「いい人」か「獣」か。「土下座」か「決闘」か。田西の人生が、今、動き出す。
原作漫画は全10巻で完結しているが、映画では前半の山場となる田西と青山の決闘が描かれる5巻までを映像化。原作全てを描かずに、前半部に散りばめられたエピソードを三浦監督が整理し、1本の映画として非常に上手く纏めている。
あえて原作後半で見られる答え合わせまでやらないことで、田西という中年男のリアルな青春ストーリーをより強調している。エンディングで全力疾走する田西を映しながら、峯田が本作のために書き下ろした疾走感ある主題歌「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は胸が熱くなること間違いなし。
漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は現代版『宮本から君へ』と言われるほど、宮本オマージュと思われる要素がとても多い。どちらも、不器用な男の恋がきっかけで、強烈で暴力的な試練に立ち向かう。ストーリー性が似ているという訳ではないが、それぞれの作品が持つ魂が非常に似ているし、どちらもとにかく熱い。いろいろな所にぶつかりながら、もがいて、苦しんで惚れた女のために頑張る2人の男たちの姿を見比べてみるのも面白いだろう。
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年)
監督・脚本:三浦大輔
出演:峯田和伸、黒川芽以、YOU、松田龍平、小林薫、リリー・フランキー
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