暴力、セックス、ドラッグ、反体制・・・映画の歴史を変えたアメリカン・ニューシネマ特集① 『俺たちに明日はない』
2月1日より『イージー★ライダー』の日本公開50周年を記念したリバイバル上映が行われる。そこで今週の「今夜何観る?」は一大ムーブメントを巻き起こした“アメリカン・ニューシネマ”作品を特集する。60年代後半から約10年間、アメリカ映画界を牽引してきたアメリカン・ニューシネマからは今も語り継がれる名作が数多く誕生した。その軌跡を辿る。
『俺たちに明日はない』(1967)
アメリカン・ニューシネマが産声を上げた瞬間
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アメリカン・ニューシネマは60年代後半、激化するベトナム戦争の実態に国民のアメリカ政府への信頼は崩れ落ち、若者の反体制化が顕著になっていった時代に起こった映画運動だ。人種差別やドラッグなども顕在化し、こうした中で67年、反体制の象徴とも言える映画『俺たちに明日はない』が公開される。ちなみにアメリカン・ニューシネマという呼称は日本オリジナルで、アメリカでは「ニュー・ハリウッド」と呼ばれている。
登場人物のボニーとクライドは銀行強盗という犯罪者でありながら、貧しい銀行からは決してお金を取ることはなく、反体制の象徴として、つまりヒーローとして描かれている。当時の世相を色濃く反映したこの映画は暴力的なシーンはもちろん、オーラルセックスについて示唆されているシーンが描かれるなど、当時のアメリカ映画には革新的な映画だった。
この映画が誕生する前、映画は夢を見せる娯楽であり、その多くがハッピーエンドだった。しかし、この映画のラストシーン、主人公のボニーとクライドは大量の銃弾を浴び、壮絶な死を遂げる。この死のバレエは観客に衝撃を与えた。それは同時にアメリカン・ニューシネマの幕開けを告げる瞬間だった。
【ストーリー】
世界恐慌下のアメリカのテキサス。刑務所を出所してきたばかりのクライド(ウォーレン・ベイティ)が例によって駐車中の車を盗もうとした時、近くの2階から声をあげて邪魔をしたのが、その車の持ち主の娘ボニー(フェイ・ダナウェイ)だった。2人にはこれがはじめての出会いだったが、クライドはボニーの気の強さに、ボニーはクライドの図太さに、惚れこんでしまった。2人いっしょならば恐いものなしと彼らは、町から町に渡りながら次々と犯行をくり返していく。
【キャスト】
ウォーレン・ベイティ、フェイ・ダナウェイ ほか
【スタッフ】
監督:アーサー・ペン