″広大な宇宙”がテーマの映画特集①『ゼロ・グラビティ』
“宇宙”がテーマの映画特集
ブラッド・ピットが初めて宇宙ものに挑戦した映画『アド・アストラ』(9/20公開)。ブラッド扮するエリート宇宙飛行士が、地球外知的生命体を探して地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で消息を絶った父を探すために宇宙へと旅立つエンターテインメント大作。今週の「今夜何観る?」コーナーでは、『アド・アストラ』公開にあわせて、壮大な宇宙を扱った作品4本をご紹介!
『ゼロ・グラビティ』(2013年)
●最新技術を駆使して描く宇宙空間の恐怖
イレギュラーな事故により宇宙空間に投げ出されてしまった宇宙飛行士たちの極限状況を最新テクノロジーを駆使して描き上げたスペース・サスペンス・エンターテイメント。『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』や『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロン監督が手掛けた本作は、第86回アカデミー賞で監督賞、 撮影賞、編集賞、音響編集賞、録音賞、作曲賞、視覚効果賞の7部門を受賞した。
【あらすじ】
地球から60万メートル上空。ススペースシャトルにてハッブル宇宙望遠鏡の修理作業を遂行中、突発的事故により無重力空間(ゼロ・グラビティー)に放り投げ出されたふたりの宇宙飛行士。漆黒の闇で二人をつなぐのは、たった一本のロープのみ。他の乗組員は全員死亡。NASA との交信も断たれ、残った酸素はあとわずか。次々と襲いかかる危機を突破し、果たして地球に無事生還することができるのか!?
これまで様々なアプローチで「宇宙」をテーマに作られた作品は数多くあるが、本作では「宇宙空間」そのものの恐怖を描き、無重力&無酸素という極限状態で人間がどうサバイブするかを描いている。
構成も実にシンプルで、本作でまともに顔が見える登場人物もサンドラ・ブロックが演じる医療技師ライアン・ストーン博士と、ジョージ・クルーニー演じるベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキーの2人だけ。あとは全て声のみの出演で、本来なら描かれるはずの地球からNASAがサポートする場面など一切ない。描かれるドラマを1か所に絞ったことで、宇宙空間に投げ出されてしまった彼らが抱く、恐怖や緊張感を最後まで維持することに成功している。
冒頭から13分に及ぶ長回しのシーンは圧巻の極み。美しく青い地球をバックに、他愛もない会話をしながら船外作業を行う宇宙飛行士たち。大量の宇宙ゴミが襲い掛かり、ハッブル宇宙望遠鏡は粉々に砕かれ、仲間は死に、シャトルも破壊される。衝撃で自制が利かず宇宙に投げ出されるライアン。不安感を煽るBGMとカットを割らない演出で彼女の恐怖が観客とリンクして、こちらも思わず過呼吸になってしまうような凄まじいシーンになっている。
生と死のメタファーを随所に散りばめ、宇宙での漂流を人生そのものとして表現したキュアロン監督。そして、そのメッセージを観客に伝える手段として徹底的に作り込まれた映像はまさに驚愕の一言。生身で登場しているシーンを除いて、宇宙服から覗くキャストの顔以外は全てCGで作られていたり、宇宙ステーション内で動き回る無重力表現など、「どうやって撮ってるんだコレ?」と思えるようなシーンの連続に驚かされること間違いなしだ。
『ゼロ・グラビティ』(2013年)
原題:Gravity
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン
キャスト:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
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