”良いパパ”俳優 デニス・クエイド特集④『デイ・アフター・トゥモロー』
“良いパパ”俳優 デニス・クエイド特集
1979年の青春映画『ヤング・ゼネレーション』で注目され、宇宙飛行士たちの実録ドラマの傑作『ライトスタッフ』(1982年)で高い評価を獲得。トム・クルーズのような“世界的スーパースター”とまではいかないものの、現在に至るまで主演作が途切れない、確かな人気を持つ俳優、それがデニス・クエイドだ。そんな彼の最新作『僕のワンダフル・ジャーニー』(9/13公開)を前に、今週の「今夜何観る?」コーナーでは、デニス・クエイドが最の魅力を放つ役どころ“良いパパ”を演じた作品4本をご紹介!
『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)
●エメリッヒ監督のディザスタームービーにおけるバランス感覚
これまで紹介してきた作品の中でも、デニス・クエイドの“良パパぶり”が最も堪能できると言っていい作品、それが『インデペンデンス・デイ』(1996年)のローランド・エメリッヒ監督による、地球規模の大災害に立ち向かう人々を描いたディザスター・パニック『デイ・アフター・トゥモロー』だ。
【あらすじ】
そう遠くない未来、地球温暖化によって極地の氷が融解、流れ出た水が海水の塩分濃度を変化させ、地球に氷河期が訪れる。そんな“温暖化による氷河期の到来”という突拍子もない説を提唱し、危機を訴えたジャック・ホール(デニス・クエイド)だったが、政府には相手にされなかった。しかし、“そう遠くない未来”に起こりうるはずだったことが現実に起こり始め、地球は突然の異常気象に襲われる。
巨大竜巻や、津波、ハリケーンなど、CGを駆使したディザスターシーンの数々は、さすが『インデペンデンス・デイ』の監督だけあって、本作の大きな見どころ。そこに動物園から逃げた狼の話や、サバイバル生活、凍死の恐怖など、災害の副産物としてのトラブルもうまく混ぜ込んでくる。
この手の作品を観たい人は、スペクタクルシーンや登場人物のピンチ観たさにお金を払っていると言っても過言ではないだろう。しかしエメリッヒ監督は、それだけでは面白くならないことを重々承知しており、かといってドラマに重点も置きすぎない。決して深みがあるドラマが得意な監督ではないが、スペクタクルな災害シーンとの間に挿入される“わかりやすい人間ドラマ”の描き方とバランスが非常にいいのだ。
本作で描かれる人間ドラマの主軸は、“父と息子の絆”である。父親のジャックはワシントンで仕事をしており、息子のサムはたまたまニューヨークにいるという状況で、災害が起こり始める。映画の冒頭、思春期の高校生サムは、父親とロクに話そうともしないため、ふたりはほとんど会話もないまま二度と会えない状況に陥ることになる。
しかし、いざ危機的状況を迎えると、サムは必ず父親が助けに来てくれると信じ、ジャックがかつて言っていたことをしっかりと思い出しながら、あくまで冷静に行動する。一方のジャックは政府と人類のために仕事をしながらも、必ず息子が生き残っていると信じ、どんなに“生きている望みはない”と周りに言われても絶対にあきらめず、猛吹雪の中ニューヨークへ救出に向かう。
父と息子は、どんなに離れていても、強い絆で結ばれているのだ。
そんな主軸のドラマ以外にも、災害シーンの間にいくつかドラマシーンがあるのだが、圧巻のスペクタクルを邪魔することなく、いい塩梅のドラマがテンポよく挿入されているので、作品全体が重いトーンになりすぎない。
このバランス感覚こそ、エメリッヒ監督がディザスタームービーの第1人者と言われるゆえんなのだ。
実際に起きた災害をテーマにした作品であれば、重く、見ごたえのあるドラマにするべきだ。しかしこの作品は、あくまでエンターテイメントだという監督の主張がしっかりと伝わってくる。本作の5年後に公開された同監督の『2012』と並んで、数あるディザスタームービーの中でも、非常にバランスの取れた良作に仕上がっている。
『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)
監督:ローランド・エメリッヒ
キャスト: デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、エイミー・ロッサム、イアン・ホルム、セーラ・ウォード ほか
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