MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

TBSドキュメンタリー映画祭2026 上映作品『野島伸司 いぬ派だけど ねこを飼う』津村有紀監督インタビュー「彼のユニークな考え方や独自の脚本術を残しておきたかった」

TBSテレビ系列各局が取材したドキュメンタリーを特集する「TBSドキュメンタリー映画祭2026」が3月13日から6都市で順次開催されている。2021年に始まり、6回目を迎える今年の映画祭では、表現者を通して新たな感性に出あう「カルチャー・セレクション」、多様な生き方や新たな価値観を見つめる「ライフ・セレクション」、現代を取り巻く社会問題に迫る「ソーシャル・セレクション」の3つのテーマで計16作品がラインナップされた。

「カルチャー・セレクション」で上映される『野島伸司 いぬ派だけど ねこを飼う』では、『101回目のプロポーズ』(1991)『高校教師』(1993)『ひとつ屋根の下』(1993)『聖者の行進』(1998)をはじめ、90年代に社会現象を巻き起こしたドラマを立て続けに発表した脚本家・野島伸司に、初めて密着取材が許された。語られてこなかった生い立ちや過去の傷、独自の脚本術などを通して、お茶の間のテレビドラマで社会問題やタブーを問うてきたミステリアスな彼の思考を探るとともに、真田広之、木村拓哉、桜井幸子ら俳優たちへの思いが明かされる。

監督を務めたのは、TBS報道局報道コンテンツ戦略室長として「TBSドキュメンタリー映画祭」を統括し、野島と20年来の親交のある津村有紀。前作『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』(2025)が「ロンドン・フィルムメーカー国際映画祭」で最優秀ドキュメンタリー賞と外国語映画部門最優秀監督賞を受賞したばかりの彼女に話を聞いた。

監督:津村有紀
TBSテレビ入社後、『ZONE』『筋肉番付』のADとしてキャリアをスタート。『サンデー・ジャポン』のディレクターを経て、ドラマ『シンデレラになりたい!』でプロデューサーデビュー。映画『おくりびと』『チーム・バチスタの栄光』や舞台『Kバレエカンパニー』『ディズニー・オン・クラシック』など、ジャンルを横断して作品制作に携わる。企画・プロデュース作『吾郎の新世界』はロンドン・フィルムメーカー国際映画祭2019で外国語映画部門最優秀撮影賞を受賞。現在はTBS報道局報道コンテンツ戦略室長として『解放区』『TBSドキュメンタリー映画祭』を統括。監督作『カラフルダイヤモンド〜君と僕のドリーム〜』シリーズは映画祭で2年連続観客賞を受賞。2026年には続編がロンドン・フィルムメーカー国際映画祭にノミネートされ、舞台『パイロット』の脚本も手がけた。

 

──野島伸司さんとはもともと親交があったそうですが、出会った経緯についてまず教えてください。

もう20年くらい前、私がドラマの制作をしていた頃に、脚本を書いていただきたいと思ってアプローチをしたことがきっかけでした。結局、そのときは作品には結びつかなかったのですが、そこから親交を続けさせていただいています。お仕事としてご一緒したのは今回が初めてでした。

──本作が野島さんへの初の密着となりました。継続的な交流があったことで実現できたのでしょうか。

以前、居酒屋でお話をさせていただいていたときに、野島さんが「自分の脳内には4人の人格がいる」みたいな話をされて。映画内でも触れられていますが、その話を聞いていたら、直感的にこの場で私だけが聞いているのはもったいないと思ったんです。野島さんは、今までメディアにもあまり出てこられなくてベールに包まれていますが、彼のユニークな考え方や独自の脚本術を残しておきたいと思い、密着取材の提案をさせていただきました。

──90年代を象徴する日本ドラマの脚本家をいま改めて再評価するということよりも彼の言葉自体に惹かれたと。

そうですね。野島さんがどういうことを考えていらっしゃるのか、頭の中を出していきたいと思ったので、そのために生い立ちから聞いていきました。作品自体も動画配信でいまの若い人にも見られるようになってきていると思う。でもドラマの存在は広く知られていても、どういう経緯で書くようになったのか、どういう書き方をしているのか、創作者としての「野島伸司」はほとんど知られていないので、そういった部分も本人から直接聞きたいと思いました。

──リアルタイムでどのように野島さんのドラマに接し、人間の暗部に焦点を当てた彼の作品をどのように見ていましたか。また、なぜ話題を集めたと思いますか。

昔、脚本のオファーをしたときもやっぱり野島さんの作品が好きでしたし、中学生ぐらいからずっと見てきました。当時から、表面的にはトレンディードラマっぽい明るめの作品と、深部を掘ったダークサイドの作品の両方があって、振れ幅がすごい脚本家だと思っていました。でも改めて見直してみると、例えば『高校教師』って「近親相姦」「タブー」みたいなワードが走りがちですが、コミカルな部分も多く、見やすく作ってある。明と暗が両方入っていて、観ている人の心を取り込むバランス感が優れていたからこそ、惹きつけたのではないかと思います。

──登場人物を極限状況に置くことで、人間の本質や愛の存在を問うことを好むと彼は語ります。野島伸司作品の魅力をどのように考えていますか。

いい大学に行っていい車に乗るみたいなステレオタイプなものがもてはやされていた時代に、野島さんの作品は、私たちの内側にある闇を鏡のように見せてきた気がします。「本当のことを言ってくれてる」みたいな連帯感が視聴者と作品との間で作られていたところが魅力なのかなと思います。極限状態でボロボロになってもお互いを求め合う主人公たちの姿には、現代の聖書とでも言えるような、ギリシャ神話的な悲劇のようにも感じられる部分がありました。時代の閉塞感の代弁者みたいなところがあったのかもしれないですよね。何かしら嘘っぽいものに対する本質を描いていくところが支持されたのだと思います。

──本作は、三脚を据えて正対して聞き出すトーキングヘッド形式のインタビューをほとんど採用していませんね。露出の少ない一種謎めいた脚本家に正直に語ってもらう上で、居酒屋のくだけた雰囲気のなかで話を聞くやり方が重要でしたか。

野島さんと20年お付き合いしてきたなかで、居酒屋での印象しかほとんどなかったんです。野島さんの日常、ありのままの姿と言葉を撮りたいと思ったので、居酒屋でお話を聞いていくスタイルを取りました。普段からお仕事の打ち合わせをされるときも会議室で改まってというよりも、割と居酒屋が多いそうです。

──野島さんの生い立ちや人生観が語られるとともに、それに関連した脚本作のセリフが表示されることで、彼自身と脚本作とがどのようにつながっているかが見えてきます。よく「ドラマは脚本家のもの」と言われますが、そのような関連性を探ることが当初から意図としてあったのでしょうか。

作りながら生まれたアイデアでした。ただ、作品のなかに作者の言霊や信念が出てくる部分はあると思っていて、常日頃から野島さんとお話させていただくなかでドラマの登場人物が少しよぎることがありました。結果、生い立ちからずっといろいろなお話を改めて聞かせていただいて、やっぱりリンクしてくる部分をより感じたので、このような構成を取りました。

──その際、セリフの引用はどのように探されたのでしょうか。

記憶にあるものもありましたが、改めて探した部分もありました。でも、野島さんの作品は見やすいので、見直してもあっという間で、時間はあまり気にならなかったですね。

──過去の恋愛についても率直に語られています。プライベートな話題に触れることはセンシティブで難しいことではなかったですか。

特に聞き出そうと思っていたというわけではなく、いろいろ聞いていく自然な流れのなかでお話いただけました。居酒屋というホームグラウンド的な場所だったので、聞けたのかもしれないですね。

──後からあの場面をカットしてほしいと言われることもなかったですか。

全体的に何か言われることはなかったですね。

──人の内面に深く潜り込んでいくことができるドキュメンタリーの魅力をどのように感じていますか。また、インタビューという手法はお好きですか。

インタビューは好きですね。やっぱり言葉だけではなく、表情なども含めて、インタビューをすることでいろいろなことを知れますし、受ける側も話をすることで自分の頭のなかが整理されてくるとよく聞きます。撮る側も被写体側もお互いに自分を見つめる作業をしながら、魂を出していくということだと考えているので、インタビューは大事にしています。ドキュメンタリーは、やっぱり被写体と近くあれる。観ている方も何かしら自分の心とリンクしてきたり、自分の頭のなかで対話をしながら、内面を見つめ直せるような魅力があるかなと思っています。

──『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』の舞台版では、前作に続いて脚本も担当されています。「脚本家」として、野島さんから何か受け継いでいるような部分はありますか。

何か書き方を教わったとか具体的なことはないのですが、姿勢や着眼点、スピリットみたいなものを学ばせていただいている気はします。野島さんの言葉って、おばあちゃんが孫に語り伝えていくような童話的なところがあるんですよね。悪口を言ったら、結局、自分に返ってくる、と生きていく上での道徳を語られる。ほかにも、ちょっとイラっとすることや嫌なことがあっても、金魚はすぐに忘れちゃうから、金魚を頭に思い浮かべるといいみたいなことを想像豊かに仰られるんです。そういうお話が、私自身のなかにさまざまな面で活きていると思います。

──普段の会話から教訓的な物語をある種語られるようなところがあるんですね。仰るように、「毒を吐くことは同時に吸うことにもなる」「言霊を信じないといけないから他人の悪口を言わない」という彼の考え方は、SNS時代において一層有用なように思えました。

やっぱりそうだと思います。ユニークで教訓的なものが多い。そういった話って昔は語り継いでいくものだったと思うんですけど、意外と語ってくれる人が少なくなった気がして。シンプルで優しい言葉ですが、SNS上には本当に言葉がいっぱい溢れているからこそ、そういう大切な言葉を汲んでいきたいと思いました。

──「言霊を信じる」姿勢が、犬が好きなのに猫を飼っていることにも表れています。『いぬ派だけど ねこを飼う』というサブタイトルをつけた理由を教えてください。そのことが何か野島伸司という人物を象徴しているように感じましたか。

人は多面的であるということを表しているように感じて、掴みどころがないミステリアスなイメージからでしょうか。。ただ、ご覧になった方それぞれで思うことはまた違うかもしれないので、答えは委ねたいと思っています。

──野島さんでも「一番恐ろしいのは忘れられること」であり、承認欲求が完全になくなったら死を意味すると考えているのが印象的でした。特にSNS時代では「承認欲求」は悪とみなされがちですが、創作や活動をする上での承認欲求をどのように感じますか。

創作者や表現者にとって、やっぱり承認欲求って大切なものだと思います。野島さんの言う「承認欲求」には、もっと自分のことを理解されたいということだけでなく、もっと自分の考えや声を遠くまで届けたいという意味も入っているのではないかと思います。それがないと、表現も精練されてこないし、何かしらメッセージ性のあるものは作れない。SNSで言われる「承認欲求」って、どこか打ち負かしてやろうとかマウントを取りたいという意味合いも含んでいますよね。混同されがちですが、そっちに向かってしまうと、それこそ悪口を言っちゃうと自分に戻ってくることにもつながりかねないという気がします。

──先ほど仰っていた野島作品で描かれる他者とのつながりを求める個人の欲求とも、もしかしたら結びついてると言えるかもれませんね。本作を通して、野島伸司という人物や彼の作品への印象が何か変わった部分はありましたか。

「1年に10人しか会わない」とか修行僧のように人とあまり接触を持たずに孤高に生きてらっしゃる雰囲気がありますが、実はやっぱりすごく他者と深くつながることへの思いが奥底にあって、人間愛を大切にしている方なんじゃないのかなとより思いました。野島さんと『ひとつ屋根の下』のあんちゃんが、なんとなく勝手に重なって見えました。

【作品情報】

『野島伸司 いぬ派だけど ねこを飼う』

『101回目のプロポーズ』『高校教師』『聖者の行進』など、社会のタブーや人間の深層に踏み込む作品で“野島ワールド”を築き上げてきた脚本家・野島伸司。本作は、そんな野島の創作の源泉と知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。居酒屋で語られる家族の記憶や俳優への想い、「罪と愛」の歴史、そして初めて明かされる型破りな脚本術。彼の言葉の先に、それぞれの胸にある記憶や人生の問いが浮かび上がる。

出演:野島伸司、喜矢武豊(ゴールデンボンバー)、田畑志真、近藤靖

監督:津村有紀
編集・選曲:松木大輔
撮影:林洋介

2026年/72分/©TBS

【上映スケジュール】
3月14日(土)18:30 ヒューマントラストシネマ渋谷
3月17日(火)16:00 ヒューマントラストシネマ渋谷
3月20日(金・祝)18:45 ヒューマントラストシネマ渋谷
3月24日(火)14:30 ヒューマントラストシネマ渋谷
3月28日(土)11:00 センチュリーシネマ
3月31日(火)14:00 テアトル梅田
3月31日(火)14:15 ヒューマントラストシネマ渋谷
4月2日(木)12:30 アップリンク京都
4月3日(金)12:15 テアトル梅田
4月3日(金)12:40 センチュリーシネマ
4月5日(日)14:35 キノシネマ天神
4月8日(水)12:40 センチュリーシネマ
4月8日(水)14:00 アップリンク京都
4月10日(金)14:10 キノシネマ天神

【登壇イベント】
3月14日(土)18:30の回上映後
会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
登壇者:野島伸司(脚本家)、津村有紀監督

3月20日(金・祝)18:45の回上映後
会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
登壇者:野島伸司(脚本家)、津村有紀監督

3月28日(土)11:00の回上映後
会場:センチュリーシネマ
登壇者:津村有紀監督

 

<開催概要>

「第6回 TBSドキュメンタリー映画祭2026」
2026年3月13日(金)より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催される。
※一部の作品は上映されない会場があります。

東京:ヒューマントラストシネマ渋谷|3月13日(金)〜4月2日(木)
大阪:テアトル梅田|3月27日(金)〜4月9日(木)
名古屋:センチュリーシネマ|3月27日(金)〜4月9日(木)
京都:アップリンク京都|3月27日(金)〜4月9日(木)
福岡:キノシネマ天神|4月3日(金)〜4月16日(木)
札幌:シアターキノ|4月4日(土)〜4月10日(金)

主催:TBSテレビ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2026
公式X:@TBSDOCS_eigasai