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追悼記念!組織を描く達人、巨匠「原田眞人」映画の世界! 戦後80年「日本」の一番長い日」集中特集

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

戦後80年、太平洋戦争を終わらせた男たちの物語。
日本のいちばん長い日』

原田眞人が何より描きたかった組織、それは日本ではないでしょうか。終戦から80年目ですが、彼の最高傑作『日本のいちばん長い日』は1945年8月、無条件降伏を受け入れるかどうか?日本政府首脳たちの苦悩と選択が描かれます。戦場シーンはほぼ無く、皇居の中の会議室が主な舞台ですが、戦争の正体にこれ程迫った映画もありません。

今回の特集では、日本の戦争を終わらせた男たちを描いた映画『日本のいちばん長い日』について4回に分けてお送り致します。

敗色濃厚の日本、最終局面のキーマンが3人います。東条、小磯ときた陸軍首班の政府を受け継いだ鈴木貫太郎(彼は元海軍の軍人です)。温和ながら鉄の意志を秘めた総理大臣です。そして陸軍大臣陸軍阿南惟幾(あなみこれちか)。本土決戦を唱え暴発寸前の過激分子を抱えた陸軍のトップです。もう一人は昭和天皇です。実は鈴木も阿南も、天皇とは(以前から)個人的なつながりがありました。この物語は天皇の心を知る旧知の二人の重臣が、時に協力し、時に反駁しながら、天皇の権威を利用し、軍を抑えながら、日本を終戦に向かわせるというドラマなのです。

世界大戦の影の主役は共産主義だった

印象的なセリフがあります。それが意味しているものを探っていきましょう。

鈴木貫太郎「判断が遅れれば北海道にソ連が来る。敵がアメリカのうちに終戦にしなければならない」

鈴木首相の言葉はアメリカなんかより、ソ連の方が数倍怖いことを意味します。ソ連の怖さは当時世界を侵食しつつあった共産主義の怖さです。貧困にあえぐ当時の日本の東北の農村部などは敗戦を機に簡単に共産主義に転がる危険性は十分にあったし、実は関東軍をはじめとして陸軍の中にも共産主義者が多かったのです。

もしソ連によって一部でも占領され共産化したら、二度と元の日本には戻りません(北方領土をみればそのことがわかります)。鈴木貫太郎は故に8月9日から始まったソ連の侵攻を最も気にしており、8月15日の終戦断行にこだわったのです。

天皇ヒロヒトの国際感覚

天皇「国体の護持について、私は確信がある。」

これは、昭和天皇が陸軍大臣阿南に向かって「心配してくれるのはうれしいが。。」と言った後に出た言葉ですがどういう意味でしょう?阿南が終戦に反対した理由はまさしく「国体の護持」でした。それほど大事な「国体」とはなんでしょう?国体とは日本の国柄(くにがら)のことで、万世一系の天皇が日本に君臨する国家の体制のことです。

「敗戦になれば、天皇は死刑に問われ、皇統は断絶するかもしれない。そんなことになったら、千年に渡り、天皇を守ってきた多くの先人たちに詫びても詫びきれない。ならば潔く皆死のう。」当時は、そんな極端なことをいう輩が普通に幅を利かせていたのです。異常な感覚としか言いようがありませんが、現代の日本もその延長線上にあります。普段は意識しないかもしれませんが、誰にも汚されたくない国家のアイデンティティを強烈に持っているのが日本という国です。

■「聖断」天皇の政治介入

ちなみに天皇は日本の元首ですが政治的実権はありません。実行者である政治家の言うことを承認しなければならない立場なのです。満州事変の発端に際して昭和天皇は謀略の匂いを嗅ぎつけ政治に意見してしまったことを悔い、それ以来沈黙したといわれますが、2度だけ憲法の制約を飛び超えた行動に出てます。一度は自分の信用する重臣が殺された陸軍のクーデター、二・二六事件(鈴木貫太郎も殺されかけた)。二度目がこの太平洋戦争の終戦間際での「聖断」であったと言われます。

「日本のいちばん長い日」は、岡本喜八版が首脳陣の全体的な群像劇なのに比べて、原田眞人版は昭和天皇、首相鈴木貫太郎、陸相阿南惟幾の3人がクローズアップされています。原田監督は「いろいろ当時の文献を調べると、以前宮中で一緒だったこの3人の人間関係が日本を終戦に導いた最大の原動力だと思った。3人は兄弟のようなものだった」と言っています。特に、すべてを背負って自決した役所広司演じる阿南惟幾の姿は胸に迫ります。実際、彼の自決の与えた衝撃は非常に大きく、本土決戦かクーデターか、というムード沸き立つ陸軍の雰囲気を一気に沈静化し、戦争は終わったことを印象付けました。現職閣僚の自殺はほぼ唯一の例です。

ともかく、この3人をはじめとした国を思う人たちの終戦間際のぎりぎりの動きによって、「どう負けるか」という戦いでは、国としての体裁をそのまま保ちえて、日本を守ったといえます。

あれから80年も経ちますが、現代に生きる我々は依然として「彼らが守った日本」で生きている。
そして、これこそ原田眞人が現代に残した強烈なメッセージだったと思います。

 

※本記事は、2023年4月にアップされた記事を編集して再掲載しております

 

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〈ストーリー〉
太平洋戦争末期の45年7月、連合国軍にポツダム宣言受諾を要求された日本は降伏か本土決戦かに揺れ、連日連夜の閣議で議論は紛糾。結論の出ないまま広島、長崎に相次いで原子爆弾が投下される。一億玉砕論も渦巻く中、阿南惟幾陸軍大臣や鈴木貫太郎首相、そして昭和天皇は決断に苦悩する。

〈キャスト〉
オリジナル版:三船敏郎、志村喬 ほか
リメイク版:役所広司、本木雅弘、松坂桃李 ほか

〈スタッフ〉
オリジナル版監督:岡本喜八
リメイク版監督:原田眞人