映画『愚か者の身分』永田琴監督×森井輝プロデューサー インタビュー「林裕太の目が本当に強かった」
現代日本に生きる若者たちの「闇」を描いた逃亡サスペンス『愚か者の身分』が、本日10月24日からいよいよ公開となる。
原作は、西尾潤による第2回大藪春彦新人賞受賞作「愚か者の身分」(徳間文庫)。その骨太な物語を、永田琴監督がスクリーンへと引き寄せた。主演に北村匠海、共演に林裕太、綾野剛ら実力派が集い、貧しさから闇ビジネスに足を踏み入れた若者たちが、もがきながら抜け出そうとする“三日間”を駆け抜ける。
本作は第30回釜山国際映画祭コンペティション部門にも選出され、北村匠海・林裕太・綾野剛の3⼈が揃って最優秀俳優賞を受賞した注目作。逃亡劇のスリルに、現代の若者が抱える不安や葛藤が鋭く重なり、闇に呑まれかけながらも友情や未来への渇望を手放さない姿が胸を揺さぶる。
今回、本作でメガホンを取った永田琴監督と、企画の舵を握った森井輝プロデューサーに話を聞いた。
出発点、原作との出会い
Q:『幽☆遊☆白書』や『今際の国のアリス』など、これまでエンタメ色の強い作品を手がけてきたTHE SEVENが、初の劇場作品に『愚か者の身分』を選んだ理由を教えてください。
森井輝プロデューサー:
もともと自分は映画畑の人間で、ずっと映画を作ってきたんです。配信作品を手がけるようになったのは、世界に向けて自分たちのコンテンツを早く知ってもらう手段として自然に選んだだけで、映画から離れるつもりはまったくありませんでした。『愚か者の身分』のような“貧困”をテーマにした物語は、実は世界中どこにでもある話です。むしろ日本の人々の方がその現実をあまり理解していないのでは、という問題意識もありました。だからこそ、THE SEVENとしてこのテーマを映画で描いてみようという思いに至ったんです。
Q:原作を最初に読んで、「これだ!」という感覚はありましたか?
森井プロデューサー:
最初に永田監督から、「若者の貧困を描きたい」という話があって、あわせてこの原作を紹介されたんです。読んでみたら本当に面白くて、半日くらいで一気に読み切ってしまいました。読み終わった瞬間に「これ、すぐにやりましょう!」と返事をしました。
Q:永田監督の知り合いに起きたことがきっかけで、闇ビジネスの世界に興味を持たれたと伺いました。
永田琴監督:
「なんでこういうことしちゃうんだろうな」と思ったのが最初でした。私の時代って、犯罪というものがもう少し遠くにあった気がするんです。でも今はすごく近い。近いというか、本人たちはあまり悪いことをしている感覚もないというか……そういうことを感じました。
当時は、まだ“闇バイト”という言葉が出てくる前で、どちらかというとオレオレ詐欺がニュースの中心だったんですけど、中学生が“受け子”をやっているというニュースを見て、「どういう気持ちでそういう方向に行っちゃうんだろう」と思っていました。少年院に入った子のルポなんかも読んでみたら、「褒めてもらって焼肉をご馳走してもらえるのが嬉しかった」みたいなことが書いてあって。そういう記事を読むうちに、「ああ、こういう子たちは犯罪を犯罪と思ってないんだな」「一番欲しいものは何なんだろう」と考えるようになったんです。
それから、そういう本をいろいろ読むようになって。最初は別に映画のネタにしようと思っていたわけじゃなかったんですけど、半グレの話が世の中に蔓延してきたり、“トー横キッズ”のニュースを見たりするうちに、「貧困が原因でそういうところに導かれてしまう子が多いんだな」と感じるようになって。今まで社会問題をテーマにしたものを撮ってこなかったけど、もしかしたらこういうテーマでも映画が撮れるかもしれないな、と思い始めたんです。そこから小説も読むようになって、そういう題材を扱っている作品を探していくうちに、『愚か者の身分』に出会いました。
Q:そして実際に小説を読んでみて、映像化したいと思った決め手は何だったんでしょうか。
永田監督:
森井さんも言ってましたが、やっぱりすごく読みやすかったんですよね。オリジナルで考えたとて、到底思いつかないような、ちょっと乱暴なシーンだったりとか、転がるような展開だったり、クライムサスペンス性とか、ちょっとアイテム的に映画にしたときに引っ張ってくれる要素がすごくあるなと思いました。こういう話しをジトーっと描くと、なんか説教臭くなるじゃないですか。そうなったら観てくれる人は元々、こういう題材に関心を持ってくれている人しか観ないだろうなっていうのがあったんで、間口を広げるためにやっぱり何かエンターテインメントとして成り立つ原作を探したいというのが理由としてあって、それが『愚か者の身分』には全部あると思ったんです。
森井プロデューサー:
“若者の貧困”というキーワードがまずあって、そこから各々が思い描くものがあるじゃないですか。原作を読んだ時に僕なりに表現したいものがその中に入っていたので、これは全然映画で出来るなと思いました。
Q:これまでの永田監督のフィルモグラフィーから見ると、本作はだいぶ毛色が変わると思うんですけど、プロデューサーとしてそこら辺の心配はありませんでしたか?
森井プロデューサー:
えーっと、心配でした(笑)。でも、心配ですと面と向かって言える人だし、そもそも付き合いがあったので。だから、この関係性だからこそできたかなというか。これが初対面で全く分からない人だとちょっと考えたかもしれないですね。
Q:ズバズバ言い合える仲だから成立した?
森井プロデューサー:
そうそう。お互いに若い頃から知っているんで、人となりはすごい分かる。僕は『MOZU』とか、この手のものをずっとやってきたという自負がありますが、そういうのをやってきた人間にはない切り口。正直、僕はこの映画で新たな武器を手に入れたんじゃないかと思っています。初めて監督に言うけど。だから、僕らがこういう作品を作ろうと思うとこいう風になると想像出来るけど、、(永田)琴さんが撮るとまた違ったものが出来るだろうという興味がすごくあったんです。
Q:若い頃からの知り合いということですが、お互いにどういうイメージを持たれているんですか?
森井プロデューサー:
監督になられてから仕事してないのと、僕もプロデューサーになってから仕事してないので、その部分は想像。でも、人となりは信じてたので。話せば分かってくれる人。
永田監督:
同じ時期に、同じような仕事を一緒にしていて、結局同じような環境で仕事をしている。「それはおかしいよね?」という感覚が似ているというか。撮影の途中とか、「監督がこういうこと言ったって聞いたんだけど、どういうこと?」と森井さんから電話がかかってくる、「それは、こういうこと」と説明すると、「なんだ、それ聞いたら分かるわ」というような感じで。
Q:なるほど、お二人の関係性がよく伝わってきました(笑)
永田監督:
それと、森井さんって、見かけによらずすごくクリエイティブで感受性の強い人なんです。二十代前半の頃、制作車に乗りながら映画の話をしたことがあって。高校生の時に、岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』をドラマのオンエアで見て、ものすごく感動して、「日本の映像界が変わると思った」と話してくれた。後に私は岩井俊二監督の助手になるわけですが、その記憶がずっと残っていて、約30年後に一緒に映画を作ることになりましたが、やっぱりあの時の感覚は変わってなくて、気づくことがすごく繊細で、人のことも独特な視点で見ているなと思っています。
メインを5人から3人へ、物語の線を引き直す
Q:本格的にプロジェクトとして動き始めて、映像化にあたって何をどう削ぎ、何を立てるか。原作者の西尾潤さん、脚本の向井康介さんとは、どんな方針で擦り合わせましたか?
森井プロデューサー:
通常の作業だと、まず「プロット」(全体のラフ設計図)を作り、そこからシナリオに落としていきます。今回は、監督の企画意図として、原作に登場する主要人物を五人から三人に絞りたい、という方針がはっきりあった。映画は二時間ですし、「三人の男、三世代の男を描く」——そのプレゼンは腑に落ちました。その方向に向けてプロットを組み立てていった、という感覚です。
やり方自体は通常と同じで、実写化チームとして「こうしたい」という案をまとめ、原作者の先生にご確認いただき、了承を得たものを僕らが磨いていく。永田監督と西尾先生はもともと面識があり、土台の信頼関係があったのも大きい。原作にはないタクヤの章を設けることや、主要人物を三人に絞ることは、西尾先生には後から共有しました。向井さんについては、僕も永田監督も「この題材に合う」と考えていましたが、とてもお忙しい方なので、プロット期は打ち合わせに参加してもらい、実作業は社内ライターが担当。打ち合わせ→プロット作成→再打ち合わせで方向を固め、向井さんのスケジュールが空いたタイミングで、脚本への書き直しをお願いした、という進め方です。
Q:永田監督は最初から3人でいこうと思ったんですか?
永田監督:
そうですね。それは結構初めに決めていて、実は森井プロデューサーと会う前に向井さんに会っているんですけど、その時に向井さんが「原作は登場人物が多すぎてちょっと無理かな」と。なんとなくやんわり脚本を断られかけたんですけれど、「いや、3人で描こうと思っているんです!」という話をして。そしたら「3人か…、それは面白いかもしれないです」という感じで何とか切り抜け、繋いでいたんですけれど。それに関しては向井さんもすごく賛成してくれてました。
Q:映画版のプロットは、西尾先生はどんな反応でした?
永田監督:
原作には仲道という探偵が出てくるんですけれど、西尾先生は仲道に対しての思い入れがあって。実はこの後に小説の続編を書かれたんですが、それはもともと仲道の話になると聞いていたんです。なので、「ごめんなさい、映画で仲道いなくなります!」という話はしました(笑)。「えー!」ってなってたんですけど、「でも、いいよ。全然それは気にしないです。映画は映画で好きにやってくれていいです」って言ってもらえてたので。ただ、その仲道を気に入ってたので、そこはごめんなさいと言いました。
「林裕太の目が本当に強かった」
Q:映画を見るとキャスティングが本当に最高で。どの俳優さんもめちゃくちゃハマっていたと思います。北村さん、綾野さんは、これまでのキャリアから皆さん周知の通りだと思うんですけど、キーになるマモル役の林裕太さんがちょっとスゴかったです。あどけなさ、危うさを見事に表現されていたと思います。どういう経緯でキャスティングされたんでしょうか。
永田監督:
オーディションで決めたんですけど、そもそも選ばれし人たちが集められたオーディションだったんですよ。
森井プロデューサー:
広くこういう役を募集します!ということじゃなくて、僕らで話して、有力な子たちに来てもらいつつ、面談式のオーディションにしました。
Q:オーディション時の印象はどうでしたか?
永田監督:
タクヤがパンを投げて食べるシーンをやってもらったんです。貪り方や食いつき、勢いがちゃんとある。普段は礼儀正しい青年なのに、感情を出すべき瞬間にぱっと出せるんですよ。いちばん強く感じたのは“目”。「人を信用しないぞ」という温度が、芝居にきちんと立ち上がってくる。引っ張れば、もっと上に行けると思いました。ビジュアルもいい。北村さんとの違いもはっきり出るし、切れ長のきれいな目はタクヤの顔つきとは少し違うタイプで、スクリーン映えするだろうなと感じました。
森井プロデューサー:
入ってきた瞬間に「この子だ」と思いました。決め手は、「なんでこうしたの?」と聞いたときの答えが、脚本の芯を一番突いていたこと。理解度が他の子とは違った。分かっていて、きちんと想像できている。もちろん若いし、もっと場数を踏んだ子も来ていたけれど、お芝居の百戦錬磨ではなくても、それを差し引いてなお、この映画のためには彼を選ぶべきだと感じました。見守りたくなるような子で、物語を動かす“キー”になれる存在でなくてはいけない。だからこそ、入ってきた瞬間にそれが当てはまったんだと思います。
Q:いざ、実際このお芝居をしてみて、狙い通りだった?
森井プロデューサー:
もちろん、その“狙い”を引き出すのに監督はそれなりに苦労しています。スクリーンに乗るレベルまで持っていくには、朝現場に入る前から声をかけて心情を共有し、テストを重ねる必要がある。監督は時間をかけて関係を作り、少しずつ導いていく作業をしていました。
Q:北村さん綾野さんも素晴らしい演技でしたが、監督は普段演出をお任せするタイプですか?
永田監督:
人によりますね。綾野さんはそもそも演技プランがしっかりある方で、「ここでこうしたい」「この台詞を足してはどうか」など具体的に提案される。その場合はまずこちらがよく聞き、何を狙っているのかを理解する。もし行き過ぎていると感じたら「ここは要らない」とはっきり伝えますし、プランが作品の意図からズレていなければそのままでいいので、余計なことは言いません。逆に足りないと感じる部分は話し合って補います。何度やっても狙いに届かないときは、私が実際にやって見せることもある。本当に相手に合わせて変える、というやり方ですね。
Q:しかし本作のキャスティングは見事にハマっているなと感じました。よく揃えられましたね。
森井プロデューサー:
なんせ急にやることにしたものだからねえ(笑)。
永田監督:
(プレスシートの北村を指さして)この真ん中の方のスケジュールに合わせてね(笑)。
森井プロデューサー:
剛君のスケジュールがどうなってるのかは知っていたんですが、匠海は事務所さんからは2024年は空いていないですって聞いていたんです。でも、ワンチャンないのかと(笑)。撮影自体は1か月ちょっと。どこかで1か月ひねり出せないかと打診したら、4月ごろに「8月だけ何とかなるかもしれません」と返ってきて。だから社内や周囲はみんな、僕が「準備は急ぐけど撮影は秋くらいかな」と言っていたのに、「え、夏ですか!?」みたいな(笑)。
永田監督:
急に「8月に撮るよ」と言われて。現場はみんな「ええー!?」って感じでした(笑)。
Q:でもスケジュールが空いたからと言って、さあ撮りましょうと言えるほど簡単ではないですよね?
森井プロデューサー:
そこは、さっきの話のとおりで。匠海も剛くんも、知らない仲じゃない。森井が言うなら、まずは脚本を読んでみよう——という温度は二人ともあったはずです。匠海は忙しい中、三日後には「本、面白かったです。やりたいです」と返事をくれた。剛くんは、その日の夜に脚本を渡して、翌日の夕方に本人から電話があって、いくつか質問に答えると、「分かりました。やります」と。そんな流れでした。
Q:スピード感がすごいですね。監督的にもベストキャスティングでしたか?
永田監督:
もう、ベストキャスティングですよね。こんなメジャーなお二人を——と心のどこかで小さく願ってはいたんですが、口に出すのはおこがましい気もしていて。そこに「この二人、決まりますよ」と言われて。
Q:現場での三人はどんな雰囲気でした? 兄弟のような空気も伝わってきました。
森井プロデューサー:
匠海と剛くんの関係性は想像がついていましたが、匠海と裕太の並びが良かった。二人で話しているのを、遠くでニヤニヤしながら見てました(笑)。
永田監督:
二人ともゲームが好きで、待ち時間に一緒にやっていたり。できれば撮影前から一緒に過ごす時間を作りたかったけれど、匠海くんがとても忙しくて、言い出しづらい空気のままインしたんです。たぶん本人も責任を感じてくれたのだと思います。兄貴分として「自分が引っ張らなきゃ」と、ご飯に連れて行ってくれたり。こちらが準備できなかった“同じ時間を共有する”ことを、率先してやってくれて、本当にありがたかったですね。
Q:今回は脇も最高でした。戸籍を売ってしまう江川役の矢本悠馬さん、どん底で生きてる感じに圧倒されました。
森井プロデューサー
矢本さん、最高ですよね。原作ではもっと大きな立ち位置じゃないですか。だから、その片鱗は残したかった。タクヤにとって「捨て置けない人」だと伝わるように、観客が興味を持てる方がいいだろうと考えて、矢本さんにお願いしました。
Q:個人的にいちばん好きだったのは、梶谷の恋人・由衣夏の木南晴夏さん。辛い出来事が続く中で、梶谷と由衣夏の会話が心を癒やしてくれる。明るくて器が大きい。本当に“良い女”すぎる(笑)。
森井プロデューサー:
最高でしょ(笑)。木南さんは監督のこだわりで。関西弁がリアルなんです。
永田監督:
「最近、関西弁しゃべってないから、うまくいかないかも」と本人は言ってたけどね(笑)。
Q:闇ビジネスを仕切るメディアグループの三人も、観ていて本気でムカつくほどでした(笑)。
森井プロデューサー:
彼らも最高でしょ!?
永田監督:
匠海くんに「佐藤(ジョージの部下)のこと、全然好きになれなさそうですが、どうしたら」と聞かれて(笑)。それでいい、と伝えました。シナリオ上は一緒にいるけど仲間ではない。嫌いでいい。ただ、マモルを守らなきゃいけないし、上司だから従うだけ。嫌いな気持ちは消さなくていい、と。
森井プロデューサー:
演じた嶺くんが一番困ってて。本人はめっちゃ良い人なんですよ。監督と僕との面談でも「この役、自分で大丈夫でしょうか?」って(笑)。いい人がこぼれ出ないように演じるのが大変なんだよね。
永田監督:
関西弁も、めちゃくちゃ練習してもらいました。
森井プロデューサー:
“いい感じのエセさ”なんだよね。ちょうど良くムカつくエセ感にこだわってる(笑)。
永田監督:
私も関西の人間だけど、関西人って本当にくどいから(笑)。いちいち名前に“ちゃん”付けで呼んだりする。その感じを出すために台詞は全部アレンジしました。嫌な空気が出たと思う。ほんとこの映画、メインの三人だけじゃない。みんなが連鎖して、三人がより映えた。
匂いまで写す歌舞伎町、そして釜山の熱
Q:映画のもう一人の主役とも言える歌舞伎町なんですけど、浄化作戦以前と現在では、ちょっと姿が変わり過ぎてる。潜在的に危ない街というのは多分変わらないと思うんですけど。
永田監督:
私も浄化前の歌舞伎町を良く知っていて、初めて東京来た時の1本目の作品が歌舞伎町を舞台にした作品で、一人でロケハンに行かされて、東京を知らないのに歌舞伎町行って、それで何か風俗のアポイントを取って取材しなきゃいけなかったんですけど、何かアルバイトと間違えられて泣きながら帰るという洗礼を受けたんですけど、そういうのを思い出すと、あの時「この道とか何か危険!」みたいな通りだったのに、今は普通に若いカップルが歩いてたりとか、外国人が観光でいたりとか。当時はロケハンをしていると怖い人に追いかけられたこともあったり(私)だから表面的には安全になっちゃってるから、トー横みたいのが出てきた。
Q:歌舞伎町をどういう風に撮りたいと思いましたか?
永田監督:
私は彼らにとってそこがオアシスという風に撮りたかったというのはすごくはっきりしてますね。そこに行けば、自分の知っているものがあって、そこに行けば誰かに会えてみたいな。それこそトー横の子たちがなぜ来るのかみたいな、そんな気持ちがあの二人の中に、歌舞伎町に対する思いとして入り込みたかった。初めて歌舞伎町のシーンが出てくるところでは、マモルがもう得意気になっている感じで、街を闊歩してほしいと言って、もうタクヤを超えて「俺の方がこの街知ってるんだぜ」みたいな感じで言ってたんですけど。
森井プロデューサー:
匠海がこの前のイベントで絶妙なこと言ってましたが、「ある人には天国で、あの人には地獄」という。僕らも田舎から出てきて、学生の時に東京出身の連中が歌舞伎町で飲もうぜみたいなことを言って。自分もこの東京の歌舞伎町で飲める世界に来たんだみたいに思っているところをバクっと持って行かれるわけじゃないですか。もちろん普通の飲食店もちゃんとやられているし、全部がそんな店じゃないんだけど、何かそういう危うさもまだ全然あるかなと。
Q:実際に歌舞伎町で撮影をやられたと思うんですけれども、普通にやれるんですか?
森井プロデューサー:
普通では無理です(笑)。映像で映ってる何百人とかみんなエキストラさんですし、他の場所でこういうふうに歩いて、こういうお店を行ってっていうのを実際のストロークで練習してから、時間になって移動して、ギリギリまで現場近くの地下のお店で2人を待機させて、現地でまたテストを本人抜きでやって、すぐ本番みたいな。
永田監督:
エキストラの方は、実際にそこにいる人として待機してもらって、撮影している人たちがいるんだという感じじゃなくて、そこにいる人たちとしてやってもらった。
Q:もちろん撮影許可はあるけど、ある意味ゲリラ撮影みたいな(笑)
森井プロデューサー:
気づかれないようにしないと来ちゃうんでね。トー横で座り込んでいる人たちとか、全然どいてもくれないし、話しかけても返事もしてくれない。でも、実際、映像に映ってもいいですねということでやるしかなくて。エキストラで壁を作って見えないようにしたり。
Q:先日の釜山映画祭でメインキャストの3人が揃って賞を取られるという、そんなことがあるんだなと思いましたが、いかがでしたか?
永田監督:
私たちも思いました(笑)。どういうこと!?って。
森井プロデューサー:
コンペティション部門を新設して、初代の最優秀男性俳優が本来なら1人なんでしょうけど、この作品に上げるんだったら3人にあげないとって思ってくれたんだろうなということがわかるので、嬉しかったですね。
Q:現地で映画を見られた方の反応的にはどうだったんですか?
森井プロデューサー:
プレミア上映をしたんですけど、やっぱり熱がすごくて、韓国の若い方が多かったんですけれども、質疑応答でもけっこう手を挙げて当てるとすごい熱量で来てくれて。だからそこは国が違えど伝わっている、届いてはいるんだなと思いました。
Q:最後に、これから映画公開するのに気が早い話しなんですけれども、もうすぐ小説の続編が出るじゃないですか。そんな簡単なことではないことは重々承知してるんですが、映像化すごく期待してます…。
永田監督:
映画をベースに続きを書いた感じなんですよね。
森井プロデューサー:
西尾先生に完成した映画を見てもらったら「すっごい面白かった!」と言って頂けたのでね。
Q:この映画にはまった1人として何卒ご検討頂けますと…笑
森井プロデューサー:
そのためにも友達100人に広めてください!(笑)
永田監督:
なんとか良い感想もらって頑張って伸びていってほしいですね。
『愚か者の身分』
2025年10月24日(金) 全国公開
【ストーリー】
SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を日々行うタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)。彼らは劣悪な環境で育ち、気が付けば闇バイトを行う組織の手先になっていた。闇ビジネスに手を染めているとはいえ、時にはバカ騒ぎもする二人は、ごく普通の若者であり、いつも一緒だった。タクヤは、闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷(綾野剛)の手を借り、マモルと共にこの世界から抜け出そうとするが──。
【キャスト】
北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、綾野 剛
【スタッフ】
プロデューサー:森井輝
監督:永田琴
脚本:向井康介
原作:西尾 潤「愚か者の身分」(徳間文庫)
製作:映画「愚か者の身分」製作委員会
製作幹事:THE SEVEN
配給:THE SEVEN、ショウゲート
(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
公式サイト:orokamono-movie.jp
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