MOVIE MARBIE

映画『盤上の向日葵』のジャパンプレミアが、10月16日、東京・丸の内ピカデリーで開催された。レッドカーペットには500本の向日葵が敷かれ、坂口健太郎、渡辺謙、佐々木蔵之介、土屋太鳳、高杉真宙、音尾琢真、小日向文世、熊澤尚人監督が登壇した。

坂口は冒頭、「今日は華やかな雰囲気でジャパンプレミアが出来て光栄です。重いテーマの物語ではありますが、登場人物たちの生き様が皆さんの心に残ってくれたらいいなと思います」と挨拶。渡辺も「久々に血生臭い映画になりました」と短く温度を上げた。

原作は柚月裕子。山中の白骨遺体と“現存7組”の将棋駒が導火線となり、天才棋士・上条桂介（坂口）と、賭け将棋の真剣師・東明重慶（渡辺）へと物語がつながっていく。坂口は桂介を「能動的にアクションを起こすというよりも、巻き込まれていく人間」と捉え、「（撮影では）その空間の中で役として生きることを大事にした。音尾さんとのシーンでは“空っぽになる感覚”があって、『もういいんじゃない？』と肩に手を置いてあげたくなる瞬間もあった」と語る。

対する渡辺は東明を「一貫性のない事この上ない。こいつ本当のこと言っているのか？と思う。だから僕の役のことは“信用しないでください”。でも演じていて楽しかった」と位置づける。そのうえで、初共演の坂口について「オープンマインドで、現場・作品・スタッフが好き。僕も一緒に現場に行きたくなる。そういう感覚を持った“稀有な俳優”」と評し、坂口も「（渡辺は）とても軽やかな方。飄々としている瞬間もあれば、どっしりといてくれる。いい意味で印象が更新された」と応じた。

事件を追う刑事・石破剛志役の佐々木は、現場の熱量をこう共有する。「“昭和の刑事で足で稼ぐ”という演出で、閉め切った刑事部屋にスモークを焚いて……“もっと汗をかいて”と言われるくらい暑い現場でした」。相棒の若手巡査・佐野直也役の高杉は「（諏訪湖ロケの）1週間ほど、毎晩蔵之介さんが食事に連れて行ってくれました」と笑顔で返した。

映画オリジナルの宮田奈津子役・土屋は、座長の所作を具体に拾う。「カメラマンさんとボケてツッコみ合ったり、暑いのにずっと元気にコミュニケーションされていた。桂介の眼差しを向けられたとき“助けてあげたくなる”感覚がある」。坂口が「（スタッフの）段取りや打ち合わせを聞くのが好き」と明かす場面もあった。

親子の対峙も、現場の温度がそのまま宿っている。父・庸一役の音尾は「真夏の炎天下でぶつかり合いましたが、坂口くんは合間ごとに『大丈夫ですか？』と気遣ってくれる。大好きになりました」と述懐。坂口は「馬乗りで首を絞める場面、暑さで汗が止まらなくて……申し訳なかった」と苦笑し、音尾が「（坂口くんの）汗は“しょっぱい”」と照れ混じりにオチをつけると、渡辺が「そのシーンで笑われたら困る。ものすごくいいシーン」とツッコむ一幕も。

この日、先月の釜山国際映画祭ワールドプレミアの映像も流された。坂口は「4,500人の観客の方々と一緒に自分の映画を観る経験ははじめてで、ちょっと恥ずかしかった」と率直に述べ、渡辺も「どういうリアクションになるのかドキドキだったけれど、壮観でした」と続けた。熊澤監督は「上映後にスタンディングオベーション。あの熱には驚いた」と回想している。

終盤は「人生を賭けて熱くなれるもの」にちなむ“推し”の披露へ。音尾「つりざお」、高杉「移動時間（マイカー）」、佐々木「晩酌」、土屋「姉と弟」、小日向「家族」、熊澤監督「映画」。坂口は「お米。年々もっと白米が好きに。おにぎりの白米でもいける」と語り、渡辺は「阪神タイガース。実は今日も18時から試合が……」と笑わせた。

最後に渡辺は「結構マジな映画で、ここまで命懸けで生き切ろうとする男がいるのかと。そんなものが沢山溢れてきます。目を凝らして観てやってください」、坂口は「きついシーンも目をそむけたくなる瞬間もあるかもしれませんが、僕らの生き様を見届けてください」と締めた。

『愚か者の身分』
2025年10月31日(金) 全国公開

【ストーリー】
山中で謎の白骨死体が発見される。事件解明の手掛かりは、遺体とともに発見されたこの世に７組しか現存しない希少な将棋駒。容 疑をかけられたのは、突如将棋界に現れ、一躍時の人となっていた天才棋士〈上条桂介〉だった。さらに捜査の過程で、桂介の過去を知る重要人物として、賭け将棋で裏社会に生きた男〈東明重慶〉の存在が浮かび上がる。桂介と東明のあいだに何があったのか？謎に包まれた桂介の生い立ちが明らかになっていく。それは、想像を絶する過酷なものだった……。

【キャスト】
坂口健太郎　渡辺謙　佐々木蔵之介　土屋太鳳　高杉真宙　音尾琢真　
柄本明／渡辺いっけい　尾上右近　木村多江　小日向文世 ほか

【スタッフ】
監督・脚本：熊澤尚人
原作：柚月裕子「盤上の向日葵」（中央公論新社）
音楽：富貴晴美
主題歌：サザンオールスターズ「暮れゆく街のふたり」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
製作：「盤上の向日葵」製作委員会
配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント／松竹
©2025映画「盤上の向日葵」製作委員会

公式HP：https://movies.shochiku.co.jp/banjyo-movie/
公式X/Instagram：@banjyo_movie