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映画『宝島』全校上映会に大友啓史監督と原作者・真藤順丈登壇、1600人の生徒と“未来”を語る!真藤「『宝島』は世の中を変えるつもりで書きました」大友「諦めずに続ければ誰かが光をあててくれる」

9月3日、文京シビックホールにて映画『宝島』(9月19日公開)の全校上映会とトークイベントが開催された。高輪学園創立140周年記念行事の一環として行われたもので、会場には中学1年から高校3年までの生徒と教職員、あわせて約1600人が集まった。上映後のステージには監督の大友啓史と原作者の真藤順丈、進行役のジョン・カビラが登壇し、作品をめぐる思いや未来へのメッセージを語った。

映画『宝島』は、直木賞を受賞した真藤の同名小説を大友監督が映画化したもの。1950年代から70年代のアメリカ統治下の沖縄を舞台に、自由を求めて駆け抜けた若者たちの姿を描く。主演は妻夫木聡、共演には広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太らが名を連ねる。製作費25億円、延べ5000人のエキストラを動員、191分のスケールで沖縄の歴史を描き切った大作となっている。

司会を務めたジョン・カビラは、まず自らの体験を交えて会場に語りかけた。沖縄で「コザ暴動」が起きた当時を覚えているとし、「父は『沖縄はいつか爆発すると思っていた』と言っていました。母も『起きてもおかしくない』と語っていた。そうした両親の言葉を思い出しながら映画を観て、涙が出ました」と明かした。そして「新しい世代の皆さんにも、この映画を心に刻んでほしい」と呼びかけた。

続いて大友監督があいさつ。「これだけ大勢の観客と一度に向き合うのは初めてです。本当に皆さんの感想が楽しみです。そして高輪学園140周年、おめでとうございます」と言葉を述べた。真藤も「僕は皆さんの30年先輩で、かつて同じ制服を着てここに通っていました。映画を二度観ましたが、本当にすごいものを見たと感じました」と後輩たちに語りかけた。

上映後には主演の妻夫木聡からのビデオメッセージも流れた。「この映画を通して僕は、過去を描くことは未来への問いかけだと思いました。過去は変えられないけど、未来は変えることができる。私たちは先人たちの思いと共に今を生きています。だから今ある日常は当たり前ではありません。何を思い、どう生きるのか。そして未来に何を託していくのか。この映画を通して、それを感じてもらえたら嬉しいです」と真摯に語りかけ、生徒たちは静かに聞き入った。

トークでは、作品の制作背景についても語られた。大友監督は「原作を読んだとき、一気に引き込まれました。以前『ちゅらさん』で復帰後の沖縄を撮ったのですが、実は復帰前の沖縄も描いてみたいと思っていた。だから原作の熱量に圧倒されました。作り手としてはその熱量に負けない映画を作ろうと思った」と振り返る。真藤は「感無量でした」と映画を観たときの思いを述べた。「上下巻にわたる長編で、基地問題を正面から扱った題材をどう映像化するのかと思っていたんですが、コザ暴動も飛行機事故も逃げずに描ききっていた。本当にすごいことです」としみじみ語った。

大友監督も「僕も含め、メインキャストは沖縄出身ではありません。だからこそ現地の声に耳を傾け、嘘をつかないようにすることを大切にしました。僕らにできる精いっぱいを尽くしました」と明かした。真藤も「僕にも沖縄のルーツはありません。だからこそ小説では“戦果アギヤー”という義賊に自分を仮託して物語を紡ぎました。ただ戦後80年という今、もしグスクやヤマコが生きていたら80代や90代です。戦争を語り継ぐのを当事者に頼りすぎていた部分もあったと思う。これからは私たちの世代が、それぞれの方法で伝えていかなくてはならない。僕の場合は小説で、日本がどうなっているのか、何を置き去りにしてきたのかを問いかけていきたい」と決意を語った。

質疑応答では、あちこちから手が挙がり、勢いのある反応に大友監督と真藤も「すごいね」と顔を見合わせて笑った。最初の質問は「沖縄とはどんな場所か」というもの。真藤は「青春と革命の島、というのが一番しっくりきます」と答えた。「この物語はサンフランシスコ講和条約から返還までの20年間を描いています。当時の沖縄には、いまの日本人が忘れてしまったような熱気や希望が凝縮されていた。だからこそ、戦後日本の姿を考えるうえで欠かせない場所だと思います」と補足すると、会場は静かに聞き入っていた。

続いては、映画のシーンに関する感想。「コザ暴動のシーンでは本当に車をひっくり返していて衝撃でした」「教室で習うだけでは分からない沖縄の歴史を、俳優の演技や監督の演出で体感できました」といった声が相次いだ。大友監督は一人ひとりの発言にうなずきながら耳を傾け、自然と笑みがこぼれていた。また、生徒から「高輪学園でどんな学生生活を送っていたのか」と問われた真藤は「正直に言えばボンクラでした。漫画や小説ばかり読んで夜更かしをして、授業中はよく眠っていました」と笑いを誘った。その一方で「先生が『君には表現したいものがある』と声をかけてくれたことが進路を考えるきっかけになった」と、母校での体験を振り返った。

最後のあいさつでは、登壇者がそれぞれ改めて思いを語った。まずマイクを握った真藤は、後輩たちに向けて「先ほどの感想で“教科書では学べないことがあった”という声がありましたが、本当にその通りだと思います。歴史の授業は縄文・弥生から始まって、明治維新までで終わってしまうことが多い。けれど現代史こそが、いまの日本に直結している。沖縄を描くことは過去の話ではなく、現在の私たちの問題なんです」続けて「『宝島』は世の中を変えるつもりで書きました。けれど実際に変えていくのは皆さんの世代です。だから少し先輩風を吹かせて言わせてもらうと、自分の大切な“宝”を探すように人生を歩んでほしい。大きなことを成し遂げる必要はなく、自分が大切にしたいものを見つけることが一番の糧になると思います」と締めくくった。

それを受けて大友監督は「今日は本当にありがとうございました」と切り出し、映画完成までの道のりを振り返った。「『宝島』のような規模の作品を日本で実現するのは容易ではありません。しかも二度のコロナ禍で撮影が止まり、普通なら立ち上がることはできなかったでしょう。でも“この物語は今こそ伝えなければならない”という思いがあり、真藤さんも含め、誰も諦めなかった。俳優たちはスケジュールを空けて待ち、スタッフも戻ってきてくれた。その積み重ねで完成に至ったんです。今の日本映画界では奇跡的に成立した作品だと思います」さらに「物語に登場する若者たちは、苦しい時代を諦めずに生き抜いた。その姿に背中を押されるように、私たちも最後までしがみついて映画を撮り切りました」と言葉を重ね、「戦後80年という節目に公開できるのも、何かに導かれたように感じます。諦めずに続けていれば、神様の思いがけない支えや光が差し込むこともある。皆さんの人生でもそういう瞬間がきっとあるはずです」と呼びかけた。

この日の上映会とトークイベントは、作品を通して「今をどう生きるか」という問いを投げかける時間となった。大友監督、真藤順丈、そして妻夫木聡の言葉は、未来を担う生徒たちに強い印象を残したに違いない。映画『宝島』は9月19日(金)より全国公開される。

『宝島』
2025年 9月19日(金)より全国公開

【ストーリー】
1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える‟戦果アギヤー“と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の三人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは「予定外の戦果」を手に入れ、突然消息を絶つ…。残された3人はやがて、憧れのオンの失踪の謎を追いながらも、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがて警察、ヤクザ、小学校の先生になり、それぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。そして、オンが基地から持ち出した”何か“を追い、米軍も動き出すー。消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とはーー。

出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
監督:大友啓史
原作:真藤順丈「宝島」(講談社文庫)
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp
オフィシャルX:https://x.com/takarajimamovie
オフィシャルInstagram:https://www.instagram.com/takarajimamovie/