MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

<『バレリーナ:The World of John Wick』公開記念特集> その女たち、凶暴につき。アナ・デ・アルマスと戦うヒロインの系譜

映画『バレリーナ:The World of John Wick』。この作品で主演を務めるアナ・デ・アルマスは、単に“新しいヒロイン”ではない。彼女はこれまで映画史が築いてきた「戦う女たち」の系譜を継承し、その先を切り拓こうとする存在である。ここでは、時代ごとにアクションヒロインの歴史を振り返り、最後にアナ・デ・アルマスがいかにして「美と暴力の理想形」となりうるのかを探っていきたい。

1970〜80年代:萌芽と突破口
この時代、アクション映画において女性は“守られる存在”に留まることが多かった。だが、世界と日本でほぼ同時期に、その枠を破る存在が現れる。ハリウッドではシガニー・ウィーバーがリプリーを演じ、そして日本では志穂美悦子がスクリーンを駆け抜けた。ここから「戦う女たち」の歴史は動き出す。

シガニー・ウィーバー『エイリアン』
1979年の『エイリアン』で、リプリーはそれまでの常識を覆す存在となった。怪物との死闘を生き延びる最後の一人が女性だったこと、そして彼女が冷静さと決断力で勝ち残ったことに観客は驚いた。続編『エイリアン2』では少女ニュートを守る母性をも兼ね備え、強さと優しさを両立するヒロイン像を確立。リプリーは「女性も戦える」というだけでなく、「女性だからこそ戦う」という新しい必然を体現した。

志穂美悦子『女必殺拳』
一方、日本のスクリーンで観客を圧倒したのが志穂美悦子だった。陸上競技で培った身体能力を武器に、千葉真一率いるジャパン・アクション・クラブ(JAC)で鍛え上げられた彼女は、1973年『女必殺拳』で鮮烈なデビュー。華奢な体から繰り出されるハイキックは「ハイキックの女王」と呼ばれ、当時の日本映画界における女性像を大きく塗り替えた。

志穂美が特別だったのは、単なるアイドル的存在ではなく、自らの肉体で危険なアクションに挑み続けたことだ。瓦を蹴り割り、複数の男優を相手に素手で立ち回る姿は、東映アクション映画の真骨頂であり、ブルース・リー亡き後の格闘アクションブームを日本で支える柱でもあった。志穂美悦子の挑戦は、のちの清野菜名や山本千尋といった“実際に動ける女優たち”へと確かに繋がっていく。

 

1990年代:母性と戦闘力の融合
90年代は「女性=守られる存在」という固定観念を大きく転換した時代。母性や女性らしさを保持しながら、同時に兵士や戦士として圧倒的な強さを発揮するヒロインが誕生した。

リンダ・ハミルトン『ターミネーター2』
『ターミネーター』(1984)でのサラ・コナーは、未来を守る子を宿す“普通の女性”にすぎなかった。だが続編『ターミネーター2』(1991)で彼女はまるで別人となって現れる。収監中に鍛え上げた肉体、冷徹な眼差し、銃を構える姿は、観客の記憶に刻まれた。リンダ・ハミルトンが体現したのは「未来を守るために母が兵士になる」という衝撃的な変貌だった。この姿は、単に肉体的に強い女性ではなく、「母としての使命感と戦闘力が共存する」新しいヒロイン像を提示するものだった。サラ・コナーは後のアクション映画における女性キャラクターの方向性を決定づけた。

ミシェル・ヨー『ポリス・ストーリー3』
香港アクションの黄金期に登場したミシェル・ヨーは、スタントを自らこなすことで世界に衝撃を与えた。『ポリス・ストーリー3』では、ジャッキー・チェンと互角に渡り合い、バイクスタントから肉弾戦まで鮮やかにこなす。ヨーの魅力は、その美しさやカリスマ性に加えて、「本当に戦える」説得力にあった。彼女は、アジアから世界へと広がるアクション女優の道を切り拓いた存在といえる。

 

2000年代:スタイリッシュなカリスマ
2000年代に入ると、アクションヒロインは強さに加えて「魅せる」ことが求められた。カリスマ性とビジュアル、そしてポップカルチャーとの親和性が重要視され、ゲームやコミックの世界観とも結びつきながら新しいヒロイン像が花開いた。

ミラ・ジョヴォヴィッチ『バイオハザード』
2002年に始まった『バイオハザード』シリーズは、ゲーム的な映像美と映画的アクションを融合させた新時代の象徴だった。ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスは、銃撃と格闘を軽やかに繋げる戦闘スタイルで、強さと美しさを兼ね備えたヒロイン像を体現。ポップカルチャーの最前線に女性アクションスターが立つことを証明した。

アンジェリーナ・ジョリー『トゥームレイダー』『Mr.&Mrs.スミス』
『トゥームレイダー』でララ・クロフトを演じたアンジェリーナ・ジョリーは、アクションヒロインを「スターそのもの」と同義の存在にまで押し上げた。さらに『Mr.&Mrs.スミス』ではコメディ的要素も加え、夫婦ゲンカすら銃撃戦に変える大胆さを見せた。彼女は単なる“戦う女優”ではなく、アクション映画の代名詞となったスターであり、2000年代を象徴する存在であった。

 

2010年代:人間味と多様性
この時代、アクションヒロインは単に強さだけではなく、感情や脆さを抱えながら戦う存在へと進化した。痛みや迷いを背負い、観客に最もリアルな共感を与えるヒーロー像が登場した。

シャーリーズ・セロン『アトミック・ブロンド』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
『アトミック・ブロンド』での死闘シーンは、観客が“痛み”を感じるほどリアルなアクションだった。さらに『マッドマックス』のフュリオサは、トム・ハーディを凌ぐ存在感を放ち、映画全体を支配した。セロンは「女性がアクション映画の主役になりうる」ことを決定づけた。

スカーレット・ヨハンソン『アベンジャーズ』『ブラック・ウィドウ』
MCUのブラック・ウィドウは、超能力を持たないからこそ観客が共感できる存在だった。人間的な脆さを抱えながら戦う姿は、超人揃いのアベンジャーズの中で最も身近でリアルなヒーロー像だった。

ガル・ガドット『ワンダーウーマン』
2017年の『ワンダーウーマン』で主演したガル・ガドットは、アクションヒロイン像を神話的スケールにまで押し上げた。しかも彼女はイスラエル国防軍の兵役経験者でもあり、スクリーンで見せる動きには兵士としてのリアルな訓練の裏付けがある。その戦闘シーンの説得力は、この経歴によってさらに高められている。

クロエ・グレース・モレッツ『キック・アス』
12歳の少女が残虐な戦闘を繰り広げるヒットガールは、観客に衝撃を与えた。子どもですら戦士となりうるという発想は、アクション映画の常識を覆した。

 

2010年代末:日本からの挑戦
こうした潮流は日本にも波及している。

土屋太鳳『今際の国のアリス』『るろうに剣心』
Netflixの世界的大ヒット作『今際の国のアリス』で極限サバイバルに挑む姿を見せ、国際的にその存在を知らしめた。また邦画大作『るろうに剣心』でも、身体能力の高さと表現力を兼ね備え、日本発アクションヒロインの可能性を広く示した。

清野菜名『キングダム』『東京無国籍少女』『TOKYO TRIBE』
『TOKYO TRIBE』で早くから身体性を活かした役柄に挑戦し、その後『東京無国籍少女』ではラスト15分にわたって銃撃・肉弾戦・ナイフアクションを畳みかける濃密な戦闘を演じ切った。スタントに頼らぬ苛烈なアクションは、彼女を現代邦画における“本当に動ける女優”へと押し上げた。さらに『キングダム』では大作映画のスケールの中で、華やかな剣戟アクションを披露。インディーズからメジャー作品まで幅広い舞台で動けることを証明し、名実ともに日本を代表するアクション女優として地位を固めつつある。

さらに、武田梨奈や山本千尋といった武道を磨いてきた実力派たちも活躍。そして邦画アクションの新たな象徴となったのが インディー発の『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ髙石あかりと伊澤彩織 である。口コミで熱狂的な支持を得てシリーズ化し、海外の映画祭でも評価を獲得。日本のアクション映画が国際的に注目される契機となり、土屋や清野とはまた異なる「等身大の戦うヒロイン像」を提示している。

 

2020年代:新世代の継承者たち

アナ・デ・アルマス『バレリーナ』

そして今、アクション映画の系譜の最前線に立つのがアナ・デ・アルマスだ。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でのわずか数分の登場は、観客に強烈な印象を残した。軽やかに銃撃を繰り出し、舞うように敵を制圧する姿は、緊張感よりもむしろ楽しげですらあった。短い出番にもかかわらず、「もっと見たい」と世界中のファンに思わせたのである。

『グレイマン』では冷静沈着なエージェントを、『ナイブズ・アウト』では誠実で人間味のあるヒロインを演じ、アクションとドラマの両面で確かな表現力を証明した。彼女は観客が共感できる“心の強さ”と、“スクリーンを支配する肉体の強さ”を兼ね備えた稀有な存在である。

そして『バレリーナ』。ジョン・ウィック・ユニバースを継ぐこの物語で、彼女が演じるイヴの原動力はただひとつ──家族を奪われた痛みと復讐心だ。使命や理想ではなく、剥き出しの怒りに突き動かされるその姿は、従来のアクションヒロイン像とは一線を画す。流麗な動きの中に潜む冷徹な殺意、美しさと暴力が直結する圧倒的な存在感。

イヴは崇高な戦士ではない。だがだからこそリアルであり、観客は彼女の怒りの連鎖に震えながらも魅了されるのだ。ここに到達した「復讐のヒロイン」という在り方こそ、アクション映画史が辿り着いた新しい地平である。

「その女たち、凶暴につき。」アナ・デ・アルマスはまさにその言葉を体現する、新世代のアクションヒロインなのだ!

『バレリーナ:The World of John Wick』
8月22日(金) 復讐は伝播する

【ストーリー】
孤児を集めて暗殺者とバレリーナを養成するロシア系犯罪組織:ルスカ・ロマ。裏社会に轟く伝説の殺し屋:ジョン・ウィックを生み出した組織で殺しのテクニックを磨いたイヴは、幼い頃に殺された父親の復讐に立ち上がる。しかし、裏社会の掟を破った彼女の前に、あの伝説の殺し屋が現れる…

監督:レン・ワイズマン『ダイ・ハード4.0』 製作:チャド・スタエルスキ『ジョン・ウィック』シリーズ
出演:アナ・デ・アルマス、ノーマン・リーダス、アンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・バーン、キアヌ・リーブス ほか
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
2025/アメリカ/原題:From the World of John Wick: Ballerina
®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

公式HP:Ballerina-jwmovie.jp
X:@ballerina_jw
instagram:ballerina_jw