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【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】#17 『食べて、祈って、恋をして』のリズ

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。この特集では「あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集」と題して、やる気が出ない時、スカッとしたい時、どんな人でも楽しんでもらえる映画をご紹介していきます!

生きる喜びを感じ、自分を許し、本当の愛を知った『食べて、祈って、恋をして』のリズ

今回紹介するのは映画『食べて、祈って、恋をして』のヒロイン・リズ(ジュリア・ロバーツ)です。原作はエリザベス・ギルバートによる同名ベストセラー『食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書』。このタイトルを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

本作ではライターのリズが、コロコロと職を変える夫との生活に限界を感じ、離婚するところからスタートします。元夫や既存の人間関係から解き放たれるため、今まで望んでいたけれどできなかった“旅”をすることを決意するのです。

筆者は10代の頃にこの作品を観ましたが、正直なところ「旅行に行きたいなあ」という気持ちになった記憶しかありませんでした。しかし社会人になってしばらく経ち、生活環境も大きく変化した今観てみると、響く場面が多くありました。

きっと、何年も働き続けてきたから「そろそろ休みたい」と考えていたり、新たな一歩を踏み出すために旅に出ようかと考えていたり、何か変化を求めている大人は少なくないはずです。本作は、ぜひそんな大人たちに観ていただきたい作品。その中でも、リズの強さと勇気をもらえるシーンを振り返ってみようと思います。

 

 

 

※以下、ネタバレを含みます

 

 

 

■イタリア編

リズは旅行の記事などをスクラップして、入れていた箱を眺めながら、自分のやりたかったことを思い出します。

「“無”よ。情熱も活力も信念もなく空っぽ。“危機“という表現ではもう十分じゃない。死より恐ろしいわ。このまま生きてくなんて」

これは旅に出ることを友達に告げる時、感情的になりながらリズが吐き出した言葉です。友達から、それは誰にでもあることだ、と諭されたリズは、これは逃げているのではなく自分を変えるためだと言い放ちます。自ら行動に移して自分自身を見つめること。これがリズの人生には欠けていたのでしょう。

リズはまず、イタリアへ向かうことにします。食への喜びや驚き、新しいものを求めた旅。お湯は十分に出ないし、カフェは人でごった返している。しかしそこには言葉への驚きや、“快楽”の捉え方の違いをイタリア人と関わりながら覚えていきます。

「何もしないことが歓び」と話すイタリア人は言葉だけでは足りず、手も使って表現をします。感情を強く表に出し、人の目を気にせず、自分がやりたいことをする。ニューヨークにいたリズの人生にはなかった意識、いなかった自分を発見したのです。これこそ理想としていた旅です。

また、リズは荒れ果てたアウグストゥス廟を見て、変化に備えるべきだという事を学びます。前回の『かもめ食堂』の回でも述べましたが、人間の生活は変化をしていくものであって、変化を恐れて今にすがるのは良い結果を生まない。筆者も改めてリズを通して学ぶことができました。

■インド編

次は、安らぎを求めて向かったインド。しかし想像とは程遠く、リズは何も拠り所を感じることができませんでした。

そんな中、彼女は「人生をなんとかしたきゃ、まずは自分の心をなんとかしろ」と、インドで出会ったリチャードに言葉をかけられます。許してもらいたければ、まずは自分を許す。そして心の中に愛する対象を作り、祈り、瞑想をして自分と向き合うのです。

自分自身(自分の中にいる神)と向き合うことはとても勇気がいることですが、屈せずに自分を許そうとするリズの強さに誰もが心惹かれることでしょう。

■インドネシア・バリ編

バリでは、再び誰かと人生を共にすることを考え始めます。家族や恋人、友人など、人と育む愛の存在を思い出していく旅です。

夫の変化だけを受け入れていた状況から解き放たれ、自分自身が変化することを求めていたリズには、一人なりの生き方のバランスができていました。その調和が乱れることを恐れたリズは、バリで出会い愛し合った男性との別れを決めます。しかしそこには、悲しみと迷いがありました。そんなリズに、バリでの恩師はこんな言葉をかけます。

「愛のために調和を失うことは調和のある生き方の一部なんだよ」

“愛”は人生において何にも代え難い存在であり、調和が乱れてでも掴み取るべきもの。結婚や恋愛が全てではないけれど、人間との間に生まれる愛を何よりも大切にしていたいと思わせてくれるクライマックスです。

筆者が本作を初めて観た学生の時は、まだ自分自身を形成している途中だったからこそ、リズの行動を見ても「旅に行きたい」としか思わなかったのでしょう。しかし大人になればなるほど、自分という軸が出来上がってしまって、身動きが取れなくなってしまう。そこに留まる人もいて、それも一つの生き方です。その中でもきっと、どこか迷いがある人は、リズの勇気ある行動と自分と向き合える強さに元気をもらえることでしょう。

『食べて、祈って、恋をして』
2010年製作/133分/アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

出演者:ジュリア・ロバーツ、ハビエル・バルデム、ジェームズ・フランコ

監督・脚本:ライアン・マーフィー
原作:エリザベス・ギルバート『食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書』
製作総指揮:ブラッド・ピット、スタン・ヴロドコウスキー、ジェレミー・クライナー
音楽:ダリオ・マリアネッリ
撮影:ロバート・リチャードソン
編集:ブラッドリー・ビューカー

Netflixで視聴する→こちら

 


伊藤万弥乃 (いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。
映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

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