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【第37回東京国際映画祭】『宇宙戦艦ヤマト 劇場版 4Kリマスター』森雪役 麻上洋子が当時を振り返る「私にとって森雪はすごく大きい存在」

第37回東京国際映画祭にて、アニメーション部門作品『宇宙戦艦ヤマト 劇場版 4Kリマスター』の上映が行われた。

1974年にTV放送が開始され、日本におけるSFアニメの金字塔であり、アニメそのものの在り方を変えたともいわれる『宇宙戦艦ヤマト』。この日はTVシリーズ総集編として1977年に公開された『劇場版 宇宙戦艦ヤマト』の4Kリマスター版の上映とあり、上映に先立ってヒロイン・森雪役の麻上洋子が舞台挨拶に登壇した。

登壇するや、50年前と変わらぬ声で「古代くん」と観客に語り掛けた麻上。「ヤマト大好きな皆さま、そして森雪を応援してくださる皆さま、私の心の古代くんたち。本当にありがとうございます。初代・雪のキャラクターボイス、麻上洋子でございます」と挨拶すると、会場は大きな拍手に包まれた。

麻上は”声優に憧れて声優になった最初の世代”ともいわれており、小さいころから「鉄腕アトム」や「ムーミン」などのアニメが大好きだったという。

「声優になれば(アトムの声優の)清水マリさんに会えるんじゃないかと思いましたし、自分で声を出してみて、できるんじゃないかと思ったんです。でも声優になる方法がわからなくて…」と志望のきっかけを説明。そして「私の高校卒業と同時に、日本初の声優養成学校ができたんです。その学校にアニメ業界の方が教師として来てくださって。卒業してすぐに『ゼロテスター』(1973年)のリサ役をいただきました。その録音をしているとき、別のスタジオから出てきたのが清水マリさんだったんです(笑)。」と憧れの人に会えたエピソードを披露してくれた。

新人声優がヒロイン・森雪を演じるということ

それからすぐに麻上は『宇宙戦艦ヤマト』森雪役をオーディションで獲得する。麻上演じる森雪は、主人公の古代進と恋仲になっていくヒロイン。第1作時の森雪は18歳の設定で、演じた麻上とも同世代だ。「嬉しかったです。アニメのキャラクターの声をやりたい、それも主役をやりたいと思っていましたから。現場は年上の方々ばかりで緊張の連続でした。のちに永井一郎さんに『あの時の洋子は座ることもできずに、壁に張り付いて先輩たちをじっと見てたよね』って言われたことがあります(笑)。私が座って椅子の音がキュッて鳴ってしまうことも申し訳なくて、自分の存在を消していました」と新人だった収録当時を振り返る。さらに「当時は私の世代の声優がほとんどいなかったんです。なので、私は演じない方がいいと思いました。自分が感じる想いを乗せれば、今の声のままでいいんじゃないかと。すると田代監督もそのままやってくれればいいよと言ってくださって。なので勇気をもって最後まで貫き通しました」。

麻上にとって緊張の『宇宙戦艦ヤマト』収録現場だったが、主人公・古代進役の富山敬とのエピソードを聞かれると「敬さんは本当に優しかったです。私はさっきも言ったように座ることもできなかったんですが、洋子ほらここが空いてるよ。座りなさいって、敬さんはいつも私に座る場所を与えてくださいました。でも(土方役の)木村幌さんは厳しくて、洋子、マイクの前に立ってから椅子に座るまでは女優のつもりでやらなきゃだめだよと、言われていました(笑)」。

あれから50年、当時の「もちろん楽なお仕事ではなかったですが、思い返すと私の中では、森雪は「古代くん」しか言ってない(笑)。でもそれは私がきっと下手だからだろうって思ってたんです。でもこうやって再上映していただいたものを見ると、こんなにしゃべってたの?って思います。(今日上映する)劇場版はテレビシリーズからセリフを録音しなおしているんですが、改めて見るとたしかにテレビシリーズとは少し違うんですよね。でも取り直したということを全然覚えてないんです(笑)。だから自分の声にびっくりしたりしてます」

©TFC/S.NISHIZAKI

麻上洋子にとっての森雪という存在とは

そんなヤマトのヒロイン・森雪、という存在は麻上のキャリアにとってどういう存在だったのだろうか。「たくさんファンレターをいただいたのはとっても嬉しかったです。でも宛先は私じゃなくて雪ちゃんなんです。当時はその違いに迷ったこともありました。私は私、いろんな役をやりたいのにって。そう思った時代はあったと思います」と人気作のヒロインの声優ならではの気持ちを明かす。そして同時に「私にとって森雪はすごく大きい存在です。近年特にそう思うんです。こうやって40周年50周年と愛される、すごくいい作品に出会わせていただいて、私は恵まれているなと思います。多くの個性的な先輩たちがいて、そのお芝居の濃さがこの作品を深くしていると感じています。そのスタジオにいられたことは本当に私にとって大きかったですね」。

 そして最後に「今日は皆さんにあえて本当にうれしかったです。ずっと繋がってるんだなという気持ちにさせてくれます。だからもうちょっと生きてみようと思いました(笑)。あちら側に逝ってしまった先輩方も多いですけれど、まだ元気な人もいっぱいいます。これから上映される『宇宙戦艦ヤマト』というべ-スがあって、今の新しい『ヤマト』があります。その新しいヤマトの中で、いつかなにかで声を出すことができたなら嬉しいなと思っています。みなさんずっとヤマトを応援する気持ちを持ち続けてくれたら嬉しいです。今日はありがとうございました」と舞台挨拶を締めくくった。

 

<第37回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net

<TIFFCOM2024 開催概要>
■開催期間:2024年 10 月30日(水)~11月1日(金)
■公式サイト:www.tiffcom.jp