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【第37回東京国際映画祭】藤津亮太が語る映画『窓ぎわのトットちゃん』の魅力「注目すべきは演出装置としての“窓ガラス”」

現在開催中の第37回東京国際映画祭にて、黒柳徹子氏の自伝的小説をアニメーション化した映画『窓ぎわのトットちゃん』の上映が行われ、東京国際映画祭プログラミング・アドバイザーを務めたアニメ評論家、藤津亮太氏が同作を解説するトークショーを行った。

1981年に出版され、800万部以上の大ベストセラーとなった原作の「窓ぎわのトットちゃん」には、当時から映像化のオファーがあったものの、黒柳氏は重要な登場人物であるトモエ学園の小林校長先生を演じられる役者がいないことを理由に断ってきたという。それが、2016年頃、当時『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』を監督していた八鍬新之介監督が同作を手にとったことがきっかけで映像化の話が進んだという。

 

当時子どもが生まれ親になった八鍬監督は、国内外でおこる戦争や事件など子どもが不幸になる報道を見る中でこの先の社会を案じ、現実とリンクしながらも明るさを感じられる作品を作りたいと思い、その中で出会ったのが「窓ぎわのトットちゃん」だったという。企画提案後も黒柳氏と綿密なやりとりを重ねてプリプロダクションを進めていき、7年越しの劇場公開となった。

本作のキャラクターデザイン・総作画監督を務めたのは金子志津枝氏。キャラクターデザインのベースは、昭和初期に発行されていた子ども雑誌のイラストを意識しながら、彫刻家の舟越桂氏の作品がもつ立体感を加えるという方針で制作された。日本のアニメーションではあまりない、キャラクターの唇に赤い色が入っているのも、子ども雑誌からヒントを得た手法だという。

続く背景美術の紹介では、美術設定を担当した矢内京子氏が、昭和初期の建築様式の知識に加え、ロケハンや黒柳氏が提供した資料を踏まえ、さまざまな空間を緻密に設計。そこに美術監督の串田達也氏が色を使って光や空気の感じを加えていったという。藤津氏は、中でもぜひ “窓ガラス”に注目してほしいと語り、ていねいなディテールに支えられた結果、戦中から戦争末期に向かって変わっていく街の風景がとてもリアリティーをもって観客に迫ってくることになったと話した。

 

トットちゃんを軸とした子どもの視点で描く本作では、大人の世界でおきている大きな変化も子どもにとっては日常のちょっとした変化や違和感でしかない。そのあたりのバランスを表現する方法として、大人の世界をふと垣間見てしまうシーンはあえてガラス越しに描いており、そのバランスのとり方も見どころだという。

一方で、子どもらしい想像力をアニメーションならではの表現の自由で豊に表現しているシーンもあり、リアリティーのあるシーンとアニメーションらしい想像力溢れるシーンという振り幅とその両立が本作の魅力のひとつであると語った。

 

声の出演:大野りりあな、小栗旬、杏、滝沢カレン、役所広司 他

監督・脚本:八鍬新之介
共同脚本:鈴木洋介
キャラクターデザイン:金子志津枝
主題歌:あいみょん「あのね」
制作:シンエイ動画 
原作:「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子 著/講談社 刊)
公開日:2023年12月8日(金)
©黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
公式サイト:https://tottochan-movie.jp/

 

<第37回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net

<TIFFCOM2024 開催概要>
■開催期間:2024年 10 月30日(水)~11月1日(金)
■公式サイト:www.tiffcom.jp