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明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#14『ザ・マジックアワー』すれ違いが笑いを誘う、三谷幸喜監督&脚本作品!

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!(※ネタバレを含みます)私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。

 

今回はすれ違いが笑いを誘う、三谷幸喜監督&脚本作品
『ザ・マジックアワー』

今回は日本を代表する喜劇作家である三谷幸喜作品の中から『ザ・マジックアワー』をご紹介します。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」や映画『記憶にございません!』など、人気作を多数手がけている三谷幸喜による日本ならではの笑いで、福を呼び込む年明けにしましょう!

舞台となるのは、まるで映画のセットのような港町。物語は、クラブの支配人として働く備後登(妻夫木聡)は、町を牛耳るマフィアのボス・天塩幸之助(西田敏行)のフィアンセ・高千穂マリ(深津絵里)と関係を持ってしまったことがばれて、殺されそうになるところから始まります。どうにか死を回避しようと、備後は天塩が探している殺し屋のデラ富樫を知っていると嘘をつき、そして5日以内にデラ富樫を連れてくれば見逃すことを条件に、一度解放されます。

無茶苦茶な嘘をついてしまった備後は、デラ富樫の素顔を誰も知らないことと、彼らが住んでいる場所が映画のセットのようであることから、自ら映画監督を装って売れていない俳優を雇い、映画の撮影として俳優に殺し屋を演じてもらうことで、その場をしのぐことを思いつくのです……。

映画を愛する大根役者を演じるのは佐藤浩市

その俳優とは、顔が知れ渡っていない、かつ殺し屋っぽい顔をしているとの理由から選ばれた村田大樹(佐藤浩市)。備後は監督を名乗って村田に近づいていきますが、台本もなく経歴もない点に疑問を持たれてしまい相手にされませんでした。しかし、自分の俳優としての実力を世間に知ってもらいたいという思いが強い村田は、思い切って出演を決意します。

村田に撮影であることを信じさせるため、備後が思いついた“カメラは別の建物から撮っている”という設定も、リアリティショーにありそうで絶妙にリアル……それに合わせて、カメラ目線にしようとしてしまう村田の動きが「売れない俳優っぽさ」を引き立たせており、笑わずにはいられません。

嘘をついてでも死にたくない男と、俳優人生を賭けた演技に挑戦しようとしている男。まさにアンジャッシュのコントのようなすれ違いが、全ての物事を笑いへ、そして感動的な結末へと誘っていきます。

そんな村田を演じる佐藤浩市は、本作のようなくすぶっている俳優役から、『THE有頂天ホテル』のように不倫で世間を騒がせるプレイボーイな議員役まで、完璧に演じ分けられる俳優なんだなと感じさせられます。それと同時に、村田というポンコツ俳優の役を佐藤浩市が演じているということにも面白さが滲み出ています。

三谷組に欠かせない俳優たち

三谷幸喜作品はお馴染みの俳優たちが様々な役で出演していたり、前作に登場したキャラクターが隠れキャラとして出演していたりと、何作にも渡って楽しむことができるのが特徴です。

常連俳優は、西田敏行、寺島進、戸田恵子、小日向文世……など挙げればきりがありません。作品によって、メインキャラクターを演じていたり、ほんの一瞬の脇役を演じていたりするので、「あの俳優は、今回は何役なんだろう?」といった楽しみ方もできます。

また、本作『ザ・マジックアワー』には前作『THE 有頂天ホテル』に登場した、ミュージシャンを目指すホテルマンの只野憲二(香取慎吾)が出演していました。『THE 有頂天ホテル』でお守りだと話していたバンダナとマスコットをつけて路上で弾き語りをしているので、ぜひ探してみてください。さらに、『THE 有頂天ホテル』で出てくる鹿が描かれた段ボールも、天塩の事務所の倉庫に山積みにされているのでそちらもぜひチェックを……!(ちなみに、本作からは村田が『ステキな金縛り』に出演しています)

「この町で起きることはまるで映画の中の話」というセリフが出てくるように、映画のセットがセットらしく作られているのも魅力。エンドクレジットでは、このセットがどのように作られていったのか、制作工程を観ることができます。

映画として笑える点が多いのはもちろん、細かなこだわりまで楽しむことができる『ザ・マジックアワー』。『THE 有頂天ホテル』『ステキな金縛り』『清須会議』と連続で観てみるのも面白いかもしれません。

人生様々なことが起きる中で、心の頼りになるものの一つに、映画やドラマなどのカルチャーがあると思っています。“生きる原動力になるコメディ映画”と題したこの特集は、「読者の皆さんが笑えて励みになる作品に出会うきっかけになれば」という想いから始めさせていただきました。いつか、ここで紹介した映画が、ほんの一瞬でも誰かの支えになる時が来ることを願っています。今年も引き続きよろしくお願いいたします!

 

『ザ・マジックアワー』(2008

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【ストーリー】
港町・守加護(すかご)。街を牛耳るギャングのボス・天塩の愛人・マリに手を出してしまった手下のホテル支配人・備後。はたして天塩に捕まり絶体絶命となってしまう。助かる唯一の条件として天塩が示したのは、5日以内に幻の殺し屋“デラ富樫”を連れてくること。条件を飲んだ備後だったが、そう簡単に見つかるわけもなく、最後の非常手段としてニセモノを用意することに。そこで備後は、映画監督になりすまして無名の俳優・村田大樹を雇うと、映画の撮影と称して彼に殺し屋“デラ富樫”を演じさせ、天塩の前に差し出すのだったが…。

【キャスト】
佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行 ほか

【スタッフ】
監督・脚本:三谷幸喜
製作:亀山千広、島谷能成

 


伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

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