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明るい気持ちになれる!“生きる原動力”になるコメディ映画20選/#12 『フェリスはある朝突然に』

映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。全20回に渡って「生きる原動力になるコメディ映画」をテーマに1本ずつ映画を紹介させていただきます!(※ネタバレを含みます)私がコメディ映画を観たいと思うのは、心が沈んでいるときや現実逃避をしたいとき。だからこそ、爆笑までしなくとも、観ている間だけでも楽しい気分にさせてくれる作品をテーマにピックアップしていこうと思います。

今回選んだのはジョン・ヒューズ監督&脚本
『フェリスはある朝突然に』(1986)

今回選んだのは『フェリスはある朝突然に』です。この作品が公開された1980年代は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に代表されるような、10代の若者たちを描いた青春コメディ映画がヒットを続けていました。特に、青春映画を数多く生み出したジョン・ヒューズが監督と脚本を務める本作は、まさにその時代を代表する作品と言えるのではないでしょうか。彼が脚本を手掛けた『ホーム・アローン』に登場するような手の込んだ仕掛けや、監督・脚本作『ブレックファスト・クラブ』を思わせる高校生たちが登場する、大人も子供も楽しめる作品です。

タイトルの通り、サボりの名人である高校生・フェリス(マシュー・ブロデリック)は、両親をだまして学校を休み、自らは寝ているように見える仕掛けを部屋に残して、平日に友達とシカゴの街を謳歌します。

リッチな友達・キャメロン(アラン・ラック)の父親が大切に保管しているフェラーリで街までドライブして、超高層ビルに登り、高級レストランに偽名で入ります。そのあとは野球を見に行き、美術館では芸術鑑賞。(普通の休日よりも、急に空いた平日の方が楽しくて、濃いものになるのも分かる気がします……)さらにフェリスは、街のパレードまで乗っ取って盛り上げるのです。あからさまにコソコソとする様子は全くなく、罪悪感を1ミリも見せない姿には清々しさすら感じてしまいます。

ただ、フェリスたちは今を楽しむことに全力集中している一方で、大学進学など将来のことを考えず、現実から逃げているようにも感じられます。私はそこに本作の本質が隠れているように思うのです。今考えて答えが出ないことよりも、目の前のことに全力を注ぎつつ、やりたいことを見つけていくというやり方でもいい。『ブレックファスト・クラブ』は校内での話でしたが、学校というコミュニティの中にいたくなければ、外に逃げ出したっていいんだと思わせてくれているようです。

校長との攻防、妹との対立、親との関係
先述の通り、フェリスは街の様々な場所に出現しますが、決して(面倒なので)親や学校関係者にバレたくはないはず。特に、フェリスを良く思っていない校長とフェリスの妹・ジーニー(ジェニファー・グレイ)との戦いが、この作品のコメディ要素を高めてくれます。

校長はフェリスが何度も休んでいることに目をつけ、サボっていることを確信。そして、祖母の急逝の連絡を受けて早退することになったフェリスの彼女・スローアン(ミア・サラ)を怪しく思い、彼女の自宅に確認の連絡をしようとします。そのタイミングで、スローアンの父親を名乗る人物から、校長宛に電話が。普通であれば「スローアンは噓をついているわけじゃなかったんだ」と思って終わりそうなところ、校長はその電話がスローアンの父に扮したフェリスからなのではないか?とさらに疑いをかけるのです。

しかし、その電話を受けている最中、校長室にはフェリス本人からの電話がかかってきます。そう、校長が対応していた電話は、スローアンの父に扮したフェリスではなく、キャメロンがかけているものでした。校長が上手なのかと思いきや、フェリスの方が何倍も裏を読んでいる。そういったシーンもたくさん描かれており、予想を裏切る面白さがあります。

一方、フェリスが重病という噂が広まり、校内ではフェリスを救うための募金活動が行われていました。いつも上手く学校をサボることができず、両親に怒られてばかりいる妹はそれにうんざり。フェリスに全信頼をおく親にフェリスの悪行を知らしめようと画策しますが、上手くいかず……最終的には兄に対する嫉妬を自分の中で消化し、兄のサボりに協力する立場に。思春期にありがちな、兄妹間での妬みや憧れといった心理描写が上手く描かれており、どこか懐かしさも感じさせます。

最後に、この映画の最大の特徴は、フェリスが観客に話しかけてくる“メタフィクション”なところにあると言えるでしょう。フェリスが「こんな仕掛けは現実に上手くいくか分からないよ」と言っているようにも、サボりの世界に誘っているようにも見えてしまうのが不思議です。

この一日の休みを通して、キャメロンは親に反抗することを学び、フェリスとスローアンは2人の将来を真剣に考えるようになりました。同じく青春映画の『アメリカン・グラフィティ』などで描かれるような、学生時代に襲ってくる将来への不安を、明るく見えるフェリスを通して追体験(もしくは懐古)することができる映画。9回もサボっているフェリスの中でも、この日が一番思い出に残っているはずです。

【参照】
フィリップ・ケンプ(責任編集)、 『世界シネマ大辞典』、三省堂, 2017

『フェリスはある朝突然に』(1986)

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【ストーリー】
ある朝突然、高校生のフェリスは「人生は短い。だから思う存分楽しまなきゃウソだ!」と悟った。両親と学校をダマしてズル休みをするが、校長だけは彼を捕まえようと躍起になる。こうしてフェリスの青春の1ページを懸けた忘れられない1日が始まった…。

【キャスト】
マシュー・ブロデリック、ミア・サラ、アラン・ラック

【スタッフ】
監督・脚本:ジョン・ヒューズ
製作:ジョン・ヒューズ、トム・ジェイコブソン
製作総指揮:マイケル・チニック
音楽:アイラ・ニューボーン
撮影:タク・フジモト
編集:ポール・ハーシュー

 


伊藤万弥乃(いとうまやの)
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。
大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。
シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

執筆記事:https://linktr.ee/mayano
ブログ:https://ladybird99.com/

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