【特集】歴代宣伝プロデューサーが語る!『ジョン・ウィック』シリーズ座談会!
スタイリッシュなビジュアルの裏に隠されたありとあらゆるチャレンジ!
宣伝“虎の穴”映画『ジョン・ウィック』の歴史を宣伝目線で振り返る!
キアヌ・リーブス主演の大ヒットシリーズの第4弾『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が現在絶賛公開中。今回、宣伝という立場で本作に携わってきた歴代の宣伝プロデューサーに「ジョン・ウィック」シリーズを語ってもらう座談会を実施した。
【発言者】
宣伝チーム:徳安さん(1・2)、西さん(3・4)、石山さん(1・2) 志村さん(3・4)
聞き手:ムービーマービー編集部:梅崎(以下、MM)
『ジョン・ウィック』(2014)
“ぼっち”キアヌが突如驚愕アクションで完全復活!サニー千葉との歴史的邂逅も。
MM:本日はよろしくお願いします!最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が大ヒット公開中ですが、今回は、日本公開において宣伝プロデューサーという立場でシリーズに携わってきた皆さんに宣伝マン目線から「ジョン・ウィック」シリーズ振り返って頂きたいと思ってます。ぜひ、ざっくばらんにお話し頂けると幸いでございます。
徳安さん:ありがとうございます。
西さん:よろしくお願いします。
MM:まず、徳安さんが第1作目の宣伝を担当されたんですね。2014年10月に全米公開されて、日本公開は1年後でしたが、どのタイミングで依頼のお声が掛かるんですか?
徳安さん:最初の『ジョン・ウィック』に関しては、確かアメリカで公開した後でしたね。
..
西さん:半年くらい経ってたよね。
徳安さん:そうですよね。配給のポニーキャニオンさんが権利を買ったタイミングでお声がけを頂いたと思います。
石山さん:あの時は『ジョン・ウィック』と一緒に、リーアム・ニーソンの『誘拐の掟』(2014)っていう映画もあって、「これとこれがあるんです」って言われたんですよ。僕は『誘拐の掟』がやりたいなって思ったんだけど、もう1つの『ジョン・ウィック』ってどんな映画ですか?って聞いたら、担当さんが「キアヌ・リーブスが愛犬を殺されて、車を盗まれて、それで何十人もブチ殺しちゃう映画です」って言ったんで、「あ、これだ」と思いました(笑)
MM:なんかピンときたんですね(笑)あの頃のキアヌは、『マトリックス』後でちょっとキャリア的にも落ち着いてた時期で、『ジョン・ウィック』も実は大手じゃなくインディーズ映画でした。けっこう業界的にナメられそうな雰囲気ですよね。
西さん:実際に1作目のときは状況的にかなりナメられてたと思いますよ。キアヌも「何とかタイガー」みたいなの監督してたり・・・
MM:『ファイティング・タイガー』(2013)ですね!僕は大好きな映画です(笑)
西さん:かなり迷走してる状態で、趣味に走ってますみたいな。
徳安さん:ちょっとニコケイ(ニコラス・ケイジ)のラインに行ってしまったような。
西さん:この1作目もちょっとニコケイがやってそうな映画ではあるから、このままそっち方面に行っちゃうんじゃないか?みたいな雰囲気はありましたね。
MM:当時、海外で公開された予告映像を見た時にブチ上がりしたの覚えてます。あのキアヌが超すごいアクションやってるぞ!って。
西さん:宣伝コピーは「完全復活」で進めてましたね。
徳安さん:あとは、とにかくスタイリッシュにクリエイティブ面は進めてました。当時の企画書を見返すと、「新起動」、「伝説の男が完全復活」、「キアヌ自体の新章」とか。ジョン・ウィックとキアヌ・リーブスがリンクするような感じでやってましたね。実際に本編もスゴくカッコ良かったんですよね。アクションも玄人好みで。
MM:すでにやってる映画もありましたけど、『ジョン・ウィック』から今のリアルでタクティカルなガンアクションの流れが定着したと思います。
徳安さん:だいぶ渋いじゃないですか。銃の構えとかも今までと違う。爆発も少なくて、寝技が多いみたいな(笑)。
MM:昔ながらの大味な弾丸を敵の方にバラ撒くような銃撃戦から、確実に急所を狙い撃つ現代的なスタイル。ミリタリーファンは燃えましたね。こういう要素って、コアなマニアには届きやすいと思いますが、ライト層はどのような感じだったんですか?
徳安さん:(企画書を見ながら)ライトユーザー・アクション映画ファンがメインターゲットになってます。だから、『LUCY/ルーシー』、『ワイルド・スピード』シリーズ、『ボーン』シリーズとか、広めにその辺りの層を狙ってましたね。
キアヌ・リーブスってキアヌ自体がエンタメじゃないですか。いきなり日本にいたり、ラーメン好きだったりとか今なら色々ありますけど、まだこの映画で覚醒する前で「ぼっちキアヌ」とか言われてた時代。あとは「良い人」キャラとか、電車の席を譲った話しとかもこれぐらいの時期だったと思いますね。
MM:「聖人」とか言われてましたよね。ちなみに第1作の時からキアヌ来日してますよね?なんか来日宣言する動画を見た記憶があります
徳安さん:1の公開前に鈴鹿サーキットにバイクのプロモーションで来日してたんですよ。ある情報筋から、「キアヌなんか明日来るらしいですよ」っていう連絡を頂いて。それで、コメントを取りに突撃したんですけど、あっけにとられてましたね。自分のプライベートで鈴鹿まで走りに来たのになんか映画のヤツが来たみたいな。
参考:https://youtu.be/EgH4EFioM3o?si=XfLcLtB36hmb53Qv
MM:あ、そんな感じだったんですか?
西さん:今回もキアヌはバンド「DOG☆STAR」として来日して、情報番組とかにも出て、すごく嬉しそうにニコニコしてたんですけど、映画の仕事であんなニコニコしてるの見たことない(笑)
徳安さん:そう、だからそれをちょっと犯してしまったんですよね。彼の楽しみのところに映画で行くと嫌な顔をされる。
MM:キアヌはバイクが好きすぎてバイクメーカーを立ち上げているんですよね。キアヌ的に今は役者よりもバイク屋さんが本業なのかもしれない(笑)でも映画は映画で改めて来日プロモーションでちゃんとしてくれたんですね。
西さん:ディファ有明でジャパンプレミアをやりましたね。今はもう無くなっちゃいましたけど。
徳安さん:あの時はディファ有明でマスタングに乗ってキアヌ登場!みたいな感じにしたかったんですけど、乗るのはちょっと叶わずでしたね。キアヌは乗らなかったけど、何故か石山さんが試乗して、何故かなかなか帰ってこなくて(笑)
石山さん:お台場をすげぇ音で転がして、これ気持ちいいわぁ!ってやったら電話かかってきて「戻ってこい!」って怒られました(笑)。V8を体感しましたよ。
西さん:なかなかないですよ。
石山さん:なかなかない!面白かった!
MM:なんですかそのエピソードは(笑)
徳安さん:あと1のエピソードで言うと、来日したときテレビ番組の「YOUは何しに日本へ?」が成田空港にいて、キアヌが「YOUは何しに?」って聞かれてました(笑)
MM:え、本当ですか!?
石山さん:普通に旅行で来た外国人と一緒に聞かれちゃったんです。
徳安さん:「ジョン・ウィック!」って言ってくれました。
西さん:1パブ※ついたね(笑)
※パブリシティの略でPR活動により媒体で告知・広報してもらうことを指す。
今日のyouは何しに日本へ?でキアヌさんだったのか。本当キアヌさんは神対応だよなー。ああバッチリ寝癖がwww pic.twitter.com/gu4a8sYdlY
— あじ🐟 (@ajiji_0) November 16, 2015
西さん:あと、千葉真一さんとキアヌが会ったのも1の時だよね?
徳安さん:そうですね。テレビの企画でやりましたね。
石山さん:あれ最高だったよね。
MM:インタビュー中に後ろからサプライズで千葉真一が登場するんですよね。
石山さん:キアヌめっちゃ嬉しがってたね。
徳安さん:本当にファンだったみたいで、めちゃくちゃ喜んでました。
『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)
銃から、犬から、くまモンまで、あらゆる可能性に挑戦したチャプター2
MM:そして、1から約2年後に公開された「チャプター2」ですが、それも徳安さんが担当されたんですか?
徳安さん:そうですね、「チャプター2」も石山さんと一緒にやらせて頂きました。2はマスコミ用のプレスシートがすごく秀逸でした。デザイナーさんとGQをパクろうと考えていて、さらにGQにも広告を入れてほしい思って言いに行きました。断られちゃったんで、GQがプレスに広告を入れたっぽい雰囲気で勝手に作りました。
MM:これプレスですか?やたらお洒落でカッコイイですね。
徳安さん:実はプレスなんです。表紙とかも、向こうのピープル誌のようなアメリカの雑誌の質感みたいなのを再現したかったんです。
西さん:これすごく良く出来ていて、僕も横で見てましたけど、プレスでここまでやる必要あるのか?と思いつつ(笑)。
MM:これは実際に誰が制作したんですか?
徳安さん:僕ですね。まず最初に広告の部分から、映画の資料とは関係ないところから作っていきましたね。時計ブランドの「カール F. ブヘラ」さんがタイアップしていたので、本物のブヘラの広告をタダで入れようって..。
MM:あ、これはほんとに広告として存在しているものですか?
徳安さん:僕らが勝手に作った架空の広告ですけど、ロゴとか時計は本物を使ってるんです。
MM:「チャプター2」になって、宣伝の規模もさらに大きくなったと思います。
徳安さん:この2本目の時は、本編で欧州に行ったり、防弾スーツの仕立て屋が出てきたりと世界観が広がったので、映画と同じく色々な「広がり」みたいなのを宣伝でも打ち出していきましたね。
MM:この時もキアヌはチャド監督と一緒に来日ですよね?
徳安さん:そうですね。来日のメンツほぼ一緒みたいな感じで。この時は、プレミアイベントに和田アキ子さんに登壇して頂いたんですが、舞台裏で「あの鐘を鳴らすのはあなた」の映像をキアヌと監督と復習してました。
石山さん:「鐘」繋がりで。本編で鐘が鳴るんだよね。
徳安さん:だからイベントでも鐘を鳴らそう!って。
参考:https://youtu.be/holKrYTx8bs?si=7P67G0fgM1RuvWOu
MM:そこだけでナニワのゴッドねえちゃんを・・・(笑)でもやっぱりそういうことでテレビにも使われますもんね。
徳安さん:そうですね。でもまぁ、「和田アキ子さんを呼べばいいのか!?」みたいなのはありましたけど..。
西さん:自分の中で葛藤があったの?
徳安さん:いや、世の中のお叱りが・・・。
西さん:ファンからのお叱りあったね。
MM:熱心な映画ファンはテレビ的なノリを嫌がりますからね。宣伝マンからしたら葛藤が生まれるんですね。あと個人的な感覚ですけど、この頃からツイッターでキアヌ見た!キアヌがいた!みたいなのが増えた気がしますね。
西さん:そうですね。2015年くらいからツイッターがちゃんとワークし始めたから、結構目撃談が増えました。ラーメン屋どこに行くかを当てようみたいなの出てなかった?
徳安さん:そうですね。前回はここ行ってから、今回はここだろうみたいな。あと、「チャプター2」の時に、石山さんが監督となんか体術を..。
石山さん:あ、そうね。チャド監督に関節技かけられて・・・。映画で格闘がどうやって繋がってるのか分からなかったから、監督に聞いたら、「ちょっといい?」って言ってやり始めて、あいたたたたたって(笑)。
MM:ファンからしたら超羨ましいですよ。
西さん:毎回キアヌと同じだけ稼働日があるから、監督はどうしても時間が余ってしまう。で、実はチャド監督の方がキアヌより喋りたがりだから張り切っちゃって(笑)。
石山さん:監督すごい喋りたがりだよね。
徳安さん:あと「チャプター2」の時はですね、「愛犬試写会」っていうのを世田谷のアンディカフェっていうドッグカフェでやったんですよ。
MM:どうかしてますね(笑)
徳安さん:ジョン・ウィックと犬を中心に繋いだ特別編集のワンダフルエディションっていう11分の短編を犬に見せるっていう。17匹くらい来ました。犬のネタをやるシューマッハっていう犬芸人さんがいるんですよ。「この形の犬はドーベルマン!」とかいうネタなんですけど、で、彼らのネタを犬に見せるっていうすごいカオスみたいな..。(参考:https://qr.paps.jp/agYlL)
西さん:地獄のイベントだね(笑)
MM:それは徳安さんが考えたんですか?
徳安さん:犬試写自体は宣伝会社さん発案で、一緒にカオスな方向にカスタムました。
石山さん:地獄だったなぁ。
徳安さん:バウリンガルっていう犬の言葉が分かる機械で映画の感想聞いて、どうでしたか?とかいって。結構ノーコメントが多かったですね。
あと、実際に銃声が鳴る「ガン・オルケスタ試写会」っていうのもやりました。生オーケストラで見る映画あるじゃないですか?あれの銃声版をやろうと。上手と下手に火薬鉄砲を持った男が、映画に合わせてバン!バン!バン!バン!っていう。(参考:https://qr.paps.jp/Gyhqt)
西さん:映像と銃声が全然合ってないんだよね(笑)。
徳安さん:これもまた地獄のイベントです。
MM:ちょっと楽しそうですけどね。アナログな4DXみたいな感じで(笑)。
徳安さん:あと、「チャプター2」は著名人コメントが充実してますね。大仁田厚さんとか、キラーカーンとか。
西さん:それは充実してるって言うのか?(笑)
MM:なぜ1人目に大仁田厚さんを(笑)涙のカリスマではありますけどね。
徳安さん:菊地凛子さん、和田アキ子さん、藤岡弘、さん、大仁田厚さん、キラーカーンさん、みたいな。
西さん:なんで菊地凛子さんがそこに並ぶのかよく分かんないね(笑)
徳安さん:『47 RONIN』でキアヌと共演したから・・・
。
西さん:あ、そうかそうか!共演してた!
徳安さん:あと、くまモンからもコメントを頂いて。1のときに鈴鹿でくまモンがゲストでバイク乗るみたいなデモンストレーションをやってたんですよ。その時にバックヤードでキアヌとくまモンが一緒に写真撮ったりしてて。
来日イベントの共演は叶いませんでしたが、コラボポスターを作りました。
志村さん:あのコラボポスターはめっちゃ良い感じでしたよね。くまモンがキアヌになりきってるというデザインで。逆に良いんだって思いました。
西さん:それは許されるんだ、みたいな。というか、くまモン的にもOKなんだ、みたいな。
志村さん:そうですそうです。それ、くまモン的にOKなんだって思っいました。
徳安さん:くまモンには殺し屋スーツを作ってあげたので、すごい喜んでましたよ。黒が丁度無かったんですよって言って。黒いスーツを。
MM:実際に着せる用のスーツを作ったんですか?
徳安さん:そう、くまモン用の衣装を殺し屋モードで仕立てて。2はそんな感じで楽しくやってました。
『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)
エンタメ度アップ!きゃりーも出てきてニン!なパラベラムの宣伝
MM:そして3作目の「パラベラム」からは西さんがメインで担当されたと。
西さん:そうですね。志村さんと一緒にやってましたね。
MM:ここまで来ると作品の認知度とか最初の頃とは比べ物にならない所にきてますよね。逆に宣伝するのが難しくなったりするんでしょうか?
西さん:だいぶ作品の規模感が広がってますね。逆にやりにくいっていうのは、配給サイドから課せられる興行収入タスクがチャプター2の倍ぐらいになってることですね(笑)。ただ予算とか劇場数とか、前作から上げてくれたので「じゃあ頑張りますか」っていうところのスタートでした。さぁどうしようとなって、本編を見たらストーリーが分かりづらかった(笑)
石山さん:ポスターで見ると、1はジョン・ウィックが一人で、チャプター2は一人だけど銃口がいっぱい。パラベラムは、ジョン・ウィックの後ろに何人か立ってるんですよ。ここら辺が分かり易く違うところなのかな。
西さん:チャプター2は「伝説の殺し屋vs世界中の殺し屋」みたいなコピーで分かりやすいストーリーラインとフックがあるけれど、パラベラムって実はそういうのがない。砂漠に行って帰ってくるだけみたいな。
石山さん:しかも、完全に途中で終わるもんね。
西さん:これは大変でした。
MM:宣伝的には頭を悩ませたと。
西さん:キャッチコピー的なものとか、お話の伝え方をどうしようかなって。「世界の殺し屋から狙われる」だと前と同じじゃん!みたいになるし。ただ、主席連合と全面抗争みたいになって、もう最初の復讐劇じゃなくて、どちらかと言うと抗争劇みたいになっていく。主席連合って映画の中では世界そのものみたいな存在なので、「世界はお前を許さない」というコピーにしました。あとはシリーズ物のお約束「キャラが増えています」「舞台が広がってます」という、何とかそういうフォーマットに入れようと。ただ、増えたのはハル・ベリーとローレンス・フィッシュバーンくらいじゃないですか。ハル・ベリーって日本人にとってはそこまでなんですよね。
MM:『X-MEN』で見たことはあるけれど、役者の名前は知らないみたいな。パッと名前出してわかるのは意外と映画ファンくらいかもしれないですね。
西さん:そうなんです。今回の「コンセクエンス」のように真田広之さん、ドニー・イェンみたいに分かりやすくスターが出てくれるといいんですけど。ポスターも本国のポスターは毎回ジョン・ウィック一人なんですけど、日本版は無理やりハル・ベリーとかランス・レディックとかも入れて頑張ってます。1とチャプター2は、やっぱり殺し屋の復讐劇みたいな認識で、「ジョン・ウィックってなんか怖い」とか「暗い」といった声が多かったんですけど、そろそろ笑って見て欲しいよねと思っていて。明らかにパラベラムの作りって笑わせに来てるじゃないですか。マーク・ダカスコスとか。これはシュールな笑いを狙ってるので、そろそろそっち方面に気づいてほしいなぁと。まず、ゴールはエンタメっぽくしていきたいなと思って宣伝はやってました。
MM:パラベラムってアクション映画ファンから見れば、めちゃスター揃いなんですけどね。マーク・ダカスコス、ヤヤン・ルヒアン、セセプ・アリフ・ラーマンとか。まあ、一般層に『ザ・レイド』が浸透してるとは思えないですよね(笑)
西さん:あとはアクションに関しては、本で殺したりとか、馬で戦ったりとか、結構バラエティー豊かだったので、その辺は伝えやすい要素でしたね。
MM:ニュースのリリースでも色んな殺しのバリエーションを紹介していて楽しかったです。
西さん:そうなんです。ベースは1と2が凄く楽しそうに宣伝をしてくれていたので、面白おかしくを結構踏襲したところはあります。
MM:パラベラムも来日はキアヌとチャド監督の2人だけでした?
西さん:そうですね。2人だけの来日でした。ただ毎回、日本のタレントをイベントに付けるのも変じゃないですか。下手すると怒られちゃうし。嫌だなぁと思っていたら、きゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」が劇中曲に起用されてたので、来日の1ヶ月ぐらい前にオファーしたら出てくれることになって。この時点で「この映画勝った!」と(笑)
MM:ちゃんと筋の通ったゲストブッキングですからね(笑)
西さん:今回は忍者が敵で出てくるので、きゃりー(・ぱみゅみゅさん)とチャド監督とキアヌ、あと忍者を呼ぼうとなって。志村さんに忍者を探してもらって。
志村さん:ガチ忍者です。
西さん:観光客にいろいろ技を教えてたりとか、そういうのが東京タワーの地下にあるんですよ。
志村さん:「武蔵一族」っていう方たちです。
MM:全然知らなかった!そんな集団が東京タワー付近に(笑)まぁ忍者だから存在を知られてはいけないでしょうけど・・・。僕も取材で舞台挨拶に行きましたけど、確かキアヌたち「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」って九字印を切ってましたね(笑)
西さん:そう。出てきてもらって「ニン!」ってやってもらって。絵的にはすごく良かったです。もうこの時点で「勝った」と思いまし(笑)
参考:https://youtu.be/poi3ngD4MRU?si=1vo2pq6bejFCa2b1&t=124
MM:イベント翌日はあの映像と写真がめちゃくちゃ回りましたからね。
西さん:やっぱり、きゃりーさんが出てくれたことが凄く大きくて。オーディエンスにも文句を言われないじゃない。パブも取れるし、すごいラッキーだったなぁと。絶対にきゃりーの歌が流れるすし屋のシーンがテレビで使われるから、映画を見てない人は「こんなふざけた映画なんだ!?」ってなるので。エンタメ感が出せたのはかなりプラスだったと思います。
MM:キアヌが来日の時は必ず〇〇ホテルに泊まるというのが、割と周知されてますよね?
西さん:知られているんですが、一応公然の秘密みたいな。
石山さん:〇国ホテルぐらいで(笑)
西さん:〇国ホテルのロビーって凄く大きいじゃないですか。パパラッチがキアヌが行きそうなところ全部にはられていて。まさに殺し屋みたいに座っているんですよね(笑)
志村さん:各出口にいて、皆んなそれぞれ連絡を取り合っている(笑)
MM:キアヌくらいになれば、なんでも自分の部屋で済ませられるはずなのに、わざわざロビーまで降りてきて囲まれちゃうんですよね?
西さん:そうなんです。何も考えずに降りてきて捕まって、我々が怒られるっていう。なんでロビーにいるんだ、しっかりケアしろって(笑)
徳安さん:だからそこら辺がやっぱりキアヌは他のセレブとは少し違うところなんですよ。
西さん:イージーゴーイングって言うんですかね?あんまり構わないでいいよみたいな人っぽい雰囲気はしますけどね。
MM:キアヌ的には用事があったからロビーに行っただけなんでしょうね。
西さん:ホテルで取材に立ち会ってたんですけど、一部屋キアヌが吸うのでタバコ部屋を用意してるんですけど、たまたま僕が1人でタバコ吸っていたら、キアヌがお付きの人も無しにフラッと一人で入ってきて。なぜか2人でタバコ吸う状況になったんです。
MM:別にタバコ吸うだけだから付いてこなくていいよってことなんですね
西さん:何話せばいいんだろうって。でもとくに話すことないやと思って、お互い無言でタバコ吸ってた(笑)。
MM:キアヌは宣伝の人たちとのコミュニケーションとかってどうなんですか?
徳安さん:英語を話せたら結構普通にフランクな方だと思います。
西さん:そうですね、話しかければ全然。まぁ取材のときとかは記者が5人とかいて向こうのスタッフも大勢いるので、あまりコミュニケーションはないですよ。
石山さん:基本的に宣伝サイドは時間を詰めるからね。そんなことをやっている暇があったら次行くぞって。
徳安さん:大体嫌われる役割ですからね。僕らの仕事は(笑)
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)
ドニー、真田、リナ、最強布陣で挑んだ最新作!でもまさかのストライキ??
MM:そして最新作「コンセクエンス」になりますが、これまで1作ごとに順調な広がりを見せてきましたが…
西さん:そうですね。3のときは一応目標額は行ったので、褒められたし良かった良かったっていうところで4年経って、今回に至るという感じですかね。
MM:今回はまさかの試練が起きました。俳優ストライキが起きてキアヌが稼働できないという。
西さん:ストライキの問題もありましたけど、今回は配収タスクが前作のさらに倍で。倍プッシュみたいものが毎回来るわけですよ。
MM:でもキャスト見ていると、何かやれそうな感じもしちゃいますよね。
石山さん:結局アクションって、ちゃんとお金をかけると人は来るんですよ。3でちょっとかけたら結果につながったんですよね。だからもっと行ってみようっていう。だからその分、興収も倍みたいなそういう感じだったんです。
西さん:そうですね。今回は映画の内容的にもすごくキャッチーですし、もし来日が可能だったら配収目標もクリアできると思いましたよね。キアヌの来日っていつもは直前1ヶ月前に決まったりするんですけど、今回は4ヶ月ぐらい前から行くよ!って言われていたんですよ。
MM:今回、日本人キャストも話題ですからやはり真田さんも稼働する予定だったんですか?
西さん:もちろんです。理想としてはキアヌ、真田さん、リナ・サワヤマさん、チャド監督という並びの予定だったんですよ。
MM:最高ですね。あとはこれにドニーが加わったら完璧でしたね。
西さん:実現してたら、日本に関係している映画だ!みたいな感じでマスコミも凄く食いつきやすいし、人数も多いし大きく見えるので、今までやってなかった来日会見をやって、翌日にジャパンプレミアをやって・・・みたいな。さらに、映画の舞台の大阪で道頓堀クルーズみたいなことをやりたいと、こっそり思っていたんですけどね。
MM:しかしそれは夢となり・・・
西さん:割と高をくくっていたら、あれよあれよと雲行きが怪しくなっていって。一応会場で築地本願寺を見たんですよ。僕はまだやったことがないから、今回はぜひやりたいと思って。これは絶対に監督もキアヌも凄く喜ぶだろうし。しかも築地本願寺の広報をやっている方も、ジョン・ウィックが好きで「全部見てますよ」って言っていて。もう何もかもが見えている状態だった。
石山さん:今作は特に最初の段階でジョン・ウィックが日本に来てるっていうのあったじゃないですか。「あ、大阪なんだ」「今回は日本も舞台なんだ」っていうのがあったから、一番前宣伝もできて、期待値としてはもうマックスですよ。
MM:キャストの稼働が出来ないと決まったときの皆さんのテンションはどんな感じでした?
西さん:駄目だっていうのもすごい微妙な感じで。ずっとストライキが続いているじゃないですか。8月11日のお盆前ぐらいに、いつまでもストライキが終わらないからプランBに切り替えましょうということになって。もう狼狽です。メインのところが塞がってしまったから、その他を全部やるしかないみたいな感じですよね。
石山さん:そうですね。
西さん:もう思考が撤退戦になってたんですけど、これはクリエイティブを頑張るしかないよねっていう話で。なので作り物とかで頑張ろうとなって。チラシとかテレビスポットとか頑張って作ったり。初志貫徹ですよ!なんて言って(笑)本チラシが8月の上旬に出たんですが、ネタを切らさない方がいいので、一か月後に次のチラシを投入したり、クリエイティブで勝つってそういうことだよなぁと思いつつ、無理やり頑張って予算を捻出してやりました。映画のファンは育っているから、ファンの興味を絶やさないように。
MM:でもその効果もあってか、今回のお客さんを入れたイベントはどこも盛況で、ファンの熱気がすごい印象でした。
西さん:本当にありがたいです。でもやっぱりプレミアにはチャド監督の他にも誰か呼ばないととなって、藤岡弘、さんと阿部詩さんに来てもらったんです。
MM:スペシャルゲストで藤岡弘、さんと阿部詩さんが出てきた時も「藤岡弘!?」っていう会場の空気感がちょっとありましたよね。藤岡さんが喋り出したとき、ちょっとだけ笑いがおきていましたよね。
西さん:(藤岡さんを真似て)「いや~ほんとに凄い映画だったですねぇ~」
MM:やっぱレジェンド級の俳優さんって何か超越した存在感で、実際に生で見るとちょっと笑っちゃうんですよね。「しゃべったぞ!」みたいな(笑)しかし、映画がヒットして本当によかったです。
西さん:好調ですね。やっぱりサブスクのおかげで、ファンが育ってるんですよね。 今、シリーズものしか当たらないじゃないですか。あれって全部サブスクでおさらいとか、劇場で観てなくてもその後観れちゃうからどんどん育っていくんですよ。以前はシリーズものって興収が下がっていきましたけど。最近シリーズ物って全部上がってるんですよね。
MM:サブスクの存在は大きいですよね。わざわざDVDを借りに行かなくていいですからね。サクッと予習できちゃう。
西さん:あと、今回X(旧ツイッター)とか見ていると、公開前とかに「え!吹替ないの?」とか書いてあるんですけど、ジョン・ウィックって1~3まで吹替やってないからね(笑)「吹替ないなら観ない」って書いてあって。ということは多分、配信で見ている人たちなんですよね。
MM:SNSで「ほとんど喋ってないから大丈夫」っていうの見て笑いました。喋らないでひたすら戦っている(笑)
石山さん:バカボンドさんのやつね。あれ良いよね。
吹き替え版がまったく上映されおらず
新作のジョン・ウィックを観に行くか
悩んでるあなたへ pic.twitter.com/NdNE4UFAJR— VAGABOND (@TheVagabond1996) September 23, 2023
徳安さん:今回は広告とかでドーンと新宿とかでっかい、いつもワーナーとかディズニーとかが買うようなところをジョン・ウィックで抑えていたりしてますよね。
西さん:今回、劇場宣伝に関しては最大級にお金を使ったと思う。必ず次のビッグタイトルが抑える所を『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のタイミングでやれたんで、多分、次観るアクション映画はこれだ、みたいな雰囲気になっていたのであれは凄い良かったなって思って。
徳安さん:だいぶデカく見えましたね。
西さん:『ミッション:インポッシブル』観て、また洋画のアクション観たいな、みたいな雰囲気になってたんだよね、次は邦画とかじゃなくて。その受け皿になってるのと、3の時は同発でちょうど『ジョーカー』があって、映画としての話題を持っていかれた感があったんだけど、今回は敵がいない。
MM:割と一人勝ちというか、キャストプロモーションなしではあるけどもちゃんと観客には届けられたという
西さん:キャストプロモーションなしでも当たる時は当たるかなと。余談ですけど『キングスマン:ゴールデン・サークル』って来日もしていないし半年くらい公開もズレたんですけど。その間に観たい熱みたいのが溜まってる感じがすごい分かるんですよ。あれも1の評判がめっちゃ良かったから早く次観たいっていう。凄い観たい熱が溜まってるな、みたいのがあったんで、そんなに宣伝で奇を衒ったことしてないんですけど、結構当たったんです。多分それに近い雰囲気がジョン・ウィックはしてたんで。あんまり心配しないでもいくんじゃない?って思ってたんだけど、公開前だから信じてくれないというのもあって。
MM:実は自信があったんですね
宣伝プロデューサーによるおすすめキャラ&おすすめシーン
MM:最後に宣伝プロデューサーのお二人に歴代ジョン・ウィックの思い出キャラとシーンなどあれば是非お聞きしたいです。
徳安さん:僕は2のピーター・ストーメアですね。ロシアンマフィアのアブラム・タラソフ。バカ息子の叔父。志村さんが同時通訳をやった10分くらいのツイート動画が三千回くらい回って。あれが一番面白い(笑)全クリエイティブの中で一番好きです。
志村さん:あ〜!ありましたね!
徳安さん:まだあるかなと思って見てたんだけど、3分くらいしか続かなくて(笑)10分間くらい死んだやつのこと考えてるんですけど最高なんですよね。志村さんも一発撮りで。
志村さん:そうですね、普通に会社のデスク録音して。言われるがままに喋って(笑)
西さん:これはこのタイミングで日の目を見させた方がいいんじゃない、ツイッターで。
徳安さん:5年くらい、10年くらい寝かせてたので。なのでピーター・ストーメアが一番ですね。
MM:西さんいかがですか?
西さん:僕は1作目のオーレリオです。ジョン・レグイザモが好きで。ちゃんと2まで出てるじゃないですか、そのまま出てくるのかなと思ったらその後は全然出て来ない(笑)
MM:しれっといなくなってしまった。
西さん:もう3からは世界が日常じゃなくなってたんでね。なんか魔界に入っちゃったんでジョン・ウィックが。日常の修理工とかが出て来ないんじゃないかなと思いつつ。単にオーレリオが好き。
石山さん:いいですよね。ブィゴもそうだけど最初にあいつはやばいぞと、語り部たちが皆んな上手いんですよね。
MM:ちなみに志村さんはどのキャラが好きなんですか。
志村さん:寿司屋兼殺し屋ゼロのマーク・ダカスコスですかね。殺しの達人だけどジョンのことが大好きな感じが。
西さん:にじり寄ってくるっていう。すげー近くに座って(笑)
石山さん:僕はやっぱシャロンかな。今までコンシェルジュでホテルのあそこに立っていてたのに戦うんだっていう(笑)
西さん:あれすごくアガるシーン。だからテレビスポットの最後も二人で出てくるようにした。
MM:掃除屋のおじいちゃんとか。ジョン・ウィックを取り巻く環境が変わっちゃったから、ああいうキャラが出て来れなくなっちゃった。もったいない!
西さん:あんまり日常生活出て来なくなっちゃったんですよね。
石山さん:面白いキャラいっぱいいますよね。
MM:ちなみにおすすめシーンはありますか?
徳安さん:さっきと被りますが、ピーター・ストーメアの「鉛筆でだぞ!」っていうところですね。あとはランス・レディックが銃持っていくところ、オーレリオがアホ息子にキレるところ。
西さん:全部最高ですよね。
MM:僕は今作でいうと、階段落ちのシーンはすげえなって思いましたね。とことん落とすっていう気概を感じました(笑)劇場でもあまりに落ちすぎてみんな声出して笑ってましたね。
西さん:僕、去年の11月くらいにロスで観に行かせて頂いて、ポニーさんと一緒に。まだラッシュの段階だったので、ほぼ変わってないんですけど、やっぱり長いじゃないですか。パブリシストみたいなのが寄ってきて感想は?って聞かれたけど、英語の語彙力がないから”Too long”って(笑)常識的な監督だったらこの後切るだろうなって。完成版を見たらたら全く変わってないから、これは切らねえんだなっていう執念みたいなのを感じますよね。
MM:階段の落ちたあと、なんかあるのかと思ったらシンプルに上り直すっていう(笑)
西さん:来日したインタビューでチャド監督が答えてたのは、「この世界は神話の世界だから最後に行く時に色々挑戦して何度も跳ね返される」と。「神々に挑戦しようとしている跳ね返される男を表現したんだ」みたいな事を言ってましたよ。
徳安さん:語り継がれますね、あの階段は。
MM:階段落ち以外で4の面白いところはどこですか?
徳安さん:前半の濃度が凄いじゃないですか。ドニー・イェンで一個、真田さんで一個でチャプター4とチャプター5と、別々で作ってもいいんじゃないかってくらい凄かったんでだいブ贅沢でしたね。
MM:もともと真田さんって3でゼロ役の予定でしたよね。
西さん:あの寿司屋の役じゃなくて良かったですよね(笑)
石山さん:そうだよね、面白くなっちゃうよね。
徳安さん:見どころがすごいいっぱいある。
西さん:キャラクター、めっちゃ使い捨てじゃない?ハル・ベリーとか普通広げようとしてもう一度出すけど、喋れないルビー・ローズとか。過去を振り返らない。キャラクター使い捨てもいいところ。
MM:その辺りの死んでない良いキャラクターは、今後スピンオフみたいな形で見れるかもしれませんよね。『コンチネンタル』(Amazonプライムで配信中)とか『バレリーナ』(2024年6月7日全米公開)とか、どんどん世界を拡張していってますし。期待感は膨らみますね。
【ストーリー】
裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人、シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた…
【キャスト】
キアヌ・リーブス ドニー・イェン ビル・スカルスガルド ローレンス・フィッシュバーン 真田広之 リナ・サワヤマ ほか
【スタッフ】
監督:チャド・スタエルスキ
配給:ポニーキャニオン
原題:JOHN WICK:CHAPTER4(2023/アメリカ)
®, TM & © 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:https://johnwick.jp/
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