【プロが見たこの映画】『アリスとテレスのまぼろし工場』宣伝日記 【後編】
監督がくれたキーワードは「青春から全力で逆走」
ティザーポスターは謎の少女にし、「この少女に触れてはいけない」というコピーとともに制作した。
ビジュアル決定の裏には、こんな1行では表せられない背景がある。岡田監督、平松副監督、美術監督の東地さん、キャラクターデザインの石井さん達との調整を経てビジュアルは決まっていく。こちらの想いを伝え、それをビジュアルとして描いてもらわなくてはいけない大切な作業。どうしてこのビジュアルにしたいのか?描くキャラクターはどういう気持ちでそこにいるのか?など、いろいろな会話を経て、どんどん洗練されていく。さらにビジュアルが決まっても悩みは尽きない。
これで本当にいいのか?媚びを売ってないか?アートになりすぎて無いか?気になる存在になれているか?考えて考えて話し合って、最終形が決まっていく。そして、このポスターに込めたコンセプトはその後発展し、本編の中でも生きることになる。
ティザーポスター(左)、本ポスター(右)
そして本ポスター。岡田組の皆さんはめちゃくちゃ忙しいのに、本当に丁寧に対応してくれる。なので、本ポスターで表現したいことを伝え、前に進むはずだったが、それは叶わなかった。時間が経つにつれ、本編制作も佳境になってくるからだ。宣伝の我々が本編制作の邪魔をする訳にはいかない、なので泣く泣くプランを変更せざるを得なかった。我々に与えられた課題は、今ある素材で最高のビジュアルを作ること。情報解禁の際に監督が発信した「甘酸っぱい青春物とは全力で逆走している、ヒリヒリした青春を描いています」という言葉から、いろいろと発想を膨らませて、今のビジュアルにたどり着いた。
青春から全力で逆走、世界観の素晴らしさ、岡田監督が一番表現したかったこと。それを詰め込んだつもりだ。
振り返ればティザーは五実を描き。本ポスは正宗と睦実が描かれている。最初から狙っていたと言った方がカッコ良いかもしれないが、苦肉の策から生まれた奇跡的なビジュアルだった。
ついに本編完成
ついに本編が完成した。9月4日に新宿ピカデリーで行われた完成披露試写会でお披露目する。なんと、前日まで作っていたというのだ。ギリギリまで手直しし、本当に出来たてホヤホヤの本編を皆さんに見ていただけるのは本当に嬉しい。会場には制作スタッフ主要メンバーの皆さんも駆けつけてくれていた。彼らも大画面で見るのは初めてなのだ。
上映後拍手が沸き、イベントは大成功。素晴らしい感想もたくさんいただいた。
イベント後に皆さん控え室に集まってお話をされていた。大仕事をやり遂げ、本当に輝いてました。でも、そこに僕らの入る余地はまだありません。僕らは自分たちの居場所を作るためにも、大ヒットさせるしかないのだ。
皆さんの熱意をすぐ近くで感じてきた。だから絶対に当たってほしいと思う。公開直前になるといつも思うのは、「このやり方で本当によかったのか?」ということ。ヒットの法則が存在しないのだから、安心材料はどこにもない。思いついたことは全部やる、その先にしかヒットはないと知っている僕らは、まだまだやれることを探すしかないのだ。
宣伝では伝えられない、まぼろし工場の本当に面白いところ
本作の本当に面白いところを伝えるのは本当に難しい。宣伝では起承転結の「起」の部分しか出せてないのかも知れません。本当に面白いところは、押しとどめた感情にドライブが掛かってから。そこから先はノンストップで展開する。
面白い部分を全部出してしまう宣伝手法もあるが、本作に関してはそれがはまらなかった。本作は主人公たちが置かれた状況を伝え、変化してはいけない環境で生きる心を感じてもらい、さらに止められない衝動的な感情を伝えるに留めた。この先に何があるのか?宣伝を見て、興味をもってもらえていたら、とても嬉しい。
『アリスとテレスのまぼろし工場』宣伝担当
『アリスとテレスのまぼろし工場』
大ヒット上映中
公式HP:https://maboroshi.movie︎
脚本・監督:岡田麿里
声の出演:榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲、林遣都、瀬戸康史 他
制作:MAPPA
配給:ワーナー•ブラザース映画、MAPPA
突然起こった製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす中学三年生の正宗。いつか元に戻れるように、住人たちは変化を禁じられ鬱屈した日々を過ごす中、謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは喋ることのできない、野生の狼のような少女―。二人の少女と正宗との出会いが世界の均衡を崩していき、日常に飽きた少年少女たちの、止められない<恋する衝動>が世界を壊し始める―。
©新見伏製鐵保存会
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