第68回:アニメ『君の膵臓をたべたい』|死ぬまでに美味しいパスタを食べたい!選んだのはムール貝のトマトパスタ!【瀬田ミナコのシネまんぷく】
共感シアターでもお馴染み、女優の瀬田ミナコによる連載コラム。毎回「映画」と「食」をテーマに、ゆるゆるとお届けします!
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■今回の映画:『君の膵臓をたべたい』(2019)
今回は、劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」です。原作小説、実写映画も観てきた私ですが、アニメにもまた違った良さがあり、ぜひおすすめしていきたい映画です。
実写映画との違いも交えつつ、劇場アニメ「君の膵臓を食べたい」の感想を綴っていきます。
まずは作品の紹介です。
原作となる小説は、住野よるさんのデビュー作「君の膵臓をたべたい」です。その一見グロテスクで衝撃的な題名から、小説の発売当時かなり話題になっていたのを覚えています。2017年には浜辺美波さん、北村匠海さん主演で実写映画化されこちらも話題になっていました。そして2018年に、今作、劇場アニメ版が公開されました。
物語の主人公は、人と深く関わることを避けながら生活している男子高校生の「僕」。僕はある日、偶然にもクラスメイトである山内桜良の「共病文庫」なる日記を読んでしまいます。そこには、元気で明るい彼女が膵臓の病気に侵され、余命も残り少ないということが記されていました。これまで家族以外には病気の事を打ち明けていなかった桜良は、残された少ない時間を、唯一本当の事を知る「僕」と楽しく過ごすことにします。そして「僕」と桜良の、友達とも恋人とも違う、しかし確かに愛のある関係が始まるのでした。
原作、実写映画、アニメ版、どれも話の大筋は同じですが、実写映画では大人になった「僕」が描かれていたのが大きな違いです。どちらもすごく良い映画ですが、アニメ版のほうが原作に忠実な作りになっていて、初めて小説を読んだ時の、切なくも温かい感動を再度味わうことが出来ました!(それぞれの良さがあるので実写版もおススメです)
ヒロインである山内桜良がとても魅力的でした。余命宣告という誰もが絶望してしまいそうな状況なのに、病気もやがてくる死をも受け入れ、自分らしく生きる姿は達観しています。しかし本心では、多くの人が抱くような恐怖心を持っていて、共感できると同時に、尊敬したくなる登場人物です。「僕」をついからかい過ぎてしまったり、踊っているところを見られて恥ずかしがったり、高校生らしい可愛らしさもあって、親しみを持てる人物でもあります。彼女と正反対の「僕」が彼女に抱いた、友情とも恋愛ともちょっと違う、「ああなりたい」という気持ちがよく分かります。
「僕」については最初、不思議な人だなぁと思いました。友達がいないとのことですが、普通にコミュニケーション取れてるし、優しいし、特に世の中を恨んでいそうな風でもない。なぜ他人と深く関わることを避けているのかよく分からない人物だったんです。物語の終盤、桜良が「僕」の事をどう見ていたか明らかになるシーンをみて、「僕」の魅力が分かってきました。桜良にしても、「僕」にしても、登場人物がどんな人間なのかという部分が非常にうまく描かれていたと思います。
終盤の展開は何度観ても衝撃です。
余命宣告の展開になると「あと何年しか生きられない」と思ってしまいますが、明日死ぬかもしれないのは病気の人も健康な人も関係なく、皆同じだということを痛感しました。セリフのところどころで、「明日死ぬかもしれないのに」「君も私もいつかは死ぬ」というどこかで一度は聞いたことはあるセリフがありますが、結末を知った後に再度観ると、その一つ一つの言葉の重みが全然違います。だからこそ、相手に伝えたい言葉は伝えるべきだと思ったし、題名にもなっている「君の膵臓を食べたい」という言葉が相手に届いていたことがとても嬉しかったです。
お話の流れとしては、余命宣告を受けた少女が残された時間を同級生と過ごし、やがてこの世を去る、という悲しいものですが、観終わった時に悲しい気持ちには一切なりませんでした。悲しい辛い涙ではなく、心が温かくなって泣けるすごい物語です。
そしてもう一人の重要な登場人物が桜良の親友、恭子です。彼女は桜良の病気の事は一切知らされていないので、急に桜良の近くをうろちょろし始めた「僕」に敵意むき出しです。「桜良になんかしたら、殺すから!!」という保護者気取りのこのセリフ、、、。私も中高生の頃同じようなことを言っていたのを思い出し、懐かしくなったり恥ずかしくなったり。(笑)「僕」にかなりきつく当たる人物ですが、嫌いになれない。むしろ、あまり感情的になるシーンの少ない主人公二人と並ぶと、イライラしたり人にあたったり、一番自分に近いのかもしれません。
全体を通して光の演出がとても印象的で、どこをとっても、美しく温かい印象のある絵柄でした。中でも花火のシーンはすごく良かったです。花火そのものも美しいですが、登場人物たちの顔を照らす色とりどりの光は切なく美しく、同時にかかるsumikaによる挿入歌の良さも相まって、名シーンだったと思います。
余談ですが、お話の中に「真実か挑戦かゲーム」というゲームが出てきます。私はこの物語で初めて知ったのですが、どうやらパーティーや飲み会で行われるゲームのようです。映画を観て、こんなにドキドキするゲームがあるんだ!と驚きました。ここでも桜良は「僕」の可愛いと思うクラスメイトを聞いてみたりして、反応を面白がっているのですが、その遊びの中に本心が見え隠れするので本当に色んな意味で心臓がドキドキしました。
さて、今回作るのは、桜良の死ぬまでにやりたいことリストにあった「おいしいパスタを食べる」という項目にちなんでパスタです!映画の中では「僕」を連れて、ムール貝の乗ったパスタを楽しそうに食べていました。
死ぬまでにやりたいことが、近所で出来るような日常的なものばかりで、特に食べ物系が多かったのが可愛らしいと同時に、ちょっとだけ切なかったです。
ではさっそく作っていきます。
ムール貝は生のものが手に入らず、味付きの冷凍のものを用意しました。
フライパンで蓋をしながら蒸し焼きにしていきます。
その間にトマトソースづくり!
トマトを角切りにし、ニンニクと唐辛子はみじん切りにします。
オリーブオイルを熱したフライパンにニンニクから入れて香りを出します。
唐辛子は焦げやすいので少し遅れて投入。
トマトを入れて崩すように炒めていきます。
ソース状になってきたらハーズソルトと胡椒、少量の砂糖で味をつけ、先ほどのムール貝も入れてさらに煮込みます。
パスタを少し固めに茹でたらトマトソースのフライパンに移し、よく絡めていきます。
見た目と味のアクセントにバジルを乗せれば完成です!
いかがでしょうか?
桜良のお気に入りのカフェはとってもお洒落だったので、そこに出てきてもおかしくないような見た目を目指しました!
フレッシュトマトを使ったさっぱりしたソースと、ムール貝のうま味がよくマッチしています。
実は貝類ってあまり食べないので、初ムール貝だったのですが美味しいですね!
人は本当にいつ死ぬのか分からないのだから、私も毎日おいしいもの沢山食べていこうと思います!
ごちそうさまでした!
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今回取り上げた作品はコチラ!
【キャスト】
高杉真宙 Lynn 藤井ゆきよ 内田雄馬 福島潤 田中敦子 三木眞一郎 和久井映見
【スタッフ】
監督・脚本:牛嶋新一郎
原作:住野よる
原作イラスト:loundraw
配給:アニプレックス
アニメーション制作:スタジオヴォルン
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瀬田ミナコ(Acstar所属)
1996年4月3日生まれ 東京都出身
出演作品:映画「ゆずりは」「不能犯」(2018)
映画「種まく旅人~華蓮のかがやき~」全国順次公開中!!
その他:共感シアターでMCやコメンテーターとして活躍中
Acstar:http://acstar.jp/talent/minako_seta.html
Twitter:@minako_seta
『瀬田ミナコのシネまんぷく』これまでの連載記事はこちらから!
https://moviemarbie.com/special/cinemanpuku_index/
※瀬田ミナコが出演中の共感シアターのアーカイブ動画はこちら!