第67回:『紅の豚』|飛行艇乗りの男たちの憩いの場!ホテル・アドリアーノで食べるサーモンムニエル!【瀬田ミナコのシネまんぷく】
共感シアターでもお馴染み、女優の瀬田ミナコによる連載コラム。毎回「映画」と「食」をテーマに、ゆるゆるとお届けします!
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■今回の映画:『紅の豚』(1992)
ジメジメとしたお天気が続き、なんだか気分もすっきりしない毎日が続きますね。
今日私が選んだ映画は「紅の豚」!アドリア海の美しい海と広い空、そして主人公の豚の痺れるカッコよさが印象的なこの作品、夏になると毎年観たくなるのです。今回はこの「紅の豚」で夏に思いを馳せ、ジメジメとした梅雨を乗り切りたいと思います!
「紅の豚」は1992年に公開されたスタジオジブリ制作のアニメ映画です。宮崎駿監督の自身が描いた「飛行艇時代」という漫画を原作にしていますが、漫画ではヒロインの一人であるジーナは登場しないそうです。
物語の主人公は豚の姿をした一人の男。ポルコ・ロッソと呼ばれる彼は、紅の飛行艇に乗り、空賊を退治する賞金稼ぎを生業としていました。
空賊たちは「邪魔ばかりされてはかなわない」ということで飛行艇乗りのカーチスを用心棒として雇います。カーチスは空中戦でポルコに勝つことで名を挙げようとしており、さらには一目ぼれした女性がことごとくポルコに好意を抱いていることもあり、とにかくポルコに勝ちたい、そんな男です。
飛行機の設計を務める17歳の少女フィオとの出会いと、カーチスとの勝負を軸に進むストーリーの中で、ポルコの過去、信念、時代の移り変わり、昔馴染みのジーナとの関係性が垣間見えてきます。
かつてイタリア空軍のエースとして活躍した飛行艇乗りの生きざまを描いた大人のアニメ作品です。
大人のアニメと書きましたが、私は子供の頃から、とても楽しくこの映画を観ていました!
主人公が豚という驚きの設定、迫力のある空中戦、登場人物たちの面白い会話、ポルコの渋いかっこよさ。子供でも楽しめる要素がいっぱいでした。
「大人の」と感じる部分は、原作には登場しないジーナとの関係性です。ジーナの話をする前にまずは子供でも大人でも楽しい部分の感想から!
とにかく飛行艇がかっこいいんです!小回りが利いて、広い空を自由に飛び回る姿は憧れ以外の何ものでもありません。操縦の仕方もアナログな感じなのがまた最高です。
ポルコの乗る紅いサボイアは青い空と海によく映えるし、ピカピカのボディが太陽の光を反射させる瞬間なんかはとても美しいです。実在する型の飛行艇も登場するようなので、詳しい方はそこも楽しいポイントかもしれません。
ポルコが認めるほどの腕前を持つカーチスとの空中戦も、間違いなくすごいシーンなのですが私の一番のお気に入りは、飛行機の修理を依頼したミラノのピッコロ社の倉庫から飛び立つシーンです。イタリア空軍に協力しないが故に、イタリアではお尋ね者のポルコ。完成したばかりの飛行艇でテストもなしに飛び出します。狭い用水路を水しぶきをあげながら突っ走り、エンジンを轟かせながら飛び立つ様はド迫力でした!エンジンの振動や風圧を実際に感じるような臨場感のあるシーンでした。そしてこのフライトには設計士の少女フィオも着いてきたのです。
フィオはピッコロ社の経営者の孫で、明るく元気な17歳の女の子です。才能もある、度胸もある、頭がよくて交渉力もある、そして可愛い。最高なヒロインです!特に度胸に関しては驚くほどで、急に空賊に囲まれたにもかかわらず、彼らに説教を始めました!さらに、ポルコとカーチスのリベンジマッチを取り付けるために、「ポルコが負けたらカーチスと結婚する」という条件まであっさり飲んでしまいます。ポルコの実力も大して知らないのに、自分の結婚をかけてしまうなんて、度胸ではなく無鉄砲という言葉のほうがぴったりです。
そんなフィオの行動の数々に、ポルコは毎回タジタジしていて、それがまた面白いし、良い関係だなぁと思います。
最初フィオが飛行艇の設計をすると知ったポルコは「子供だから、女だから」という理由で断ろうとします。しかし最終的には彼女と熱意と腕を買って任せることにします。ポルコが年齢や性別で人を判断するような人じゃなくて良かった!
映画の中ではポルコがなぜ豚になったのか、どうしたら人間に戻るのかなどはまったく描かれていません。当たり前のように豚として出てきて、周りの皆もそれを普通に受け入れている不思議さ。「紅の豚」といえば今でこそ超有名作品なので普通に見れますが、劇場で公開された当時、初めて観た人は、豚が飛行艇を乗りまわすこのお話をどう見たのかちょっと気になります。(笑)
しかし、そんな違和感もすぐに忘れてしまうほどポルコがかっこいいんです。見た目は豚でずんぐりむっくり。なのにこんなに素敵なのはどういう事でしょう!中身のかっこよさが見た目の良し悪し(この作品の場合、悪し、というか人でない)を超えることを証明してくれる映画です。
特に、ポルコの「殺しはしない」というポリシーを知った時は、フィオと一緒に私まで豚に恋してしまいました。作中登場する女性陣がみんなポルコ大好きなのも納得です。
このポリシーは、戦時中の経験からくるものだと思うのですが、これがこの映画のすごい所で、過去にポルコが体験したことや、感じたこと、そこからくる彼の生き方みたいなものが、少ないシーンで本当に良く描かれているんです。宮崎駿監督は本当に天才だとしみじみ思います。
さてお待たせしました。「大人のアニメ」な要素のジーナとの恋についてです。ジーナはこれまで飛行艇乗りと3回結婚、そして三回死別しています。しかもその結婚相手のうち、少なくとも一人はポルコの友人です。その間もずっと交友関係が続いていたであろうポルコと、ここから異性としての愛情を抱く感じが、正直まだよく分からないのです。すごくカッコいいし大好きな映画だけど、ジーナとの恋については私にはまだは早かったようです。
年齢というより、もっと色んな経験をしないと、この二人の関係にグッと来ないのかなぁなんて思います。
物語はフィオの語りで幕を閉じます。それによるとジーナのかけ(昼間にポルコが会いに来たら、今度こそ彼を愛そうと決めている)がどうなったかはジーナとフィオだけの秘密だそうです。皆さんはどっちだと思いましたか?
私は、ジーナは賭けに負け続けるんじゃないかと思います。そして、お互い大事だけど恋人ではない友達以上恋人未満を続けてほしいです。
でもまた経験を重ねてたら考えが変わるかも知れません。最後フィオのキスでポルコが人間に戻ったような描写もあったので、色んな解釈ができますね!
それでは、今日の映画メシはジーナが経営するホテル・アドリアーノでポルコが食べていたサーモンムニエルです。きれいな海で育った捕れたてのサーモンを使っていることでしょう!
まず先に付け合わせのニンジングラッセを作ります。
ニンジンの皮を剥いて一口大に切り、角を落として丸みを出します。
水とバターと砂糖を鍋に入れ切った人参も加えます。そしてコトコト煮込んでいきます。煮汁が減って、ニンジンに照りが出てくればOK!
次に、映画の中ででムニエルにかかっていたホワイトソースを作ります。
にんにく、玉ねぎ、ブラウンマッシュルームをそれぞれみじん切りにします。
フライパンにバターを熱し、先にニンニクを炒めて香りを出します。
次に玉ねぎとマッシュルームを加え、弱火でじっくり炒めます。塩コショウを振ったら火をとめ、生クリームと牛乳を牛乳を加えます。
小麦粉を使わなくてもトロッとするくらいまで煮込み完成です!
そしていよいよムニエルです!塩コショウを振っておいたサーモンに小麦粉をまぶし、バターで焼くだけ!今日はバターが大活躍です。
焼けたらお皿に盛り付け、ホワイトソースをかければ完成です!
簡単なのにお洒落な見た目になるのが嬉しいです。
ジーナのホテルに出てきてもおかしくない見た目になったかな!?
お味もばっちり!サーモンは外はカリッと香ばしく中はフワフワに焼けました。そしてホワイトソースに入れたマッシュルームがいい仕事してくれてます!
玉ねぎとニンニクだけのホワイトソースは家庭料理の味ですが、マッシュルームの香りが加わることで、一気にワンランク上の料理になりました。(今後もホワイトソース作る時はマッシュルーム入れようと思います)
他の飛行艇乗りは、お店でジーナの歌を聞きながらお酒を飲むのを楽しみにしているようでしたが、ポルコは部屋で夕食を食べながら、ジーナがみんなのためでなく自分と話すためだけに部屋に訪れる時間を大事にしていたような気がします。
(作ったくせに嫌いなニンジングラッセも)ごちそうさまでした!
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今回取り上げた作品はコチラ!
【キャスト】
森山周一郎 ⋅ 加藤登紀子 ⋅ 桂 三枝 ⋅ 上條恒彦 ⋅ 岡村明美 ⋅ 大塚明夫
【スタッフ】
原作・脚本・監督:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石譲
配給:東宝
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瀬田ミナコ(Acstar所属)
1996年4月3日生まれ 東京都出身
出演作品:映画「ゆずりは」「不能犯」(2018)
映画「種まく旅人~華蓮のかがやき~」全国順次公開中!!
その他:共感シアターでMCやコメンテーターとして活躍中
Acstar:http://acstar.jp/talent/minako_seta.html
Twitter:@minako_seta
『瀬田ミナコのシネまんぷく』これまでの連載記事はこちらから!
https://moviemarbie.com/special/cinemanpuku_index/
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