話題の兆し〜亡き母への想いを映画に込めた異色のラブストーリー『Last Lover ラストラバー』岡元雄作監督インタビュー
最近、若者を中心に熱狂的なファンを獲得しつつある、観る者の心にグサリとくる話題のラブストーリーがあるというー。1月31日に公開が迫った映画『Last Lover ラストラバー』だ。不慮の事故で死んでしまった恋人が幽霊として帰ってきたことで、主人公・美優の周りで奇妙な現象が起きることを描いた、異色のホラーラブストーリーだ。既に海外の映画祭でも賞を受賞するなど、話題になっている本作。今回、監督を務めた岡元雄作に本作に込めた想いを聞いた。
取材:梅崎慎也(ムービーマービー編集部)
映画が好きな母のために何かしたかった
ー映画を拝見したのですが、想像してたイメージを超えてきて凄い映画でびっくりしました!恋愛映画の中にホラー要素が少しあるくらいだろうと勝手に思い込んでいたんですけど、結構ガッツリとホラー演出されていましたね(笑)
岡元雄作監督(以下”岡元”表記):その部分を褒めて頂けるのは本当に嬉しいですね。予告編でもそこまでホラー感は出していないので結構びっくりされる方が多いです。
ーそもそも『ラストラバー』を作ろうと思ったきっかけは?
岡元:2018年の4月に私の母親が亡くなったんですが、母は地元の新潟で「十日町シネマパラダイス」という映画館を運営していたんです。その映画館も母親が亡くなると一緒に閉館になってしまって。映画が好きな母のために何かしてあげたいなって思った時に、映画館をやるほど映画が好きな人だったんだから、映画で追悼したら良いんじゃないかって思ったのがこの企画が始まりです。
ーというと企画の立ち上げは完全にゼロからのスタートだったんですか?
岡元:ゼロからですね。4月20日に母が亡くなって、映画の企画を考え始めたのは5月の頭なんですけど、もう7月には撮影始めてました。だから実質2ヶ月ぐらいすね。こう言う話にしようって決めて、1ヶ月で脚本を書いて、そこからスタッフ集めて、7月頭に撮影し始めました。
ー凄いスピードですね。キャストも同時進行で声をかけていったんですか?
岡元:9割ぐらいがオーディションですね。すごい人数が応募してくれて。400人ぐらい応募してくれたんですよ。そこから書類で60人まで絞って、そこから選びました。
亡くなった母への想いを最後のカットに込めた
ー『ラストラバー』にはロマンス、ホラー、ミステリーなど色んなジャンルが入っていますよね。最初からこういう作りにすると考えていたんですか?
岡元:ちょっと欲張っちゃいましたね(笑)。初めに思ったのは、母親を追悼するという事情があったので「死に関すること」をテーマにしようと思いました。母親と子供の話にしようと考えていたですけど、自分の思い入れが強すぎて多分失敗するだろうと思ったんですね。母親は映画館を経営していたので、映画を見る目がすごく厳しい人でしたから、まず映画としてちゃんと楽しめなければいけないと思ったんです。確かにきっかけは「亡くなった母親にもう一度会いたい」ということですが、戻ってきたら嬉しいけどずっと家にいたら、それって幸せなことなのかなって。そういうことを色々考えて行ったら、恋愛だったり、ホラーの怖いっていう要素がある映画を考えました。
ーちなみに本作は愛する人が幽霊になって戻ってくるお話ですが、やっぱり連想するのは『ゴースト ニューヨークの幻』(1990)だと思います。これは意識されましたか?
岡元:やっぱり意識したし、参考にもしています。『ゴースト』と差別化するうえでジャンルを一緒にしてはいけないなとも思いましたし、違う視点で観客に問うべきメッセージを作るべきだと考えました。それで、亡くなった母と僕がどう向き合うべきかという思いを最後のカットに込めたんです。
ー幽霊の存在を表現するのに「トントントン」っていう音の演出がものすごく秀逸で、あのホラー演出を見たとき『へレディタリー/継承』(2018)を連想しました。
岡元:そこを褒めていただけると嬉しいですね!『へレディタリー/継承』もホラー演出としてすごく参考にさせていただいた映画です。ずっと変な機械音みたいなのが鳴っているんですよね(笑)ネジがギコギコっていうのをずっと不安のシーンで鳴らしていたりとか。結構音の演出はこだわりましたね。
ーエンディングで流れる天野花さんの書き下ろしの主題歌も素晴らしかったですね。
岡元:天野さんへのお願いの仕方が、観終わった後に曲を聴きながらもう一回ストーリーに想いを馳せるような、希望があるけど凄く切ないような感じの曲にして下さいってお願いしたんです。凄く考えていただいて、歌詞とかも映画のシーンから取ってくれたんです。映画を観終わった後も、その歌詞とかを聞いていろんなシーンを呼び起こして、歌でも泣けるって言う感想を結構聞きますね。
海外映画祭でも大絶賛、事前の試写会でも大きな反応!
ー本作はすでに岡元監督の地元の新潟で上映されていますが、地元の皆さんの反応はどうでしたか?
岡元:すごく良かったんですよ!どう受け入れられるのか未知だったんですけど、僕が描きたかったテーマとかはすごく伝わりました。母親の知り合いがたくさん来てくれて「お母さん絶対に喜んでくれてるよ」とか言ってくれたりして。本当に良かったですね。
ー海外でも賞を受賞しましたね!おめでとうございます!
岡元:ありがとうございます!ベルリンの映画祭で最優秀賞を受賞したのですが、審査員の方々が皆この映画のことを気に入ってくれたんです。僕の演出とか物語、それに役者の皆さんの演技も大変素晴らしかったって褒めて頂けました。本当に嬉しかったですね。
ー試写会での反応はどうでしたか?
岡元:都内で3回ほど試写会を行なったのですが、凄く反応が良かったですね。映画を楽しんでくださったり、作品のテーマに共感してくださったり。皆さん結構Twitterとかで感想も呟いてくれて口コミがどんどん広がっていて。あとカメラを止めるな!』の上田慎一郎監督もコメントをくれたんです。そういったこともあって口コミがどんどん広がっているのを感じます。
<試写会で寄せられたコメントを一部紹介>
「愛する人の死というのを自分に置き換えて考えさせられました。最近見た中で1番心に来た映画。」(10代男性)
「本当に感動しました!最後のシーンで泣いてしまいました。最高にロマンティックです。」(20代女性)
「ホラーやサスペンス、ラブロマンスなど色んな要素が、想像を超えたタイミングで切り替わっていく。これまで観たことがない映画でとても楽しめました。」(60代男性)
「普通のラブストーリーだと思ったら予想していたものと違った展開になって引き込まれた。」(30代女性)
「俳優さんの演技が素晴らしい!エンディング曲も良かった!」(50代男性)「岡元監督が亡くなった母を追悼するために創った本作。誰かを想って創られた作品は強い。想いが込もった美しいラストショットに心が震え、映画を観終わった直後、何の用もないのに母に連絡してしまった。岡元監督の最高傑作。ぜひ劇場で体験してください。」(映画監督 上田慎一郎 『カメラを止めるな!』、『スペシャルアクターズ』)
ー1月31日には、いよいよ一般公開ですね。今の心境はいかがですか?
岡元:すごく嬉しさもあり、その反面すごいドキドキしてますね(笑)母を追悼するためにこの映画を作ったので、公開するにあたってすごい複雑な気持ちがあります。嬉しい気持ちと、喜んでくれるかなって言う気持ちと。母親が映画館を経営していたので、もし客入りが悪かったら母に怒られるんじゃないかなって(笑)
亡き母を想い製作した『Last Lover ラストラバー』。本作に込めた想いを静かに、しかし熱く語ってくれた。上田監督のコメントにもあったように誰かを強く想って創った本作だからこそ、多くの人がそのメッセージを感じ取り、みんなの心に響いたのだろう。是非皆さんにも岡元監督が本作に込めたメッセージを感じ取ってほしい。
『Last Lover ラストラバー』は2020年1月31日(金)よりテアトル新宿で2週間限定レイトショーにて公開。
岡元雄作(おかもと ゆうさく)
1980年新潟県生まれ。映画監督、CMディレクター。株式会社アストロサウンドウィッチ・ピクチャーズ代表取締役。映画・TVCM・MV・番組・ドラマ等の制作を行う。代表作に『Last Lover ラストラバー』、田畑智子・山中崇主演の長編映画『Music Of My Life』、ENBUゼミナールシネマプロジェクト第7弾で工藤綾乃主演の長編映画『きみはなにも悪くないよ』、升毅・朝加真由美主演の『不旋律のソナタ』、岡本夏美主演の『HANA』等。その他国内外多数の映画祭でグランプリを受賞。ディレクターとしては、King & Prince 「memorial」初回特典番組「メモリアルケーキを作ろう」、ライフスタイルアプリ「LOCARI」TVCM、「日本テクノ」TVCM、等多数ディレクション。
【あらすじ】
朝、美優が目を覚ますと隣いるはずの光希がおらず、いつもふざけている光希のイタズラかと思った美優だったが、光希は夜間運転の事故で亡くなっていた。それ以来、美優の周囲で殺人事件や怪奇現象が起こりはじめ、美優は先輩の小西に相談する。真面目で親身になってくれる小西に次第にひかれていく美優だったが、そんなある日、美優に未練のある光希が地縛霊となって現れ……。
【キャスト】
優美早紀、安藤慶一、新井敬太、金久保マユ 他
【スタッフ】
監督・脚本・製作・撮影・編集:岡元雄作
公式HP:http://lastlover.jp/
2020年1月31日よりテアトル新宿にて2週間限定レイトショー公開!!
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