『ミミック』(97) 嫌悪感MAX!人間に擬態する巨大〇〇がNYに現れる!
限定空間で襲われる動物パニック映画特集④
現在大ヒット上映中の映画「クロール-凶暴領域-」は閉鎖された空間の中で人間たちが巨大なアリゲーターに襲われる恐怖を描いている。映画の歴史の中でこうした動物パニック映画の傑作は数多く作られてきたが、その多くはキワモノ映画として扱われることが多い。そこで今回は「限定空間で襲われる動物パニック映画」を特集。今一度、動物パニック映画の素晴らしさを感じようではないか!!
『ミミック』(1997)
人間が最も忌み嫌い昆虫、ゴキブリ。もし、ゴキブリが人間に擬態して襲ってきたら・・・、考えただけでもゾッとする。そんな悪趣味な映画を作り出したのが、今やアカデミー賞受賞監督にまで上り詰めたギレルモ・デル・トロ。実はかなり悪趣味な描写をすることで有名な監督でもある彼の悪趣味描写が存分に現れているのが本作『ミミック』である。
【ストーリー】
次々と子供を死に至らしめる未知の伝染病がNYで発生。被害が拡大するのを防ぐため、昆虫学者スーザンは感染源であるゴキブリを全滅させるべくアリとカマキリの遺伝子を合成した新種の昆虫《ユダの血統》を生み出す。事態は収拾されたが、それから3年後、NYでは奇怪な猟奇殺人が続発していた。スーザンの元に地下鉄で発見された虫が届けられるが、それは《ユダの血統》の特徴を受け継いだ突然変異のものだった。そして調査のため地下に降り立ったスーザンの前に現れたのは、人間の姿に擬態する巨大な昆虫だった……。
この映画は遺伝子操作によって生まれた怪物に人間が殺されるという展開で、まるで私たちへの警鐘のようにも感じる映画だ。人間が全てを操れるなどと思ったら大間違いであると、生命というのは必ずしも予想通りにはならないものである。利己的な理由で作り上げた生命に、人間が殺されるというのは何とも皮肉が利いているし、そう言う意味では本作は『ジュラシック・パーク』にも通ずるテーマ性を持っているとも言える。
意外な程に豪華なキャスティングにも注目したいところだ。ヒロインを演じたミラ・ソルヴィノはこの時は既にアカデミー賞女優だったし、同じくメインキャストの一人であるF・マーリー・エイブラハムもまた『アマデウス』の名演でオスカーを受賞している。そして若き日のノーマン・リーダスも本作に出演している。クリーチャーの造形以上に、そこに込められたストーリーが優れているからこそ、これだけのキャストが集まったのだろう。
何よりも嬉しいのは監督のギレルモ・デル・トロが今もなお本作に通ずる悪趣味モンスターを生み続けていることだ。アカデミー賞に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』のクリーチャーも、そのデザインはかなり歪だ。『パンズ・ラビリンス』や『パシフィック・リム』に登場したクリーチャーも同様だ。今もなお初心を忘れずに、楽しんで新しいクリーチャーを世に放っている。デル・トロ監督には久々に本作のような悪趣味全開の映画を作ってほしいものだ。
『ミミック』(1997年)
監督:ギレルモ・デル・トロ
キャスト:ミラ・ソルヴィノ、ジェレミー・ノーサム、F・マーリー・エイブラハム ほか
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