いろいろな“ビギニング”映画特集④『リング 0 バースデイ』
“ビギニング”映画特集④
映画がヒットし、シリーズ化が進むと作られることが多いのが前日談。最近もバットマン宿敵の誕生を描いた『ジョーカー』が公開され大きな話題となっている。そしてまた1本、新たなビギニング映画が産声を上げた。伝説上の人物であると同時に、数多くの映画が作られた英雄ロビン・フッド。そんなフッドの誕生秘話を描いた『フッド ザ・ビギニング』が10月18日に公開となる。そこで今週の「今夜何観る?」コーナーでは、古今東西のいろんな“ビギニング”映画をご紹介したいと思います!
『リング 0 バースデイ』(2000年)
●最強の怨霊の過去に隠された悲劇
20世紀の最後の年に公開された本作。ジャパニーズホラーブームの火付け役となった『リング』に登場する平成のホラーヒロイン「貞子」。その貞子の誕生秘話を描いた作品が本作だ。
ちなみに本作で貞子を演じるのは仲間由紀恵である。本作に出演する以前の仲間由紀恵はあまり有名な女優さんではなかった。今となっては有名だが99年に公開された『ガメラ3』では怪獣に一瞬で殺されてしまうチョイ役で出演している程度だった。しかし、本作への出演を機に人気ドラマ『TRICK』への主演が決まり大ブレイク。仲間由紀恵にとってはまさに出世作なのである。
【ストーリー】
劇団・飛翔に、妖艶な美しさを持つ山村貞子が入団してくる。看板女優の葉月愛子は、貞子のただならぬ気配を察知し、彼女を敵対視するが、その日から何故か毎晩悪夢にうなされていた。そんな中、劇団内にも次々と恐ろしい出来事が起こりはじめる・・・。
1998年に公開された『リング』は瞬く間に社会現象となった。呪いのビデオを見た者は七日後に死んでしまう斬新な設定、そしてその呪いの根源「貞子」というあまりにもインパクトが強すぎるキャラクターが話題となり、ホラー映画としては異例の大ヒットを記録。俗にいう「ジャパニーズホラー」を映画ファン以外の層にまで認知させブームの火付け役になった。映画のクライマックスで、テレビのブラウン管から這い出て呪殺するシーンは、日本中にトラウマを植え付けるほどの恐ろしい演出だった。
その後『らせん』、『リング2』という2本の続編を経て製作されたのが本作『リング0 バースデイ』だ。バースデイというタイトルが示す通り、本作ではあの貞子がいかにして誕生したのかが描かれている。今やプロ野球の始球式まで務めるマスコット的な人気を博している貞子だが、その過去はあまりにも切なくて悲しい。
監督が『ほんとにあった怖い話』で有名な鶴田法男なので、ガッツリなホラーでくるのかと思えば意外とそうではない。怖い話というよりはむしろ可哀相な話だ。妖艶で美しい女性だった貞子がなぜ人々を呪い殺す怪物になってしまったのか、明かされる過去はとても悲劇的かつ衝撃的。
もちろん恐怖演出は素晴らしいもので、観ていてすごく居心地が悪い感を観客にも与えている。怪奇現象の数々はやはり怖いし、ジャパニーズホラーの良さが詰まっていながらも、デ・パルマの『キャリー』を思わせるような場面があったりするなど、ホラー映画ファンにとってはたまらない作品になっている。また、豆知識だがあの長い前髪で顔を隠し、クネクネと動く貞子の描写は実は映画版オリジナルだ。
それにしても気がつけば『リング』シリーズも映画1作目から数えて21年が経っているとは。その間本作を始め数多くの貞子映画が製作されたが、原作に忠実な「半陰陽者の美しい少女」の貞子は一度も映画にはなっていない。一回で良いから原作に忠実な『リング』をスクリーンで観てみたいものだ。
『リング 0 バースデイ』(2000年)
監督:鶴田法男
キャスト:仲間由紀恵、田辺誠一、麻生久美子、田中好子 ほか
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