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『スパイラル:ソウ オールリセット』口当たりはそのままに、事件は犯人の意のままに…。何がリセットされ、またはされなかったのか。

◆公開中の注目作 
『スパイラル:ソウ オールリセット

文:屋我平一朗(ホラーが主食の映画ブロガー)

かつて、登場人物が命を脅かす極限の状況下からの脱出を迫られる「ソリッド・シチュエーション・スリラー」なるジャンルが誕生した。これは日本でのみ使われる言葉だが、そのような映画は今でも世界的に作られ続けている。今年Netflixで配信された『オキシジェン』もそうだ。これは謎の狭い空間に閉じ込められた女性と、時間とともに減少していく酸素(オキシジェン)残量との戦いを描いた作品だった。このジャンルの先駆けは、致死性の高い罠だらけの空間の描写が衝撃的だった『CUBE』。そして双璧をなすのが、猟奇殺人犯ジグソウによるデスゲームが登場人物だけでなく観客をも震え上がらせた『ソウ』シリーズだ。今年は、『CUBE』の日本版リメイク『CUBE 一度入ったら、最後』と、『ソウ』の新章『スパイラル: ソウ オールリセット』が公開される年であり、このジャンルの人気の根強さを実感させる。

本作は、『ソウ』シリーズ後の話である。ジグソウは出てこず、邦題の「オールリセット」が示す通り、一見さんが観ても問題ない作りだ。今回、新たな猟奇殺人犯がデスゲームのターゲットにするのは警察官。それぞれ印象的…というか観客がトラウマになりそうな方法(R15+なので…)で犠牲になる。このあたりは、七つの大罪になぞらえた猟奇殺人事件を扱ったデビッド・フィンチャー監督の傑作サイコサスペンス『セブン』を想起させる。あのブラッド・ピット&モーガン・フリーマンのように、本作で犯人を追うクリス・ロック&マックス・ミンゲラも凸凹コンビだ(年齢ではロックはフリーマンのポジションにいるが、性格はピットに近い)。徐々に相棒との関係が深まっていくのがバディものの醍醐味だが、心が温まりなどはしない。本作には『ソウ』の血が流れているのだ。むしろ底冷えするようなオチへと向かっていく。

監督は、『ソウ2』から『ソウ4』までを撮ったダーレン・リン・バウズマン。お馴染みのこの生易しくない作風は、シリーズファンには逆に優しさとなろう。犯人が現場に残す印はタイトルにもあるスパイラル(渦巻き・螺旋)だ。渦巻きは、ジグソウがゲーム参加者へのメッセンジャーとして使っていたビリー人形の頬の模様でもある。これは何を表すのか? 確かなのは、観客はこの不気味に渦を巻くストーリーに巻き込まれるしか選択肢はないということ。そして、螺旋を描く『ソウ』のDNAは関連作・他作品を問わず、今後も引き継がれていくだろうということだ。

【ストーリー】
地下鉄の線路上。舌を固定され、宙吊りの男。舌を引き抜いて生きるか、ぶらさがったまま死ぬか?猛スピードの電車が轟音を立てて迫り、やがて無残にも男の体は四散する。それはジグソウを凌駕する猟奇犯が仕掛けた、新たなゲームの始まりだった――。ターゲットは《全て警察官》。不気味な渦巻模様と青い箱が、捜査にあたるジークと相棒ウィリアムを挑発する。やがて、伝説的刑事でありジークの父・マーカスまでもが姿を消し、追い詰められていくジーク。ゲームは追うほどに過激さを増し、戦慄のクライマックスが待ち受ける。

【キャスト】
クリス・ロック、マックス・ミンゲラ、マリソル・ニコルズ、サミュエル・L・ジャクソン

【スタッフ】
監督:ダーレン・リン・バウズマン

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