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『キル・チーム』戦争は人間の残虐性を最大限に引き出す

◆公開中の注目作 
『キル・チーム』

第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、カンボジア内戦、湾岸戦争、ユーゴスラビア内戦、ソマリア内戦、ルワンダ紛争・・・20世紀は「戦争の世紀」だった。そんな時代と別れ、誰もが希望を見出そうとした2001年に21世紀は幕を開けた。しかし、そんな夢は早くも打ち砕かれる。2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ、あの事件が21世紀という時代を決定づけてしまった。アメリカはアフガニスタン、そしてイラクという戦場での戦いを余儀なくされ、そんなアメリカに反発するかのようにイスラム原理主義を掲げる武装勢力が台頭。21世紀はそんな「テロの世紀」なのだ。

本作は2010年にアフガニスタンで実際に起きた、アメリカ軍人によるアフガニスタン民間人殺人事件が題材になっている。元々はこの事件を題材にしたドキュメンタリー作品があって、その監督を務めたダン・クラウスが劇映画化も担当したと言う流れだ。しかし、劇映画となってもなお、実際にその事件をカメラで撮影していたかのような、そんな生々しいリアリティがこの映画にはある。

戦争の中で、仲間を守るためという大義を振りかざし、殺人が正当化される戦場。彼らの行為は仲間を守るための英雄的なものか、それとも単なる蛮行なのか、その基準は非常に曖昧だ。どんな残酷な行為でも正当化されてしまう戦場で、精神を蝕まれてしまった兵士のリアルが本作では描かれている。しかし、一方で全てを彼らの責任にすることができないのもまた事実だ。なぜなら彼らは国によって戦場に送られ、国によって戦うことを命じられているからだ。「国を守りたい、正義を貫きたい」と言う理想と、その手を血に染めねばならないと言う現実の狭間で揺れる兵士の姿は、決して彼ら個人の問題だけではないのだ。

この映画のアンドリューは自身が掲げる理想故に苦しむ。彼が尊敬し、しかし殺人を正当化するディークスもまた、戦場のリアルを知るが故に殺人を正当化してしまう。私たちはこのように狂ってしまう兵士の姿を、戦争によって苦しめられた兵士の姿を、映画を通してたくさん観てきたはずだ。しかし、人類は何度でも同じ歴史を繰り返す。本作のアンドリューとディークスはアフガニスタン戦争だけでなく、人類がこれまで積み重ねてきた「戦争」を最前線で戦う人間のリアルを体現している。

戦争は人を変えてしまう。本作は改めてその残酷な現実を伝えている。目を背けたくなる程に、戦争は人間を残酷にしてしまうのだ。しかし、そこから目を逸らしては何も解決しない。日本は幸いなことにどの国とも戦争はしていないが、いつ戦争をする側にも、仕掛ける側になっても不思議はない。そう思うと本作は決して他人事ではないのである。それを改めて感じさせる程にリアリティに溢れた傑作である。

【ストーリー】
正義感と愛国心に燃えて、アフガニスタンに渡ったアンドリュー二等兵。地雷により爆死した上官に代わり、新たに小隊に赴任したディークス軍曹は、治安を守ることを口実に無実の民間人に罪を着せ殺害し続けていた。その事実を知りながらも、捨てきることのできない軍人としてのデュークスへの尊敬の念と良心の呵責に苦しむアンドリュー。一方、異変に気づいたデュークスはアンドリューの忠誠心を疑い始める。

【キャスト】
ナット・ウルフ、アレクサンダー・スカルスガルド ほか

【スタッフ】
監督:ダン・クラウス

公式サイト:http://klockworx-v.com/killteam/#smooth-scroll-top

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