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『ようこそ映画音響の世界へ』一つの「音」を作り出すために多くの職人の努力が詰まっていることを教えてくれる

◆公開中の注目作 
『ようこそ映画音響の世界へ』

ハリウッドの「映画音響」にスポットを当てたドキュメンタリー映画である本作。この映画を観ると「映画」という娯楽、あるいは芸術はいかに「音」によって支えられているかが分かる。そもそも「音」というのは私たちの普段の生活においても視覚と同等に重要な要素を占める。そして映画はもちろん「映像」と「音」で出来ている。つまり私たちが普段映画館で経験する「映画体験」の半分は「音」によって構成されているのだ。その「音」を生み出すためにいかに多くの人の努力があったかをこの映画はシンプルに、しかし丁寧に見せていく。

この映画を観ていて改めて分かったのは映画の歴史=映画音響の歴史であるということだ。サイレント映画の時代であっても、効果音を体験させようという工夫があって、トーキー映画の登場で、より多くの音を映画に乗せられるようになった。そこから様々な探求が始まって、ただ音を乗せるだけではなく、今度は音を作り上げて観客に様々な感情を与えるための工夫が常に行われている。私たちが映画を観る中で、色んな感情を抱くのは、それを引き出す「音」のプロたちによる魔法がかけられているからなのだ。

この映画の素晴らしい点は「技術」に重点を置くのではなく、それを使いこなす「職人」たちにフォーカスを当てている点だ。技術で出来ることが広がったとしても、その技術で何をするのか、どのように使うのかはそれを使う人間に委ねられるからだ。『地獄の黙示録』は5.1chサラウンドシステムを世界で初めて採用した。これが今の映画ではスタンダードになっているが、このシステムの効果を最大限に活かすためには多くの音響スタッフによる工夫と努力があったからだ。そのように多くの人の工夫と努力が最大限に発揮されたとき、はじめて「技術」は活かされる。

作り出された音はもちろん、私たちが普段耳にしている数々の音も、映画では重要な要素になっていることに改めて気付かされる。例えばアルフォンソ・キュアロン監督作品『ROMA/ローマ』では、女性が町中を歩く短いシーンに多くの音が存在する。話し声や車の音、水の音などだ。そしてそれらは常に動いている。それを私たちは普段の生活では全く意識していないが、この映画を観て「音は動いている」という当たり前の事実に初めて気付かされる。それを映画で表現するために、いかに多くの時間と労力がかかっているか。

「映画」というのはどうしても、監督や役者、どんな原作が基になっているかなどに注目が行きがちではあるが、彼らのような人前に出てこない職人たちがいてこそ「映画」は成立する。そんな職人たちの魂と技がスクリーンから出てくる音の一つ一つに宿っていることを、この映画は教えてくれる。「映画の音」を生み出す職人たちの歴史と努力が詰まったこの映画は、観客をそんな世界に誘う、まさに「ようこそ映画音響の世界へ」というわけだ。


【ストーリー】
1927年に初のトーキー映画「ジャズシンガー」が誕生して以来、常に進化を続けている映画音響。本作では「キング・コング(1933)」「市民ケーン」「ROMA ローマ」など、新旧名作群の映像を使用し、映画音響の世界を紹介。ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ、デビッド・リンチ、クリストファー・ノーランら監督陣、「スター・ウォーズ」のベン・バート、「地獄の黙示録」のウォルター・マーチ、「ジュラシック・パーク」のゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドたちのインタビューを盛り込み、映画における「音」の効果と重要性に迫っていく。

【キャスト】
ウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストローム ほか

【スタッフ】
監督:ミッジ・コスティン

配給:アンプラグド
公式サイト:http://eigaonkyo.com/


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