【#今週末何見る?】#万引き家族 カンヌに愛された男 #是枝裕和 が新たに魅せた二人の女優 是枝 組初参加 #安藤サクラ #松岡茉優

◆今週のおすすめ万引き家族
今週紹介する新作映画は本日8日(金)公開の『万引き家族』

いわずもがな、「第71回カンヌ国際映画祭」で最高賞・パルムドールを受賞した、是枝裕和監督の最新作だ。

是枝監督といえば、2001年監督作『DISTANCE ディスタンス』をはじめ、当時14歳の柳楽優弥の驚異的な魅力を引き出し、史上最年少かつ日本人初の男優賞受賞をもたらした『誰も知らない』(2004)。そして2015年からは『海街diary』、『海よりもまだ深く』(2016)、『三度目の殺人』(2017)、本作『万引き家族』と、毎年フランス・カンヌの地へと新作を届け続けている。またそれを多くのファンが待ち望むというように、まぎれもなくカンヌに愛された男だ。

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(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

漫画原作の実写モノばかりでオリジナリティーが荒廃した日本の映画業界に、一筋の光と希望を与えてくれた是枝裕和という監督が築き上げた最新作は、これまで計5作に渡ってカンヌへ作品を送り届けてきた監督の愛が遂に身を結び、日本作品としての21年ぶりの快挙、パルムドールを日本に持ち帰ることになった。

『万引き家族』

聞いただけでなんともおどろおどろしいタイトルだが、そのあらすじは・・・

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高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝(樹木希林)の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。

冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子・ゆり(佐々木みゆ)を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。

だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

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クランクイン当時、まだ脚本が完成していなかったという本作。悩みに悩んだ末なのか、、、いや違う。是枝裕和という男は、撮影を進め実際にその場で動く役者たちを見て、声を聞いて、その世界に存在する人物を一人一人個々だけではなく、家族という集合体として作り上げることを可能にするプロフェッショナルだ。

そんな彼の魅力は、役者たちが声を揃えて答え、感激を覚えるという、”芝居のしやすい現場・空間を作り上げる才能”だ。

【是枝組常連。リリー・フランキー、樹木希林が引き込む是枝映画の世界。】

今回も最高の環境を用意し、役者を光らせることに余念のない監督は、各所で絶賛の声が上がって止まない子役の二人を筆頭に、まざまざと素晴らしいものを見せつけてくれた。

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”自然な演技”と言ってはあまりに表現が稚拙すぎる、是枝組常連のリリー、樹木は確かにこの世界の住人として存在していた。今回リリーは、あまり脚本を読み込んで撮影入りするのではなく、是枝組での子役の演出法として知られる、現場での演出に身を委ねることで、シーンを共にすることの多い子役たちと、是枝映画の優しい世界を映し出していた。『海街diary』で広瀬すずが”すず”という役で演じたあの時もこの手法だったのは広く知られている。

樹木は、なんともいえない奇妙さを焦点の先が見えない目の芝居と、不気味な間をもった語り口で、現実世界に潜む”真に恐ろしいもの”、闇の雰囲気を入れ歯を外してまでの女優魂で見事に昇華させてくれた。

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では、この作品で誰に目を奪われたのか

それはなんと言っても、今回是枝組初参加となった安藤サクラ松岡茉優だったと言わざるを得ない。

【是枝組初参加。安藤サクラ、松岡茉優、二人の女優が魅せたもの。】

本作で演じる松岡は、風俗で身銭を稼ぐということで、いわゆるお色気的、体当たりといったような賛美の声をよく耳にする(もちろんそれらや水着姿はなんとも魅力的だった)がしかし、注目してほしいのは、そこではなく彼女の目だ。

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目の芝居に不気味さを込めた樹木について前述したが、松岡の目の芝居は健康的でありそうで、常にその目の奥に虚無感が混在していて、観るものの期待と不安をヤキモキさせるような絶妙な目で魅せてくれる。彼女が演じた亜紀と樹木が演じた初枝の関係性が近いこともあり、この二人の目の芝居はなんとも感じさせてくれるものだった。

そして安藤と言えば、アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した『百円の恋』がいまなお鮮明に思い起こされる、”本物の演じ手”だ。もはや彼女以外のキャスティングは考えられないどころか、圧倒的な役作りによってエグ味を魅せた芝居は彼女なしでは成立しない世界であり、完全に作品を自分のモノにしていた。

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本作で彼女が扮した信代は、観客を安住の地へ住まわせてくれる役どころといってもでいい故に、身を預けてしまった途端、彼女が魅せる感情の些細な揺らぎが圧倒的な心の揺さぶりを我々にもたらしてくれる

とんでもないものを魅せられることになるということは、お伝えてさせていただくが、あえて事前に語るのを避けようと思う。

【是枝裕和が投げた渾身のストレート。】

貧しさに負けずに笑顔絶やさぬ前を向く明るい家族か。本当の家族でなくとも心で繋がっている美しい絆をもった五人か。これまでもあらゆる家族の形を描いてきた是枝監督が本作で切り取ったひとつの家族は、一体どんな家族だろうか。

彼らそれぞれがもつ秘密、彼らが共有する秘密。各々が抱える闇と想いが、物語の端々にひとつのパズルとして散りばめられている。

「拾ったんです」安藤サクラ演じる信代のこの一言に込められたメッセージは、劇中の出来事についてだけでなく、現代日本社会、そしてそこに生活する人々が見過ごして掬い上げることをしない、”あらゆる問題”に対する提起を促しているように思われる。

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またこのシーンでは、池脇千鶴演じる女性刑事にある一言を投げかけられるのだが、その時の表情、シーンは度肝を抜くことになる。安藤サクラは日本の宝だ。

スクリーンで対峙する彼女の姿から、ひとときも目が話せないことになるだろう。

なんだか偉そうなことをベラベラとダラダラと書き綴ったが、要するに言いたいことは「渾身の一作とはまさにこういうことなんだろう」それだけです。私もまた今宵、再びあの家族に会いに、そっと劇場へ足を運ぼうと思う・・・。

 

監督・脚本・編集:是枝裕和   

音楽:細野晴臣(ビクターエンタテインメント)

出演:リリー・フランキー 安藤サクラ / 
松岡茉優 池松壮亮 城桧吏 佐々木みゆ /
緒形直人 森口瑤子 山田裕貴 片山萌美 ・ 柄本明 / 
高良健吾 池脇千鶴 ・ 樹木希林

製作:フジテレビ、ギャガ、AOI Pro.       配給:ギャガ 

gaga.ne.jp/manbiki-kazoku

6月8日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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